紅川寅丸とTeam東方不敗の作品やご案内

はたての取材記録:その名は村紗水蜜(1)

拙作ナズーリンシリーズの side shows、命蓮寺閑話の三作目です。
例によって勝手設定、オチ弱、ダラーッとした話です。脱線率が200%増しです(当社比)、勘弁していただけたらどうぞ。

「幻想郷のみなさん【ようこそ命蓮寺へ】の時間です。

今日はキャプテン・ムラサ、こと村紗水蜜さんの一日を、私、姫海棠はたてがじっくりご案内いたします。

解説のナズーリンさん、よろしくお願いします」

命蓮寺の境内、はたてとナズーリンがマイクを持って並んで立っている。

(はたて君、ホントにやるのかい?)

(趣向を変えた取材記事を書きたいんです、お願いしますよーデスク)

(私だって忙しいんだよ)

(あの、じゃあ、朝ご飯の時間までで良いですから、ね?)

(んー、まぁ、キミの頼みだから仕方ないな、付き合うとするよ)

(やたー! ありがとうございます!)

(ところで、このマイク、どこに音声を飛ばしているの? カメラは?)

(えーと、まー、そのへんは雰囲気を盛り上げる小道具ってことで)

(そんなことだろうと思ったがね)

「あらためまして幻想郷のみなさん【おはよう命蓮寺】の時間です。

今朝はキャプテン・ムラサ、こと村紗水蜜さんの朝の素顔を、私、姫海棠はたてがじっくりご案内いたします。

解説のナズーリンさん、よろしくお願いします」

「はい、よろしく」

「さてー、現在の時刻は午前4時少し前、そろそろムラサ船長が起きてくる頃です。

これから寝室に突撃取材を敢行したいと思います!

ところでムラサさんはどんな寝間着なんでしょう?」

「彼女の普段着は、ご存じの通り海兵服ですが、就寝時は和服のようですね」

「ほうほう、それはなにゆえでしょう?」

「いまでこそ【ムラサ=セーラー服】ですが、もともとは和装の生活が長かったので、普段はそうしているようです。

私が知る限り、もっとも着物を綺麗に着こなすのはムラサ船長ですね」

「それは新しい情報です。きっと誰も知らないと思います」

「昔は今よりずっと長い髪で、普段は粋に結い上げていたんです。

なかなか艶っぽかったんですよ。

黙っていればですが、ええ、黙っていれば」

「今は活動的なセーラー服ですよね?」

「海兵服は封じられていた頃にどこかから聞いて自分で拵えたようです。

彼女、裁縫が得意なのです、聖の服もほとんど船長の手作りですね」

「へー、意外な一面ですね」

「ところで、はたてさん、セーラー服を脱がさないでってフレーズを知っていますか?」

「すいません、意味が分かりません」

(はたて君、ノリが悪いな)

(えー!? ホント分かんないですよー)

(一世を風靡した名曲だぞ)

(うーん、知らないですよう)

(……ムラサ船長の話に戻るとしよう)

(そうですね)

「下はキュロットスカートですね、あれもなにか由来があるのですか?」

「通常のスカートでは水中で動きにくいとか、それっぽい理屈はあるようですがハッキリしたことは分かりません。

ただ……」

「ただ?」

「私、キュロットは好きではありません」

「はあ」

(デスク! 今はデスクの性嗜好の話じゃありませんよ!)

(むう、そうだった。しかしあれは反則だよ)

(なんでですか?)

(スカートっぽいのにめくることも覗くこともできない)

(ふーん、デスクともあろう方がとんだアマちゃんですねー)

(なんだと?)

(あれはふつうのスカートよりガードが甘くなるんです)

(ガード?)

(当人の認識では短パン、ホットパンツになっちゃうんです)

(?)

(スカートの緊張感がなくなり、かなり大胆な動きを平気でしちゃうんです)

(そうなの?)

(そしてここからがミソです、形状はパンツでも裾は広いんです、もうお分かりですね?)

(……なるほど! そうか! スキマが大きいのか! チラ見え確率は高いのか!)

(そうです、キュロットスカートは【チラ見スキマ美術の展覧会】と言えましょう)

(あ、ああー! 素晴らしいぞ! はたて君! キミは素晴らしい!)

(デ、デスク、そんな強く抱きしめられたら、私、どうにかなっちゃいますよー)

(す、すまん、悪かったね)

(わ、悪いことなんかありませんよ、……これから私の家に行きます?)

(ロイヤルフレアを食らいたくはないな……ムラサ船長の話に戻るとしよう)

(……そうですね)

「さて、いよいよ寝室……って、もう出てきちゃいました!

デスク! 隠れて! 早く! 早くー!」

(フリが長すぎるんだよ。この企画、早くもグデグデじゃないか)

(私だけの責任ですか!? デスクが変なネタを振るからじゃないですか!)

