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マミゾウ、ただいま昼寝中(1)

拙作、ナズーリンシリーズのサイドストーリーで命蓮寺にスポットを当てたお話の二発目です。

ナズとマミゾウがくっちゃべっているだけです。

エロ成分はありませんし、勝手設定モリモリでオチも無くダラーっとした構成です。

そんじゃ、ご覧ください。

八つ時(午後三時、オヤツタイム)、ナズーリンが二ツ岩マミゾウの部屋を訪れる。

「マミゾウ親分、ナズーリンだ、失礼するよ」

声をかけてから戸を開ける。

むにゃむにゃ言いながら身を起こすマミゾウ。

眼鏡を探している。

「ご主人が串を焼いてくれたんだ、一献付き合ってくれよ」

ナズーリンの手には焼き串の乗った皿と酒瓶。

化け狸は昼食もとらず、ずっと寝ていた。

「む、この匂いは皮串か?」

鼻をひくつかせる妖怪狸、ようやく覚醒した。

ナズーリンが持ってきたのは鳥皮の焼き串。

新鮮な鳥皮を湯引きせずに串に刺す。

あらかじめ茹でておけば適度な固さになり串に刺しやすいが、旨味のある脂がかなり湯に流れ出てしまう。

寅丸は手間をかけて柔らかい生皮を丁寧に串に刺している。

さっと塩を振り、強火で表面を軽く焦がして皮の脂を閉じこめる。

その後、弱火でじっくりジュワジュワと仕上げる。

そしてここからがミソ。

寅丸星のオリジナル。

焼いた皮串を卵白をたっぷり塗りつけ、もう一度さっと焼く。

白く凝固した卵白が名残の雪のように全体を覆う。

見てくれは美しくないが卵の白身と鳥皮の脂が不思議とマッチする。

命蓮寺に転がり込んできた時、ナズーリンに勧められ、マミゾウのお気に入りの一品となった。

ニコニコしながら串を引き、頬ばる。

外はカリカリ、噛めば半ナマのぐにゅっとした食感とともに鶏の甘い脂が口腔に広がる。

唐辛子を少し振っても良いが、このままで十分旨い。

マミゾウはNot red pepperだった。

「寅丸の皮串は絶品じゃのお、ホーンに旨い!

はあーー、旨い、身体中に染み渡るようじゃ」

「それはなによりだ、ご主人にも伝えておくよ」

「さて」

皮串を五本たいらげ、酒もそれなりに飲んだところで大狸が切り出した。

「度々差し入れをしてくれておるが、おぬし、なにゆえ儂に構うのか?」

「わざわざ海を渡ってお越しいただいた大妖怪様に敬意を表しているんだけどね」

「ふん、言葉通りには受け止められぬの。

そろそろ訳を聞かせて欲しいんじゃがな」

「本当に他意はないんだけど、そう言われてしまえば仕方ない。

それらしい訳でもでっち上げるとしようか」

「おぬしは面白いヤツじゃの」

「実はマミゾウ親分と組んで命蓮寺を乗っ取ろうと思っている」

「ほうほう、それはスゴい話じゃな」

狸の親分は身を乗り出して目を剥いて見せる。

元より本気にはしていないが、この頭の回るネズミ妖怪がどんな与太を飛ばすか楽しみにしているようだ。

「お互いの認識に大きな違いがあっては陰謀は上手くいかない。

まずは親分が命蓮寺の面々をどのくらい理解しているか知りたいね。

思いつくままで結構だから話してくれないか?」

「ははは、そうきたか、儂の【眼】を試そうという訳じゃな? よかろう」

「聖白蓮は仲々に出来た御仁じゃが【仏】には成れそうもないの、業が深すぎる。

あれほど多様な邪法に手を出してしまったのじゃ。

ホントの【聖】には成れんじゃろう。

残念じゃが地獄に落ちるのは間違いないのお。

じゃがその辺りは自分でも分かってやっておるのだから覚悟はしておるんじゃろうが。

【己】の生に固執していたと聞くが、今は【他】のために誠心誠意を尽くしておる。

儂がカミサマホトケサマなら、あの娘は救ってやりたいが、まあ、詮無きことかのお」

「寅丸、あれは良いのう、強いのに慈悲深い。

それにいとしげー(かわいい)じゃ。

料理も上手いし、気立ても良い、少し慌てモノじゃが、そんなところも良いの。

おなごとしては特上、最上級じゃ、たまらんのう。

なんじゃ? 妙な顔をするでない。

あの娘はいずれカミサマになるじゃろう、儂がどうこうできる相手ではないわ。

そう言えば、おぬしは恋人じゃったな?

