紅川寅丸とTeam東方不敗の作品やご案内

白雪姫?(3)

「昼間はわしらがおらんからくれぐれも用心せいと言ったのに」

「何度言っても同じ手に引っかかるんだから」

「白雪姫ってバカなの?」

「バカでしょ」

「バカじゃん」

「バカじゃの」

「バカだーーー!」

あ、白雪姫のこめかみに血管が浮いてピクピクしてます。

「ねえ、一輪姉さん 白雪姫のことだよ?」

「分かってるよ!」

本来、人一倍警戒心の強い一輪さんがこんなボンクラなはずはないのですが、ここはお芝居ですから仕方ありません。
でも、面白くないようです。

しかし、この白雪姫って、お姫様育ちで疑うことを知らないせいでしょうが、あまりにも危機感がありませんよね。

老婆に変装したお妃様【寅丸星】が最終回の攻撃にやって来ました。
お待ちかねの毒リンゴ責めです。
しかし今回は昼間なのに小人たちが家に勢揃いしています。
皆、有給休暇を取って備えていたのです。

驚くはずのお妃様でしたが平然としています。
このことは事前に小人の一人から知らされていたからです。
なんと内通者がいたのです。
その裏切り者とは! ……別にどうでもいいですよね。

「皆さんにはアップルパイですよー」

「うわー、美味しそう!」×7

したがいまして、準備も万全でした。
もしゃもしゃ はぐはぐ
小人たちはお妃様特製のアップルパイに夢中です。

「えー、私もそっちがいいな」

白雪姫が指をくわえています。

「キミは黙ってリンゴを噛じりたまえ。
そして速やかに無様に死ね!」

小人その⑦が吐き捨てるように言いました。

「なに? その言い方は。
分かったよ、食べればいいんでしょ、食べれば」

しゃくっ

毒リンゴを食べた白雪姫は即死でした。
小人たちはしばらくの間泣き伏せっていましたが、さすがにどうにかせねばと、立ち上がりました。
いずれは白雪姫を土に埋めないといけないのですが、不思議な事に死んでいるはずの白雪姫は生きていた時のままに美しく、肌もきれいで顔にも赤みがありました。
『こんなにきれいな白雪姫を、土の中に埋める事なんか出来ない』
そこで小人たちは外から中が見える様にガラスの棺を作ると、その中に白雪姫の体を寝かせることにしました。

「これがガラスの棺桶?」

「実はこれ【アクリル】という材質の樹脂なんだ。
軽い上にとても丈夫だよ。
ガラスだと、万が一割れたら【頑固白雪姫】でもさすがに大怪我するからね」

小人その⑦が調達してきた透明な棺について解説しています。
なんだかんだ言っても本当の危険を回避するための手間を惜しまない苦労性の賢将なのです。

「そんじゃ中に入れようか」

「よっしゃ、持ち上げるよー」

7人がかりで、頭や腕、腰、足を持ちます。

「うう、意外と重いね」

それを聞いたシンデレラがギロッと睨みました。
死んでるんですから目を開けないで下さいよ。

意識の無い(脱力した)人体は結構重く感じるものなのです(これはホント)。

「よいしょ、よいしょ」

皆、か弱い女の子ですし、受け持つ位置のバランスが良くないため、うまく力が入らないようです。

「ゆっくり、ゆーっくりね!」

「もう少しだよ!」

「あ、そっち、まだだよ?」

「なんで手を離すんだよ!? 早いって!」

「うそ、無理だってー! お、重いよー!」

ゴビンッ

「いったーっ!」

白雪姫は後頭部から落ちたようです。
思わず声が出てしまいました。
頭を支えていたはずのは古明地こいしが一言。

「あ」

忘れた頃にやらかしてくれました。

「はああー 重かったあ、何食ったらこんなに重くなるんだか」

「ぬえ、アンタ後でどうなっても知らないよ」

白雪姫が棺桶の中で薄目を開けて封獣をロックオンしていますね。

白馬に乗った王子様【聖白蓮】の登場です。
小人たちの家を訪ねてきました。

「そこな鉱夫の方々、私は隣国の王族に連なる者です。
この深い森で帰り道を見失ってしまいました。
一晩の泊めては頂けないだろうか」

上下純白のスーツに金色のマントが様になっていますね。
長い髪を後ろで束ね、目の周りはくっきりメイクでバリバリ。
宝●歌劇の男役のようです。

「おや? その棺は? ……これはなんと美しい女性なのだ!」

王子がアクリルの棺に近寄り、中の白雪姫に見とれています。

「この女性を棺ごと私にゆずってくれませんか。
その代わり私は、あなたたちの欲しい物を何でも用意しましょう。

なんですと? いえ、分かります。
確かにそうだ、たとえ世界中のお金を集めても敵いますまい。
これは、どんなお金や宝物でも代える事は出来ない。

だが私は、白雪姫なしには、もう生きていられないのだ!
私は白雪姫に、この白雪姫に恋を、恋をして、し、ま、った、の、だあ!
私は生きている間、白雪姫をうやまい続ける! 命を懸けて!

だから、だから! だからあ! 白雪姫を、この私にゆずってほしいいい!」

王子様たっぷりと間合いを取り、大きなアクションで朗々と言いました。

「わしら、セリフ言う暇が無かったのお」

「気合い入ってんなー」

「王子様の唯一の見せ場だからね」

「置いといても仕方ないから引き取ってもらおうか?」

「そだね、ほしいってヒトにあげちゃおうよ」

「それがいいー それがいいーー!」

結構ぞんざいな扱いですね。

「ねえ、ここで王子様の接吻じゃないの?」

白雪姫【一輪】が小人【ナズーリン】に小声で聞いています。

「こら、死人がしゃべるんじゃない」

「だってクライマックスでメインシーンだろ?」

「あれは某王手アニメ会社がロマンチックに脚色したものだ。
原作には無い設定だよ。
ついでに言うと、この王子様は死んでいるシンデレラを見初めたのだ。
つまり、死体愛好家、筋金入りの変態に間違いない」

そうらしいです。
世界は広いですね、色んな趣味があります。

「うえー! そんな王子様イヤだよ」

「だからしゃべるなって言ってるだろ! じっとしてろよ!」

「ちょっとだけ ちゅって……ダメかい?」

「黙れって!」

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