(キミだってノリノリだったじゃないか、私のせいにするなよ)

物陰からムラサの様子をうかがう師弟。

(気づかれなかったみたいですね、良かったです)

(はたて君! くっつきすぎだよ)

(さっきはデスクから抱きしめてくれたのに、嫌なんですかー?)

(だからあれは悪かったって、それに嫌なことであるものか、可愛いはたて君だもの)

(えへへへ、ありがとうございます)

(でも、サイレントセレナを食らうのは御免だよ)

(パチュリー館長は心の広い方ですよ?)

(そっかなー、こと、このことに関しての引火点はジエチルエーテルより低いと思うぞ?)

(なんですかそれ?)

(ちょっとしたことで大火災ってことさ、まぁいい、ムラサ船長の話に戻るとしよう)

(そうですね)

「これから洗顔のようです、あ、一輪さんがいました」

あくびをしながら井戸の周りに設えた水場に向かうムラサ。

先客の雲居一輪に挨拶をする。

『いちりーん、おっはよー』

『おはよう。 ねえムラサ、髪の毛くしゃくしゃじゃない』

『んー? そうなの?』

『ちょっとそこに座って』

あむあむ言っているムラサの髪を指と櫛を使って優しく整える。

ふ〜ん ふ〜〜ん ふふん ふ〜ん

一輪の楽しそうなハミング。

「なんだかイイ雰囲気ですね〜」

「そうですね。仲の良い姉妹のようですよね。

これも愛情の形の一つです。

女性同士が寄り添っているからといって、全てが百合と考えるのは浅薄です。

船長だけにセンパクですね」

(……デスク、イマイチです)

(……今のはナシにしてくれ)

「二人っきりの時はいつもあんな感じですね。

面倒見の良い一輪と、ちょっと抜けているムラサ、良いコンビです。

聖白蓮が大事と言うことでは同じような立ち位置ですが、お互いを認め合っています。

とっても仲が良いのです」

「へー、なんだか羨ましいです」

「ヒト目があると、距離を置くようにしていますね。

聖を、命蓮寺を盛り立てることが最優先なので、要らぬ噂が立たないよう、意識しています」

「二人の間に恋愛感情はないんですか?」

「ライバルで、戦友で、親友。

恋愛感情よりも深い絆があると言えましょう」

『イチ、ありがと』

髪を整えてもらったムラサが嬉しそうに笑む。

「うわー、ステキな笑顔ですねー」

「良いところに気づきましたね。

屈託のない明るいスマイルは彼女の大きな魅力でしょう。

万人受けする笑顔があるとしたらこれかもしれませんね。

さすがキャプテン、【テニス焼けの笑顔】が良いですよね」

「え? 日焼けしているようには見えませんけど?」

「モノの例えです」

(はたて君、ノリが悪いな)

(えー!? ホント分かんないですよー)

(……ムラサ船長の話に戻るとしよう)

(そうですね)

「二人はいわば、聖の両腕、助さん・格さんですからね」

「ほうほう、なるほど、とてもしっくりくる例えですね、それなら寅丸さんは?」

「文字通りうっかり八兵衛…… いえ、一応信仰の対象ですから配役は難しいですね」

「ナズーリンさんは?」

「風車の弥七と言いたいところですが、んー、かげろうお銀でしょうか?」

(うぇー、かげろうお銀ですか?

デスクの入浴シーンって、絵的、視聴率的にどうなんですか?)

(……悪かったよ ……忘れてくれ)

(寅丸さんこそ、かげろうお銀じゃないですか?

幻想郷屈指のダイナマイトボディー、そしてお肌がとってもキレイですもんね。

湯浴みする姿はメッチャ、そそりますねー。

入浴シーンは垂涎ですよー、視聴率はビンビンはね上がりますねー?)

(だ、ダメだダメだー! いかん! 却下だ! 拒否する! 絶対許さん!

あれは未来永劫、私だけのものだ!!)

(デスク! 落ち着いてください! 気づかれちゃいますよ! もっと小さな声で!)

(むっ? す、すまない、つい興奮してしまった。

……ムラサ船長の話に戻るとしよう)

(そうですね)

「一輪さんとムラサさん、実はとっても仲良しなんですねー。

あ、ご住職がおいでになりました!