この三国一の果報者め! 本当にうらやましいぞい、おぬし、寅丸星を離すなよ?」

「一輪は何事にも懸命じゃ、健気な娘じゃ。

己を殺し、聖と寺と仲間のために心身を捧げておる。

並の忠信ではないの、堅苦しいが良いおなごじゃ。

仕切りたがりじゃが、まあ、実際一輪が居らねば寺は営めんじゃろな。

実務の要じゃな」

「ムラサ? あれはイタズラ好きのおちゃっぴいじゃ。

むーどめーかーというやつじゃの。

じゃが、あれはスゴいぞ? 陽気で優しいし、いざとなれば頼りになりそうじゃ。

話も愉快じゃし、頭も良い、ちょいとした別嬪さんじゃしな。

まあ、皆が振り返るほどではないが、表情や仕草になんとも愛嬌がある

嫁にするならばムラサじゃな。

ん? 儂ぐらいになると雄も雌も気にならんからのお。

あの娘と一緒なら永い時も楽しめそうじゃ。

しかし、残念じゃが、ぬえのヤツが大層気に入っておるようでの、手を出すのは諦めた」

二ツ岩は他に響子や小傘、通いの妖怪達にも軽く触れてから少しだけ居住まいを正した。

「ぬえは孤独だったんじゃ。

ずーっと独りだったんじゃ。

妖怪はあまり群れんし、元々独りでいるのが苦にならんもんじゃが、ぬえは寂しがりなんじゃ。

それなのに恐ろしく捻くれておるからどこでも疎まれる、自業自得なんじゃがな。

本人もどうにかしたらしいが、生来の性質は変わりにくいようじゃ」

「ふーむ、さすがによく見ているね、恐れ入ったよ」

本気で感心しているナズーリン。

「ところで、ぬえとはどうやって知り合ったのかな?」

「あやつが佐渡へやって来ての、【化け比べ】を挑んできたんじゃ。

この儂に挑戦するとは無謀なヤツと思うたが、一昼夜かかっても決着は付かなかった。

いやあ、あれほど化けまくったのは何十年ぶりじゃったろうか、気持ちの良い戦いじゃった」

「親分とぬえの【化け比べ】か、世紀の好カードだね。

でも、二人の変身の力は全く質が異なるよね? 勝負になるのかな?」

「ほう、儂らの化け力(ばけぢから)の違いが分かるとは、おぬし仲々デキルのう」

本当に嬉しそうに笑った。

この親分の笑顔は万人を惹きつける。

「儂らの変化は自分や他のモノの見た目を変えることじゃが、性質までは変えられん。

ぬえはその性質を引き算のように奪っていくんじゃ、見る者によって見え方が異なる。

儂らは最初に何に化けるか決めるが、ぬえは何を奪うかを決める。

勝負が長引いたのも当たり前でな。

儂が化けると、ぬえは辺りの物でソレに近いものから外見や他の特徴を奪う。

ソレを見た儂が勝手に同じ物に【化けた】と思い込んでいたわけじゃな。

これでは切りがない訳じゃ」

今度はからからと笑った。

「まあ、それからしばらくは儂のところに居候することになったんじゃ」

「なるほどね、話してもらってなんなんだが、乗っ取りはウソなんだ」

ナズーリンが軽い調子で言うとマミゾウは再びからからと笑う。

「そんなとこじゃろの」

「こちら(幻想郷)にくるのは大変だったんじゃないの?」

「儂ほどの大妖怪であれば造作もないの」

「ホントは?」

「結構、難儀した」

そう言ってにが笑い。

「おぬしには顛末を話しておこうかの」

「ぬえからの知らせで向かったは良いが、結界が厄介でのう。

それなりの支度をしておけば越えられそうじゃッたが、急いだ方が良かろうと、強行突破しようとしたのがいけなかった」

「抜けられなかったのかい?」

「最後の最後で何やら見えない壁に背中が張り付いたようになってしまっての。

尻尾はこちら側に出せたんじゃが、身動きできんかった。

このままではマズイと色々試していたら、あのキツネがやってきての。」

「キツネ? もしやそいつは」

「ヤクモランと名乗っておったの、九尾のキツネじゃ。

結界を守るがどうのと小難しいことを言っておったが、要は侵入者は退治するということじゃ」

「親分、その状況はかなりマズイじゃないか」

「ちょっとタンマと言ったのに、問答無用で攻撃してきおった。

