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超戦士(ハイパー)・シンデレラ(6)

その後も少しの間、擦った揉んだのやりとりが続きましたが、だいたいのデザインは決まったようです。

「娘さん」

「シンデレラと申します」

「ではシンデレラ、これから大事なことを申し伝えます。

これから私が貴方に変身の魔法をかけますが、これには時間制限があるのです。

夜中の十二時、お城の鐘が鳴り終わったら魔法は解けてしまいます」

そうそう、これ、とても大事な設定ですよね。

「んー、気になっていたのじゃが、嫁選びなんだよな?

王子様がこの娘を気に入って当日お持ち帰りを希望されたときはどうなるんじゃ?

午前零時、色々盛り上がっていそうな時刻に何もかも戻ってしまうのか?」

なるほど、そう言えばそうですよね。

しかし【セイント・ビャクレーン】は顔をしかめました。

「どうして貴方はそのように品の無い物言いをするのですか?」

【セイント・ビャクレーン】さん、今日の貴方はとやかく言えないと思います。

「ファーストコンタクトでテイクアウトは無粋なのではありませんか?

仮にも一国の王子がそのような仕儀に及ぶとは考え難いですね」

「随分と直球な物言いじゃが、古来、一目惚れしてその日のうちにタッチダウンってのは良くある話だな」

「そう言われれば確かに伝承では初球でホームランの話が多いですね」

「……なあ、お主、今日はアドリブ多すぎるぞ。

それもシモネタ方面にはっちゃけすぎじゃ。

少し抑えようか? な? キャラが壊れてしまうぞ?」

「そうなんですか? 了解しました、気をつけまっすぅ!」

そう言ってキュピーンとVサイン。

やれやれ。

「つまり、魔法の効果は延長できんのかと聞いたんじゃ」

「うーん、その時はフロントに電話して確認してください。

延長が認められれば翌朝十時までOKですが、速やかにチャックアウトしてくださいね。

残念ながらモーニングサービスはありませんけど、うっふっふー」

【セイント・ビャクレーン】さん、全然気をつけてませんよね?

今回のお芝居で一番壊れているのは間違いなく貴方です。

「では魔法の呪文を唱えましょう!」

ようやく魔法使い役の見せ場です。

【セイント・ビャクレーン】の笑顔が輝いていますね。

さあ、頑張っていただきましょう。

右の拳は固く握られたまま腰だめに、左手は前方にかざしながらゆらゆらとさせています。

えーと、魔法ですよね?

魔法のステッキ、必要ないんですか?

「……たった一つの命を捨てまして……

生まれ変わった不死身の身体にございます……」

なにやらとてつもなく物騒な感じがします。

闘気や妖気、その他モロモロのヤバそうなモノが【セイント・ビャクレーン】の右拳にギュンギュンと集まっていっています。

辺りの気圧が急激に下がり、グオングオンと耳鳴りがします。

「鉄の悪魔を叩いて砕きましょう!

ワタシがやらねば……だ・れ・が・や・る・の・で・すぅ!?」

「あ、あの、えと、あれって?」

シンデレラは不安そうに【マミゾー】を見ました。

その【マミゾー】は小さく首を振りながらバックステップでどんどん離れていきます。

「え? ちょっと……」

「FUUAAAA– 噴!!」

【セイント・ビャクレーン】のチャージが完了したみたいですね。

右の拳がビカビカグラグラと滾っています。

お待たせいたしました。

綺麗なドレス姿に変身する素敵な魔法の発動です。

……多分。

「激振波動疾走ぉ! 驚天動地ぃ!」

その拳がぐいっと後ろに引かれました。

うーん、スゴい変身魔法なんでしょうね。

……多分。

「惑星爆砕! 超級加重弾導拳ーーんんん!!」

気合いとともに思いっきり突き出された拳が盛大に爆発しました。

凄まじい爆風と目映い光の奔流がシンデレラのいる方向へ放たれます。

これって恒星間戦闘用の超高質量重力光撃ですよね?

本来、地上では使っちゃいけない技なんじゃありませんか?

魔界の大武闘会に於いて500年間無敗を誇った伝説のチャンピオン【ミルキー・ロータス】の禁断の荒技が炸裂しました。

どわわわわわわーー

土石流の如きの質量を持った魔力光弾に飲み込まれたシンデレラ。

深い森はシンデレラがいた辺りを中心に扇状に開拓されています。

魔法少女な奥様!(表現に無理がありますけど)

完全に環境破壊ですよ!?

粉塵が収まったあと、そこに残っていたのは豪壮無双の女丈夫(?)。

腰を落とし、顔の前で両手を十字に組んでいます。

常識はずれの猛攻を身一つで凌いだもようです。

「た、耐えきりよった……なんてヤツじゃ……」

【マミゾー】さんが眼鏡をかけ直しながらつぶやきました。

魔法使い組のお二人に確認です。

耐えきれなかったらどうなっちゃったんでしょう?

これ、怪我くらいじゃ済みませんよね?

木っ端微塵になっちゃいますよね?

いえ、圧縮されて亜空間に飲み込まれちゃいますよね?

そこのところ、事前の検証は十分になされていたのでしょうか?

ねえ? お答えください!

ゆっくりと防御の構えを解き、仁王立ちになったシンデレラが厳かに告げます。

「ふうううー、ごちそうさま、と申し上げます。

素晴らしい一撃でしたね。

……次は、私の番(ターン)ですよね……」

開いた両手がパリッパリッと放電しています。

あー!?、こちらもスイッチオンですか?

待ってください! そーゆーお話じゃありませんから!

【マミゾー】さーん! なんとかしてー!

「ま、またれよ! 娘御、こちらを見よ!」

ポコポンッ!

自ら大きな姿見(鏡)に変化した【マミゾー】さん。

映し出されたその姿は純白のドレスに包まれ、メイクも完了のハイパービューティー。

「これ、わ、私……ですか?」

自分の変容に驚いているシンデレラ。

今です、軌道修正のチャンスです!

「そう! それがお主の実力じゃ、常識はずれの美人じゃ!

舞踏会もバッチリじゃ! 儂が保証する!」

周囲を支配していた得体の知れない【圧力】がひゅーっと下がっていきます。

GJいえ、WJ(ワンダホージョブ)です【マミゾー】さん。

(ううう、なんだかシンドい役どころじゃのう。

ただの御者役のはずなのに……

この天然大怪獣二体の悪ノリに挟まるのは本気で命がけじゃ、割に合わんぞ!)

人類が到達しうる最高クラスの大魔法使いにして最凶のグラップルマシーン。

かたや、神格を得られる直前にまで届いた剛力無双の汎用決戦大妖獣。

お二人とも【拳で語りあう】のは結構なんですが、ガチのフルパワーはまたの機会にしていただけませんか。

現場のレフリーは今にも泣き出しそうですし。

変身完了したシンデレラ=ショウを見て満足そうな【セイント・ビャクレーン】。

「では、次は馬車を出現させて【マミゾー】を御者に変身させましょう。

……覇ああああーー」

ギュオン、ギュオオーン

「ま、ま、ま、待たんか! やめんか!

儂は自前で変化(へんげ)するからいらん!

その魔法とやら、やめろってのーー!」

手足を必死に振り回して抗議行動する【マミゾー】さん。

(まったく、冗談ではないぞ!)

ホントお疲れさまです。

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