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命蓮寺の三勇士(4)

難しい顔をしているパチュリー・ノーレッジ。

小悪魔がその耳元で囁く。

(パチュリー様、スマイル、スマイル。

ここは大人の魔女の余裕を見せましょう)

咲夜に連れられてやってきた小妖三人組。

一人は顔見知りのネズミ妖怪だが、あとの二人は初見。

元気がよいのは分かったが、良すぎる。

特に犬耳の娘は悪意があるんじゃないかってほどの大音量だった。

「こおんにちわーー!!」

手前の方にある本棚がビリビリと振動していた。

すかさずネズミ妖怪に頭を叩かれていたが、全く悪びれていない。

姫海棠はたてが小さく手を振っている。

「あ、はたてさんだ! ぃやっほーー!!」

「響子! いい加減にしないか! ここは図書館だぞ!」

パチュリーのこめかみがピクピクしている。

週に一度のはたてとのスイートタイムをなんでこんな連中に邪魔されなきゃならないのか。

パッチェボムは爆発寸前だ。

パチュリーの手をそっと握ったのはそのはたてだった。

「パチュリー館長、響子さんは山彦なんです。

ですからあの声は生来のものなんですよ。

今日だけはご辛抱いただけませんか?」

「そ、そうは言っても我慢には限界があるわよ」

この世でただ一人、心を許してもいいかなと思っている優しく可愛い鴉天狗に手を握られて鼓動が激しくなってきた日陰魔女さん。

「そこをなんとか、ね?」

握る手に力と熱がこもる。

「あ、あなたがずっと手を握ってくれているなら、す、少しは辛抱できるかもしれないわね」

「了解です、今日はずっと手をつないでいましょうね」

そう言ってクスっと笑ったはたて。

視界ギリギリのところで小悪魔が親指をグッと立てているのが見えた。

(はたて君、すまないな、恩に着るよ)

さりげなくバックアップをしてくれた一番弟子に心の中で手を合わせたナズーリンだった。

「響子、アナタ、字、読めるの?」

「ひらがなはぜんぶ読めるよー」

「ふふん、勝ったね、私、カタカナも読めるもん。

一輪姉さんに教わったから」

「えーー! ずるーーい!」

意外と面倒見の良い雲居一輪は、暇を見ては小妖たちに読み書き算盤を教えている。

きゃいきゃい言いながら絵本を物色していた二人だが、それぞれ気に入ったモノが見つかったらしく、やがて静かに読み始めた。

「ふう、やっと静かになったわね」

パチュリーがつぶやく。

「ここは面白い本がいっぱいありますからね」

返事をしたはたての吐息が頬をくすぐった。

ずっと手をつなぐと約束したので、今日は一つの本を息がかかるほどの近さで一緒に読んでいる。

たまにはたてが質問してくるが、甘い吐息を吸い込むのに忙しくて内容なぞ、ほとんど頭に入ってこない。

パチュリーにとっては至福の時間だった。

「お嬢様がお目覚めになりました。

皆さんをお呼びです」

完璧メイド長が図書館の扉を開いて言った。

読書タイムは終了だ。

「この本ください」

「わたし、これーー!」

それぞれに本を掲げている。

「……キミたち、ホント、いい加減にしたまえよ」

この遠慮のなさと常識のなさ、ナズーリンは恥ずかしくなってきた。

「あげるわけにはいかないけど、気に入ったのなら持って帰って結構よ。

読み終わったらはたてに預けてくれたらいいわ」

驚いたのはナズーリンだった。

動かない大図書館にしては破格の大サービスだ。

よほど機嫌が良いのだろう。

「やったー、ありがとうございます、……えーと」

「パチュリーさんだよ」

「ありがとうございます、ぱちゅりーさん!」

「ぱーちゅりーーさーん! ありがとー!」

「さあ、二人とも行くぞ、本日のメインイベントだ」

ーーーー同刻、紅魔館で最上級の客室ーーーー

当主、レミリア・スカーレットが邪悪な笑みを浮かべながら客人を待っていた。

「ネズミの騎士の頼みだもの、たっぷりおもてなししないとね、クックックックッ……」

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