結界に挟まれ、身動きできんから袋叩きじゃ、まったくヒドいヤツじゃ。

化けることもかわすこともかなわず、やられっぱなしじゃ。

まったくキツネというヤツはいけすかんわい、次はギャフンと言わせてくれようぞ」

「どうやって逃げたの?」

「仕方ないので挟まったところを力ずくで無理矢理引きはがしたのじゃ。

背中の皮がほとんど剥けてしまってのう。

痛かったー、痛みで転げ回りたいが、転げてはもっと痛い。

見る見る血ダルマになってしもうた。

そして化けの秘術を尽くして何とか逃げ切ろうとしたんじゃが、なんせ血の匂いがの。

こんな時、ぬえの能力なら匂いも奪えるんじゃがのう、うらやましい」

「そんな暢気なこと考えてる場合じゃないだろう!? 」

「まあ、その後はとっておきの術を使って振り切ったんじゃがな。

ぬえが迎えに来てくれるまでにはなんとか体裁は整えたが、正直、しんどかったのお。

いやあ、あんなに血を流してしまったのは久方ぶりじゃ。

死ぬかと思ったのお」

また、からからと笑う。

「だからなんでそんなに暢気なのさ!

……え!? それじゃその体で最後の戦いに臨んだの!?」

「まあ、そういうことになるかの、スペルカードとやらを急場で教わったがあっさり負けてしもうた。

大トリを任されたのになんとも面目ない次第じゃ」

そう言って頭を下げる大妖怪。

「いやいや、そんなことより本当に死ぬところだったんだよ!?

なんでそんな無理をしたのさ!」

「友が力を貸してくれと、無茶を承知で頼んできたのじゃ。

他に理由が必要かの?」

あまりにあっさりと言われ、ナズーリンは絶句してしまった。

「おぬしは思ったよりも優しいの、じゃがこの話、他言は無用じゃ。

特にぬえには言ってくれるなよ、あやつはああ見えてとても優しいんじゃ。

気を揉ませたくないからのお」

「それで傷の具合はどうなの? いまからでも診てあげようか?」

「いや、ありがたいが遠慮をする、これはもうじき治る。

それに肌を晒すのはちと、の」

「?」

「いやん、儂はこれでも乙女じゃもん」

両の拳を口元にあて、体をくねくね動かす。

いつの間にか正座をしている。

わざとらしいが案外かわいい。

「親分、さっきは雄も雌も気にならないって言ったよね?」

「はて? そうじゃったかのお」

頭をかりかり掻いている。

いつの間にか胡座に戻っている。

「まあ、もう少しで治るのはほんとうじゃ、のんびり食っちゃ寝させてもらっておるから。

それに皮が痛んだのなら皮を食えば良いからのお」

そう言って残っていた皮串を口に運ぼうとして止まった。

「……おぬし、儂の怪我を知っておったのか?」

「初めて聞いたよ」

「ふーん、まあよい、そういうことにしておこう。

ご厚情にはいつか応えるとしよう」

「ゆっくり養生してくれ、聖はきっとなにもかも承知の上だろうから」

「この妖怪寺は居心地が良いからのお。

とても良い。

しばらく厄介になるとしよう」

「妖怪寺って言わないで欲しいな」

苦笑するナズーリン。

「気にすることではあるまい。

馳走になったの、では夕飯までもう一眠りするか」

そう言って、うつ伏せになる。

目を閉じたと思ったら寝息が聞こえ始めた。

ナズーリンは音を立てないように食器を片付け部屋を後にする。

「おやすみ、マミゾウ親分」

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命蓮寺閑話二つ目です。もう一本書いてから【妖夢のドキドキ武者修行】(仮)に取り掛かります。

マミゾウが好きになりかけています。

命蓮寺に居ついてくれてホント良かった。

ぬえとも絡ませやすく、妖怪の大先輩としてオイシイ活躍をしてくれそうです。

ナズーリンのアドバイザー的なポジションを予定しています。

でも、自らも騒動を起こすイタズラ好きだと思います。
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