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白雪姫?(2)

7人の小人たちが帰宅すると、家の中の様子が変わっていることに気づきました。

まず、一人目の小人【マミゾウ】が言いました。

「誰かが、わしのイスに座ったあとがあるぞ」

次に、二番目の小人【ぬえ】が言いました。

「誰かが、ワタシのスープを少し飲んだあとがあるよ」

三番目の小人【ムラサ】が言いました。

「誰かが、私のパンを少し食べたあとがあるね」

四番目の小人【小傘】が言いました。

「誰かが、わちきの野菜を少し食べたあとがあるみたい」

五番目の小人【響子】が言いました。

「誰かがー! わたしのスプーンを使ったあとがあるー!」

六番目の小人【こいし】が言いました。

「わーい、かいかーん」

七番目の小人【ナズーリン】が言いました。

「なあ、こいしの係は誰なんだよ? 全然なってないじゃないか」

「セリフを教えたのはぬえじゃろ?」

「ワタシ知らないよ、小傘じゃないの?」

「え? わちきじゃないよー」

「……つまり、今回のこいしはいつもに増して好き勝手状態なのか」

「なんとかなるんじゃないの? 重要な役じゃないし。
あ、誰かが私のベッドに寝ているよ!」

ムラさが強引に軌道修正してくれました。
ここ一番で頼りになる娘ですよね。

小人たちが横たわっている娘の顔を覗き込みます。

「なんて美しいんだろー」

「こおーんなびじん! みたことなーーい!」

「確かに黙ってじっとしておれば別嬪さんじゃからの」

「怖い顔しなければね」

「パーツの一つ一つは一級品なんだから表情の作り方次第だよね」

賛辞にしては微妙な言い回しも混じっていますが、寝たふりをしている白雪姫は満更でもなさそう。
口元が不自然に緩んでいますから。

「鼻毛が出てるがね」

慌てて顔を押さえる白雪姫【雲居一輪】。

「ウソだよ」

こんなアドリブをブッ込むのはもちろんナズーリンです。
賢将とハイカラ少女は相性がよろしくないのです。
いえ、ハッキリ仲が悪いと言って良いでしょう。
お寺の仕事や緊急事態では見事な連携を見せるのですが、普段はことある度に相手をやり込めようとするのです。

ギリリッ スゴい歯ぎしりが聞こえましたよ。

目を覚ました白雪姫は、周りに七人の小人がいるのを知っておどろきました。
けれども小人たちは大変親切で、ニコニコニヤニヤしながら白雪姫にたずねました。

「おぬし、名前は何というのかな?」

「私の名は白雪姫です」

「自分で”姫”って……プッスー」

ぬえが口を押さえて笑いを隠し……隠していませんね?

「言われてみればスゴい自己紹介だよね」

白雪姫の目じりが吊り上がっていってます。

「それでは、白雪姫、キミは、どうして我々の家に入ってきたのかな?
これは不法侵入と窃盗罪が適用されるケースだが申し開きはできるのかね?」

ナズーリンが厳しい顔で詰め寄ります。

「そ、そんなこと言われても」

またしても台本に無いセリフに白雪姫は焦ります。

「場合によっては入墨の上、重敲(百叩き)だよ」

ナズーリン、なんて意地の悪そうな顔でしょう。

「待たんか、そりゃいつの時代の刑罰じゃ(江戸時代ですかね)。
こら、話を戻すぞ!
んー 娘さん、訳ありなら聞こうじゃないか」

今度はマミゾウが軌道修正です。

「はい、それは……」

継母であるお妃が美しすぎる自分を妬んで殺そうとした事。
お妃に命令された狩人が、自分を逃がしてくれた事。
そして森をさまよっているうちに、この家を見つけた事。
白雪姫はそれらを全て、小人たちに話しました。

「それは、気の毒な事じゃな。
もしもよければ……ん? ぬえ? どうしたんじゃ?」

「だって自分のこと”美しすぎる”って、……プププ。
ダメ……我慢できない アハハハハハハ」

ぬえが限界を超えたようです。

ボスンッ! 枕が結構な勢いで封獣の顔に命中しました。
投げたのはもちろん白雪姫さんです。

「あー もういっぺんやるぞ。
もしも、お前さんが、わしらの家の仕事を引き受けてくれるのなら、ここで暮らしてもいいぞ。
ああ、仕事といっても、家の掃除や洗濯に縫い物、そして食事の用意ぐらいだがの。
どうじゃ、それらをきちんとしてくれるか?」

「はい、家の仕事はきちんとやりますので、どうぞお願いします」

こうして白雪姫は、小人たちの家で暮らす事になりました。

「アンタたち、なんだいこの散らかり様は。
まずは掃除だよ、さあさあ早く!」

白雪姫はパンパンと手を叩きながら皆を促します。

「自分が全部やるんじゃないの?」

「んー 確かに自分一人でとは言ってないけど……」

「家事を仕切るってことでは間違ってないがのぉ」

「こんな予感がしたんだよね」

「なんだかお寺にいる時と変わらないよー」

「そこ! 口じゃなくて手を動かす!
働かないモノにはご飯は無いからね!」

「しかしまぁ、これほどお姫様役がしっくりこない娘も珍しいな。
やはり根本的に向いてないってことじゃないかな?」

「そこのネズミっぽい小人! シャキシャキやんなさいよ!」

がすっ あ、ケリが入りました。

「った! くそー、覚えておれよ」

白雪姫を睨みつけた小人その⑦にその③のムラサが言いました。

「ねえ、そろそろ出番じゃないの?」

「あ、そうだった。
まぁ今は見逃してやるか、ちょっと行ってくる」

ナズーリンが退場しました。

再びお城の一室。

「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰?」

「本当はこんなことを言いたくないんだけど、仕方ないんだよ。
不実なヤツと思わないでおくれ。
この胸に秘めた真実の愛は貴方だけに捧げているのだから」

「あのそれはホントに嬉しいのですが、とりあえず置いときませんか?
私、次のシーンにいけませんよ」

「うー でも、やっぱり言いたくない」

「困っちゃいましたね……
あ! では、私以外で一番美しいのは誰ですか?」

お妃様、自分で言っててとても恥ずかしそうです。

「なるほどナイスアイディアだ、さすがお妃様。
それなら気が楽だよ、ハッキリ言ってどうでもいいし。
まぁ、白雪姫あたりでいいんじゃないか?」

「ちょっと気を抜きすぎですよ……」

お妃はようやく行動開始です。
物売りに化け、小人の留守を狙って腰紐を白雪姫に売りつけます。
そして腰紐を締めてあげる振りをして彼女を締め上げ、息を絶えさせました。

(と、寅丸! ち、力入れ過ぎ! ぐ、ぐるじいい!)
(あ! ごめんなさい!)

やがて帰ってきた7人の小人は、事切れている白雪姫に驚きましたが、腰紐を切ったら息を吹き返しました。
一方、お妃が再び魔法の鏡に尋ねたことにより、白雪姫が生きている事が露見しました。
お妃は毒を仕込んだ櫛を作り、再度物売りに扮して白雪姫を訪ねます。
白雪姫は頭に櫛を突き刺され倒れますが、小人たちが櫛を抜いたら再び息を吹き返しました。

(と、寅丸! 痛いって! 刺さってる! マジで刺さってるよ!)
(あ! ごめんなさい!)

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