聖白蓮さんが封獸ぬえさんを伴って登場です!」

『おはようございます』×3+『おっはー』

「最近はなにかと忙しい一輪に代わってぬえが聖の身の回りの世話をしているようです」

「へー、ぬえさんが、ですか。なんだか意外な感じがしますね」

『ムラサ、今日は西側の壁の修繕でしたね、よろしく頼みますよ』

『イエス! ナム!』

『……それはなーに?』

『はい! Yes Mam と南無三をかけてみました!』

「あー聖さん、ちょっと困っているようです。

これは何と言っていいか、微妙ですね」

「船長は陽気で楽しい娘ですが、何と言うか、風変わりなセンスについていけないことが多々あります」

「確かに独特のセンスですねー、あ、ムラサさん、聖さんに何か耳打ちしています。

うーん、聞こえませんねー」

「断言しましょう。船長のあからさまな耳打ち話は、恐ろしくくだらない内容です」

「あら、ムラサさん、おでこを押さえてしゃがみ込んじゃいました。

一体、どうしたのでしょう? 」

「聖にデコピンをもらったようです、本当にくだらないことを言ったのでしょう」

「デコピンですか? いつの間に?」

「聖白蓮の【亜光速デコピン】は肉眼では捉えられません。

場合によっては意識を持って行かれるほどの威力です。

なんせ、ごしゅ……寅丸星でさえ『あれはホントに痛いです!』というくらいです。

もちろん、相手によって加減しているのでしょうが、お仕置きとしての効果は抜群と言えますね」

(デスクも、もらったことがあるんですか?)

(さて、どうかな、ご想像にお任せしよう)

(デスクがヘマをするとは思えませんから、ないんですね?)

(ふふ、いずれにせよ私は肉体の苦痛を無効にする術を持っているからね)

(なるほどー、苦痛を快楽に変換するんですね? さすがデスクです!)

(……ちょっと待って、なんでそういう流れになるのかな?)

(ムラサ船長の話に戻りましょう)

(……そうだね)

「聖さんと一輪さんが一緒に戻っちゃいましたね。

おや? ぬえさんがムラサさんに何か話していますが、聞き取れません。

気になります、解説のナズーリンさん、一体なにを話しているんでしょうか?」

「ぬえが他のモノにささやく場合、大抵ウソ八百の与太話なのですが、

ムラサに耳打ちする時は、なんともむず痒い可愛いアプローチのようです」

「ええー!! それは驚きの真実です!」

「限界を超えてヒネクレている封獸がホンの少しデレる唯一の相手。

それが、キャプテン・ムラサなのです」

「う〜ん、スゴい、これはスクープですねー。

……あら? 船長さんが何か言っています」

『そっかー、手に入れるのは大変だったろ?

ありがとねー、皆で分けるとするよ』

『皆で?……バーカッ! ムラサのバカバカバーーカァ!!』

「あー、ぬえさん、行っちゃいました。

スゴい剣幕でしたね、なんとなく状況は分かりましたが」

「んー、ムラサは天然鈍感ジゴロですからね。

ツンドラのぬえでは進展があまり期待できません」

(ツンドラってなんですか?)

(北極周辺に分布する凍結した大平原のことだ)

(それ、却下です、ホントは?)

(いつもはツンツン、たまにドラマチックなのだ)

(? 分かりそうで分かりません)

(……ムラサ船長の話に戻るとしよう)

(そうですね)

「ムラサさんは聖輦船の船長なんですよね?

でも今は船が命蓮寺になった訳ですから、船長業務はどうなっているんでしょうか?」

「痛いところを突かれましたね、実は船長としての仕事は無いんです。

しかし、命蓮寺=聖輦船ですから、お寺の施設管理、修繕は自分の務めと思っていますね。

ですから、通いの妖怪たちに掃除や補修の指示を出し、いつもお寺を綺麗にしています」

「なるほどー、そう言った意味では確かに【船長】ですねー」

「それに、いつの日か聖輦船として再び出航することを想定して準備をしているようです」

「え!? 皆さん、どっか行っちゃうんですか!? イヤですよー!」

「まぁ待ってください、今のところそんな予定は全くありません。

ただ、キャプテンとして備えをしていると言うことです。

少々間違った備えなんですがね」

「間違った備え、ですか?」

「はい、語呂が似ているからと、聖輦船を【幽霊船】に見立て、ザイダベック号に変形させようとしています」

「ザイダベック号? えーと、ホントに分からないんですけど」

「全くどうかしていますよ! ザイダベックにする意味が分かりません!

確かに、北の極まで数分で到達できることも、

潮の満ち引きを利用した潮汐エンジンと言う、さっぱり得体の知れない動力を使っていることも、

戦艦なのに、主装武器がさっぱり分からなかったことも、

トラウマになるほどの不可解で不条理な変形シークエンスも、

一番だけならいまだに空で歌えることも、

ゴールデンアームが究極のレスキューアイテムであることも、

知っています!

だからなんだと言うのでしょう!?

聖輦船があんな愉快な変形をしちゃったら、乗りませんからね! 私は乗船を拒否しますからね!?

