紅川寅丸とTeam東方不敗の作品やご案内

ナズーリンの星っていくつあるの?(3)

「星二つは私の掌で、ちょうど収まる大きさが基準だ。そう、このくらい」

親指以外の四指を揃え、そっと掴む形を作る。

【このくらい】に反応したご主人が首だけをひねり、私の手を覗き見る。

なんだその可愛い格好は。

お尻の脇から困ったような顔半分が、ちょろりと見えている。

【写真】に撮っておきたい絵だ、どうにかならないのか。

呼吸八つの間、その格好を十分堪能してから告げる。

「紅白巫女、楽団の長女、白黒つけたがる閻魔、機械工の河童、地底の土蜘蛛などがそうだ。

おっと、ムラサ船長もそうだよ。

しかし、この程度では、私の掌は満ち足りるだろうが、私の魂は不足を訴える」

「貴方の魂は何をしたいんですかぁ?」

ようやくご主人が正対する。

「さっきも言ったよ。私は妥協しないのだ」

「立派です。と、言い切れないですよ」

「今はそれでも構わない。

最後まで聞いてくれれば、私のエロスの深遠の一端を垣間見ることができるだろう」

「見なくちゃいけないんですか? ってか、見たくないんですけど」

「ここまで私に言わせたのだ、最後まで付き合ってもらうよ、ご主人!」

「その力強さの根拠はなんなんですかっ!」

「付き合ってくれるよね?」

「うっ、そんな顔しても、ダメです、ダメっす、ダメなん、けども」

呂律が回っていない。

ご主人は私の【真剣お願いフェイス】に滅法弱い。

だからこそ滅多に使わないのだが。

「あのっ、おっ、お乳の話はよく分かりませんが、ナズーリン、貴方が最後まで聞けとと言うなら、聞きます。

でも、いやらしい話は困ります」

先ほど私を傷つけたと思い込んでいるのか、随分な譲歩だ。

まったく、気を使いすぎだ。

それも的が少し外れているし。

だが、そこも愛しい。

こんないい加減な色欲まみれの密偵ネズミに、それと知ったうえで千年にもわたり、変わらずに情をかけてくれた。

とても、とても丁寧に。

不器用で察しが悪い、それが如何ほどの欠陥か。

探索行の多い私のために作ってくれた袖なし鎖帷子は、肌着の上に着けられる極薄のもの。

呪術を施した金板を刻み、糸状に延ばし、自分の髪の毛を織り込みながら、微細な防御魔陣を何重にも描き、組み合わせて紡ぎあげたこの世に一つの私の専用防具。

丸めれば両掌で包めるほどの薄さと軽さ。

それでもこの鎖帷子に命を救われたのは二十回ちょっとはある。

ご主人はこれ一着を作るのに四十年かかった。

打撃、暫撃、冷熱、雷撃、急所を狙う致死性の各種呪法に耐え、前後の首元からフードを引き延ばし、顔面と頭頂を覆えば、散布型の毒や瘴気をほとんど防ぐ。

四肢が吹き飛ばされたり、朽ち落ちたことは何度かあったが、この帷子のおかげで、頭や内蔵に深刻なダメージを受けることは無かった。

器用ではない。

だが、直接私を護れないもどかしさ故に、備えに全力を注いでくれた。

私の生が終わるときはこの帷子が傍らにあって欲しいと願う。

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