紅川寅丸とTeam東方不敗の作品やご案内

命蓮寺の三勇士(1)

「われらー、みょーれーんじーの三勇士ー」

「きょうこ!」(イェイェイ)

「こがさ!」(イェイェイ)

「…………」

「ちょっとおー! ナズーリン! どうしたのさ!?」

「……この歌、必要なのかい?」

「いるよー! 盛り上がるじゃんか!」

「正直、とっても恥ずかしいんだよ」

げんなりしているネズミの賢将さん。

響子は竹箒を、小傘は傘を、ナズーリンはNEWSロッドを肩に担いでいる。

各々それとは別に何やら荷物を持ち、二人は元気にてくてく、一人は少し離れてとぼとぼ歩いている。

「めーざーすーわ こーまかーん」

「きゅーけつきーを やあっつけーろー」

「だから待てって! やっつけるのは絶対無理だって!

見に行くだけだろ?

……ねえ、やっぱりやめない?」

『響子、きゅーけつきって知ってる?』

多々良小傘が幽谷響子に聞いた。

『まだ食べたことないなー』

ことの前日、命蓮寺の夕飯はつつがなく終わり、ちょっと一息タイムに入っていた。

いつものようにお呼ばれされた小妖二体が、いつものようにピントのズレた会話をしている。

本日の片づけ当番はムラサとぬえの甘酸っぱコンビ。

他の連中も居間から下がっており、ナズーリンと寅丸星がお茶を飲みながらのんびりと二人の話を聞いていた。

『吸血鬼だよ、きゅー・け・つ・き!』

『えー、しらなーい』

吸血鬼。

魔物の中でも最上層で君臨する圧倒的な存在。

これほど多くの伝説や迷信に彩られた怪奇は他にないだろう。

幻想郷で吸血鬼と言えばあの麗姉美妹のことだ。

小傘が続ける。

『血を吸うんだよ』

『うえー! そんなのおいしくないじゃん!』

『血を吸われたモノはたいてい死んでしまうんだって』

『ひえー!』

『もし死ななかったら、あ、間違えた、死ねなかったら、えーえんに吸血鬼の子分になるんだって』

『そんなのヒドいよー!』

『しかも狙われるのは綺麗な女のヒトばっかりらしいよ』

『ふえ? あー良かったー!

そんじゃ私たち、へーきじゃん!』

『……【私たち】? え? ……そ、そう、だよね……』

微妙な表情の小傘。

見ていたナズーリンは、ぷっと吹き出してしまった。

二人とも愛嬌があってなかなか可愛いのだが【綺麗】と言われるにはまだまだ時間がかかるだろう。

小傘ちゃんは若干、自意識が高いのかもしれない。

『でもさー、そんな危ない魔物、ほっといていいの!?』

『退治するヒトがいないみたい』

『それじゃ、退治したらほめられるかな!?』

『カッコいいかもね』

その後もきゃいきゃいと吸血鬼談義が続く。

『こーまかんに住んでいるらしいよ』

『湖の向こう側にある大きなお屋敷だよね!』

『行ってみようか?』

『行ってみよう!!』

ここまでは苦笑しながらも黙って聞いていたナズーリンだが、たまりかねて口を挟んだ。

『あのね、キミたち、遊び半分で紅魔館に行ったらエラいことになるよ?』

もっともな忠告だが、基本、能天気な化け傘と山彦はその意味が理解できない。

『ナズーリンたら、怖いの?』

『こわいんだー!』

『なんだよその言い草は。

キミたちのために言ってあげたのに』

『私たちは行くからね』

『れっつ、ご、ごぉーー!』

『だーかーらー、やめておけってー』

うんざりしているナズーリンに寅丸星が告げる。

『ナズーリン、ついて行ってあげなさい』

『はあ? 私が? なんで?』

『言い聞かせても納得しないでしょうし、これもお勉強だと思います。

それに何か粗相があってはいけませんからね。

貴方が一緒なら大丈夫でしょう、ね? ナズ、お願い』

そんなこんなで本日この時に至る。

(はああー)

心の中で盛大にため息をつく小さな賢将。

自分を含めたこの一行、いかにも頭が弱そうで、まるで【三ばか大将のお宝探し】のようだ。

自分も世間からはそう見られているかと思うと賢将ナズーリンは泣けてきた。

こんなピンぼけ訪問者、普通に行けば門前であしらわれて終わりだろう。

ナズーリンは、一応、手を打っておいた。

『はたて君、今日は図書館に行く日だろ?』

今朝、いつものように命蓮寺で朝食(朝汁)を摂っていた姫海棠はたてに話しかけた。

『その予定ですが、なにか調べ物ですか、デスク?』

命蓮寺の番記者とも言われる姫海棠はたて。

引きこもりだった自分を一端の新聞記者にまで鍛え上げてくれた厳しくも優しい【ナズーリンデスク】のことを心の底から尊敬している。

はたてはおよそ週に一回、大図書館を訪れる。

元々の目的は資料集めだったが、今は日陰の魔女との逢瀬の口実になりつつある。

『そのついでに私とツレ、小傘と響子がうかがうと、レミリアどのと咲夜どのに伝えておいて欲しいんだが』

『おやすいご用ですけど、珍しい組み合わせですね』

『うん、まぁ、目的は吸血鬼見学なんだがね』

命蓮寺の面々を良く知っているはたては、今回のメンバーとナズーリンデスクの気乗りしていなさそうな顔を見てだいたいの事情を察した。

(デスク、いつも面倒ごとのご担当で大変ですね。

でも、文句言いながらも断らないし、結局最後まで付き合ってくれるんですよね。

だから我らがデスクは素敵なんですよねー)

敬愛するデスクのサポートをできるだけしようと心に決めた自称一番弟子のツインテール天狗だった。

「吸血鬼の弱点、たくさん持ってきたもんね!

十字架、ニンニク、銀のスプーンもあるよ!」

小傘の発言に思わす突っ込んでしまう賢将。

「ちょっと待て、銀のスプーンってなんだい?」

「吸血鬼は銀に弱いんだよ、ホントは銀のナイフか銀の弾丸がいいんだけど、お寺にはなかったからスプーンを借りてきたの」

寅丸星が、小傘達にねだられて貸し与えたのだろう。

「そして、ひっさつあいてむ! BL漫画ーー!!」

今度は響子。

ナズーリンは二秒ほど固まってしまった。

「……その弱点、いや、そもそも吸血鬼のこと、誰に聞いたんだね?」

「ぬえさん」

(やっぱりそうか、……ったく、アイツは)

お寺のトラブルメーカー封獣ぬえが小妖たちにロクでもないこと吹き込むのはいつものことだが、今回は、いや今回もとばっちりはナズーリンが被りそうだった。

(くそー、あの、かまってちゃんめ、覚えておけよ)

「他にも弱点を教えてくれたよ」

「ロクでもなさそうだが一応聞いておこうか」

「わがままで、気まぐれで、自分の間違いを素直に認めないんだって」

「それは弱点じゃなくて欠点だろ?

声に出して言うには失礼な話だぞ!」

やっぱりロクでもなかった。

[扉絵]  [小説TOP]  [↑]  [→]

PAGETOP
Copyright © 2011 東鼠回顧録 All Rights Reserved.