紅川寅丸とTeam東方不敗の作品やご案内

ナズーリンの星っていくつあるの?(2)

私は食いしばった歯の間から言葉を押し出した。

「ご主人、おちつけ。私を信じろ」

びくり、と拘束していた力が留まる。

もう一度、今度は、はっきりと口を開いて言う。

「ご主人、おちついて。私を信じて」

ようやくご主人が体を起こした。

豊満な胸の圧迫から開放され、鎖骨の辺りが楽になったような、寂しいような。

「本当ですか? 本当ですね?」

小さな声でたずねてくる。

涙ぐんでいた。

色々と真剣に憂いていたのだろう。

思い切り抱きしめたくなるような儚さだ。

デカイ図体なのに。

お互いに体を起こし、改めて正対する。

「伊達に千年以上、女体を観察してきたわけではないよ」

その観察対象は、九割以上ご主人なのだが。

たまに他の女体を見ないと、ご主人の素晴らしさに慣れてしまうからね。

「私ほどの女体の探求者になれば、服の上からでも分かるのだ」

「なんの探求ですかぁ?」

そんな情けない声を出さないで欲しい。

「よほどのことがなければ私の透視眼は欺けない」

「嘘です! 貴方にそんな能力はありませんよ!」

「ご主人、私の【ダウザー】としての力が、ロッドを軸にした各種アイテムと子ネズミ達によるものだけだと思っているのかな?」

作り笑いで、少しだけ首を傾げてみせる。

予想通り、ご主人は困惑している。

「え、そんな、わかりませんけど、えと、違うんですか?」

そんな不安そうな顔や仕草は他人には見せてはいけないな。

不埒な輩の理性を吹き飛ばすには十分すぎる。

対策を考えておかねばならんね。

まったく、考えることが多すぎる。

「ダウジングは、いくつもの不確かな因子を複合し、仮説を立てては検証し、正答へと絞り込んでいく。

時に地道で、時に直感的な、まぁ、【直感】とは積み重ねた経験が囁く理屈を飛び越えた結論までのショートカット、なのだがね。

つまり、ダウジングはご主人が思っているよりかは少しばかり、繊細な技術なのだね」

少しぼーっとしていたご主人が遠慮しながら言う。

「私は貴方の能力が素晴らしいものだということは知っています。

私の理解など及ばないほど、複雑なのだろうと思っています。

そしてその能力に何度も、そう、何度も助けてもらいました。

貴方の能力がなければ私はここに在りません」

俯いてしまったご主人。

【貴方の能力がなければ】か。

些か傷がついたな。

【能力】が私の価値か。

言ってほしくはなかった。

私は、私自身には、全く、自信がないのだから。

分かっていたけれど、切ないよ。

いつまでたっても私の返答が無いのに不安を感じたのか、顔をあげるご主人。

私の顔を見て、驚いている。

そんなに変な表情だったのだろうか。

「ナズーリン! 私、私、何かおかしなことを言ったんでしょうか?」

うろたえまくる。

ご主人は単純だ。

純心を保ったままなのだ。

千年以上生きて、様々な想いを見、感じ、傷つき、押しつぶされ、見て見ぬ振りをし、否定し、肯定したくとも力は及ばず。

それなのに泣きながらも【善】を信じて生きてきた。

そんなご主人が自分の心を護るために前面に出してしまった【察しの悪い、鈍い】心根。

それを責めることなど出来るはずも無い。

「ご主人、別に何も無いよ」

「いえ! 私は貴方を傷つけたんです! 何か酷いことを言ったんです!」

今日はえらく突っかかるね。

それほど私の反応が露骨だのかな。

変なところで勘の良いご主人だ、私の心情を過剰に汲んでしまったのか。

ご主人を泣かせたいとは思っているが、悲しませることは本意ではない。

話題を戻すとしよう。

「透視眼のことだったね」

「あ、いえ、あ、そ、そうでした」

ご主人も、話題の強制転換に合点がいかないものの、これ以上突っ込んではよろしくない、という雰囲気を察したようだ。

ならば馬鹿話を続けよう。

「要は心の目だ。一枚、また一枚と衣服を剥いでいく様を想起をするのだ。

その過程を丁寧にすることで一糸まとわぬ最終形が完璧に見えてくる」

「それって、妄想と言いませんか?」

「酷い言い方だな。よろしい、力をお見せしよう」

座っているご主人を上から下までゆっくりと舐り見る。

三往復したとき、ご主人が胸元をおさえながら、体を丸めた。

「何です!? 何を見ているんですか!」

赤い顔で上目遣い。

これも良いな、大変良い。

「ふむ、上は薄桃色。下は白い長穿きだね、左側の裾飾りが取れてしまっているが」

質素を旨とするご主人は、下着の数も少ない。

今、干してあるものと、箪笥の在庫を引き算すれば容易に特定できる。

折を見て、肌に優しい上等な品を買ってあげよう。

もちろん、うんと扇情的なヤツを。

丸まったまま大きく目を見開くご主人。

「ほっ、ほんとに見えるのですか!?」

思い切り不敵な笑いを作って見せる。

「もう少し集中すれば、その奥も見えるよ。

例えば『止めてくださいっ! もう結構です! 分かりました! 分かりましたから!』

座ったまま、くるりと背を、いや尻を向け蹲ってしまった。

大きな肉塊が、もじもじと動いている。

はっふ、うっく、撫ーで回し、頬擦りし、齧り付きたい!

ここでも我慢を強いられるのか!

「ご、ご主人。分かってくれたのなら良いのだ。説明を続けるよ?」

出来る限り理性的に言ったつもりだ。

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