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超戦士(ハイパー)・シンデレラ(9)

仕方なくおとなしくしているナズーリン国王。

でも、その目はシンデレラをずーっと追っています。

(ああ、本当に明るく優しい笑顔だ。

微塵も偽りが感じられない。

そしてなんと滑らかで無駄のない動きだろう。

美麗な身体を縦横に操っている。

これは天賦のものか努力の賜か……)

すっかり魅了され、のぼせてしまっている王様。

「まいったね、すべて持って行かれそうだよ」

思わす口に出ちゃったようです。

「でも、だめ」

侍従長がすかさず釘を刺しました。

『ディーーン ゴローーン』

お城の時計台の大鐘です。

おっと、もう、そんな時間でしたか。

はっとするシンデレラ。

楽しすぎて時のたつのを忘れてしまっていました。

こうなっては【フロントに電話】するどころではありません。

速やかに撤収しませんと。

「あ、あの! 私、これで失礼いたします!」

大慌てのシンデレラ。

「え? もっとゆっくりしていけばいいよ」

「そうそう! もっとおどろー!」

王子達が引き留めます。

「いえ、あの、その、自動車の納税期限が今日までなので」

テンパると途端にお間抜けになってしまうのは【ショウ】の仕様です。

あ、これもなにげにウマいですよね? ね?

「そういうわけでごめんなさい! 失礼します!」

だっと、駆け出したシンデレラ。

(む? なぜこのタイミングで? なにか訳ありのようだな……)

やりとりを見ていたナズーリン王の目に叡智の光が戻りました。

(このまま流すべきか……

いや、あの娘、もし今生の別れとなったら後悔する!

私が後悔する!)

「【コイシ】! あの娘を逃がすな!」

国王が叫びます。

「……どして?」

きょとんとしています。

「あー! もうっ! 役に立たんなーー!

衛兵! 衛兵! その娘を捕らえよ!

だが、手荒なことをしてはならない!」

王様は衛兵達に自ら命令を下しました。

シンデレラの行く手を遮るようにわらわらと衛兵が現れます。

ざっと40〜50人。

「ごめんなさい! ごめんなさい!」

取り押さえようとする衛兵達からスルリスルリと身を躱し、トンッ! トンッ! と当て身で気絶させています。

(……なんと見事な、これこそが今宵最高の舞踏だ)

ナズーリン王は再び持って行かれそうです。

今更言うのもなんですが、紅川設定の寅丸星の武術は天界のかなり上位でも通用するレベルです。

例え素手であろうと並の兵隊数十人相手に遅れをとるはずがありません。

『捕縛ワイヤーと電磁ネットの使用許可を!』

『メーサー砲、1番から8番まで準備よし!』

手荒なことはしないはずでしたが、段々と怪獣捕獲作戦の様相を呈してきました。

シンデレラは動きにくいはずのロングドレスをヒラヒラと捌きながら衛兵達の奮戦を軽やかにいなします。

このヒトの場合、武闘=舞踏なのかも知れませんね。

そうこうしているうちに包囲網は突破され、出口は間近です。

『ディーーン ゴローーン』

鐘は八つ目です。

「ええい! どいつもこいつも役立たずめ!」

ナズーリン国王は侍従長を振り切り飛び出しました。

一旦振り返って王子達に告げます。

「【コガッサ】! 【キョーコ】!

あの娘は私がいただく!」

「えー ちちうえ ずるーい」

「気に入ったのだ、特に乳が気に入った!」

「ちちうえ へんたーい! いっつもおっぱいばっかりー!!」

「上等だ、なんなら【乳飢え】と表記しても良い!」

「でも、やっぱ、ずるいよー」

【コガッサ】王子が口を尖らせます。

「ずるいもへったくれもあるものか。

私はあの娘が欲しいのだ! なにと引き替えでもかまわない!

……よし! 国も王座も財産もくれてやろう!

今からキミらが国王だ!」

「えええーー!?」×2

随分なぶっちゃけですが、ついに決断してしまったナズーリン国王でした。

「【コイシ】! あとは王子達とうまくやってくれ!」

「らじゃー」

実にあっさりと王位継承を認めてしまいましたね。

こんなんでいいんでしょうか?

「む!? くだらんことで時間を食った!

かなり引き離されてしまったじゃないか」

王位を捨てるのがくだらんことって……

「おや? あれは」

ナズーリン元国王の目に留まったのは片方だけのハイヒールでした。

なんとガラス製です。

シンデレラ=ショウの忘れ物です。

「ふむ、あの娘の遺留品だな。

これで追跡はグンと楽になったぞ」

嬉しそうに笑い、靴の内側に鼻先を突っ込みました。

くんかくんか すーはすーは

「……あのー、ち、ちちうえ?」

【コガッサ】王子が遠慮がちに声をかけました。

「ん? 私の本業は探索者だ。

探索対象の匂いがこれほど鮮明であれば追跡は造作もない」

ドヤ顔です。

「さいてーだね」

【コイシ】がほんの少し眉をしかめました。

家臣達を始め、場内の誰もがドン引きしています。

「では、さらばだ!」

なにもかも捨て去った元国王は脱鼠(?)の如く走り出しました。

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