私はまったく興味がない! ないったらないのだ!!」

「ナ、ナズーリンさん? あの、大丈夫ですか?」

「……失礼、全く持ってどうでもいいことでしたね、忘れてください、すいません……」

「つまり、なにやら怪しい仕掛けをしていると言うことなのでしょうか?」

「そうなんです、聖も黙認しているようですが、ホント、ここ一番ではウルトラ級の困り者です」

「ウルトラ級……すると、キャプテン・ウルトラ・ムラサと言うことでしょうかーー!?」

「なにやら無理矢理っぽいですが、そうとも言えますかね」

「では、 【ジョー】と【ハック】は誰だって言うんですか?

シュピーゲル号な聖輦船は三つに分離するんですか?」

(……そこは食いついてくるんだ)

(たまたま図書館で文献を目にしたんです。

ウルトラとついていますが、実は全く別なモノで、それはそれで興味深いお話だとパチュリー館長が教えてくださいました。

バンデル星人には言いたいことがたくさんあるっていってました)

(あの魔女、あなどれんな……)

(デスク、かなり本筋からはずれちゃいましたよ?)

(もうかなりダメダメだが、ムラサ船長の話に戻るとしよう)

(そうですね)

「えー、皆さん、これから朝のお勤めですよね?」

「はい、朝から参詣に訪れている熱心な檀家さん達と一緒にお経を【読み】ますね」

「【開かれたお寺】政策の一つですね」

「朝課が終ると朝食までの間に各自が自室の掃除やその日の作務の支度をします。

お寺全体の掃除は通いの妖怪達がやって来てからです。

少し余裕のある時間ですかね」

「ムラサさんはその時間、なにをなさっているんですか?」

「部屋でお経をあげています」

「朝のお勤めとは別にですか?」

「はたてさんになら話してもいいでしょう。

彼女は舟幽霊、念縛霊として多くの人命を奪いました。

毎朝、その菩提を弔っているのです」

「……そうだったんですか、でも、念縛霊の性を背負ったのなら仕方ないですよね? そうですよね?」

「その辺りは自分でも割り切っているようですが、本当に気にしているのは他の念縛霊たちのことです」

「それは?」

「自分が沈めたことにより、同じ念縛霊になってしまった存在のことです。

ムラサ自身は、聖によって大いなる救済を得ましたが、未だ救われない同僚のことを気に病んでいます」

「自分だけが救われてしまったと?」

「そうです、だからこそ、彼女の目標は自身が聖のような存在になることなんです。

そして、いつの日か彼らを救済することを目指し、精進しています。

まぁ、生来の気質からイタズラをしに行ったり、サボったりしてますから、先は長そうですがね」

「……ムラサさん、そんなことを考えていたんですか……グスッ」

(はたて君、どうした? しっかりしろ)

(……だって、だって、ムラサさん、そんな思いを秘めていたなんて)

(キミは感情移入が過ぎるな、記者としては褒められたことではないぞ)

(急にこんな真面目なお話されたら、た、対応できませんよう。う、う、すみません、未熟です)

(まぁ、そこがキミの最大の美点でもあるんだがね)

ぐしぐしとぐずっている弟子をそっと抱く。

自分本位が身上の妖怪なのに、この天狗は驚くほど優しい、優しすぎる。

ゆるやかに時間が過ぎる。

(はたて君、そろそろ朝食にしよう)

(……今朝はどんな内容ですか?)

(玄米ご飯、キュウリの浅漬け、卵は小さめのチーズオムレツだろう、筍の煮物は昨夜の残り物だが味が染みていて美味いはずだ、後は里芋の汁物だね)

(よくそこまで分かりますね)

(私の推理力を駆使すれば造作も無い、と言いたいところだが、前日にご主人が『なにが食べたいですか』って聞いてくれるんだよ)

(なーんだ、そうだったんですか)

(ホントに食べたいのは ご・しゅ・じ・ん、っていつも言うんだけど、スルーされているね)

(それって突っ込まないといけませんか?)

ようやくいつもの調子が戻ってきた鴉天狗。

村紗水蜜が二人を見つけた。

『おーい! ナズーリン! はたてー! ご飯だぞー! 早くおいでー!』

「デスク…… 私、命蓮寺の皆さんとご縁を結べて、とっても幸せです!」

師匠に向けたそれは、キャプテン・ムラサに迫るほどのイイ笑顔だった。

命蓮寺のたわいのない話の一つ

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命蓮寺閑話の3作目です。
はたてとナズのワルノリ会話形式でグダグダとやっちまいました。タイトルほどムラサが出てませんし。「ネタが古すぎて全然わかんねー」と家人に言われるし。良いんです、こんまま好きにやっちゃうし。さて、次は本編にとりかかります。いつになることやらですが、気長にお待ちください。
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