紅川寅丸とTeam東方不敗の作品やご案内

ナズーリンの星っていくつあるの?(9)

ご主人が、うん、うんと頷いている。

【寅ちゃん】呼ばわりにも気づいていない。

ご主人は、なぜだかパルスィと仲がよい。

よほど気に入っているのか、彼女の話にはスゴい喰いつきだ。

「とても素敵な二人でした。

最初は冗談のようなやりとりばかりで、ハラハラしました。

勇儀さんが一方的で、パルスィさんは、嫌がっているのかと思いましたけど、パルスィさんは要所で勇儀さんを立てていましたし、時折見せた気を引く素振りも愛らしく、甘え上手なんだなと思いました。

お互いを補い合い、弱いところも強いところも分かった上で際どいやりとりをしているのですよね。

私、とっても羨ましかった」

うむ。ほぼ完璧な洞察だ。

この人、実は恋話が大好物なんだよね。

「そして聖白蓮。容姿は説明しなくても良いだろう? いい女だよ、文句なしだ。

知性、包容力、癒され度、最高クラスだ。

だがね、色々と立派すぎて私には少し息苦しいのだよ。

二人きりでは暮らせないだろうね」

「そ、そう、なんですか?」

彼女を尊敬しているご主人にしてみれば、合点が行かないかも知れない。

「隙がなさすぎると、私のような半端ものには辛いときがあるのさ」

頬肉をつり上げ、わざと憎たらしい表情をつくる。

今は聖とご主人の決定的な違いを言うべきではないから、ごまかすしかない。

「星三つは平均的に安定している場合もあれば、何かが突出しており、他方、ひどい部分があったりもする。

趣深いが、私にとって、今はそれだけだ」

星二つ、一つは、今は言う必要はないだろう。

そろそろ限界だ、ご主人も私も。

タネ明かしを始めるか。

「ご主人、黒い星も白と同じく、基準があるのだよ。

私の心の中には数え切れないほどの星を持った人物が一人おり、その人との比較評価なのだ。

星五つは確かにスゴいが、私にとっては、その人の魅力を再確認する為にすぎない」

ご主人が座り直した。

「その人が誰か、今は言うまい。

いずれ分かってしまうことだから。

ご主人に今、分かって欲しいのは、私の着眼と、考え方だ。

その人を盲目的に慕っているわけではなく、自分なりに理屈をつけ、納得した結果なのだ。

その理屈は屁理屈だし、臆病者の理論武装にすぎない。

分かっている。恋愛は理屈じゃない、分かっている。

でもそうしなければならなかった」

このあたりは初めて話す私の根っこ部分の吐露だ。

「歪んだ思考と不健全な感性しか持ち得ない私には、この想いが間違いのないものなのか確証が欲しかった。

世間、他人と比べることで納得したかったのだ。

だって私、身も心もこんなにちっぽけなんだもの」

言いながら切なくなってきたよ。

矮小な自分に泣けてくる。

「もっとも、こんなヒネたネズミ、誰も本気に相手をしてくれんだろうがね。

今まで並べた御託は、所詮、くだらん妄想だ」

ご主人は目を伏せていた。

「貴方にとって、その人はとても大事な人なんですね」

「うん」

私は心から返事をした。

もう全て話してしまおうか。

でも、なんだか私自身が変に凹んでしまったし、タイミングも悪いから、言いにくくなったな、どうしようか。

「【ちっぽけ】ですか。

貴方は間違っています。

全く理解できていませんね。

並外れた洞察力が聞いてあきれます。

とんちんかんのわからんちんです。

これほど愚かだったとは残念です。

はっきり言って、おバカさんです!」

びっくり。

この千年ほどで、これほどご主人から罵られたのは初めてだ。

「ナズーリンは、初めは取っつきにくいでしょうけど、長い時間一緒にいれば、バレてしまいます、本当の姿が!」

ふむ、ロリネズミの正体見たり、パラノイア助平ネズミか。

「そしたらメロメロになっちゃいます!」

あん? メロメロってなんだっけ。

「だって、約束は必ず守ってくれるし、悲しいとき、苦しいとき、言って欲しい言葉を言ってくれるし、うまくやれたときはちょっとだけ褒めてくれ、一緒に喜んでくれるし、努力していることを分かって、認めてくれるし、間違ったときには、真剣に怒ってくれるし、何故いけなかったのか丁寧に教えてくれるし、雑多な悪意は、その機転で弾きとばしてくれるし、次は自分でやれるように、分かり易い手本を見せてくれるし、でも、本当に危険なときはその身を挺して庇ってくれるし、小さな体なのに。

やらなければならないことは、とっかかり易いようにさりげなく準備してくれるし、成長したいと言う高望みには、たくさんの道筋と段取りを探してくれて、最後は自分で選ぶようにと見守ってくれるし、うまく行っているときは空気のように控えめで、ちょっと困った程度では手を差し伸べてはくれないけど、精一杯やってみてもダメなときは、奇跡のように助けてくれる。

なのに決して見返りを求めない。

長く一緒にいたら、それがみーんな分かってしまいます。

そして普段は、ちょっぴりぶっきらぼうで、謎めいていて、たまに寂しそう、なんだかカッコいいんです。

そんな、そんなナズーリンを好きにならないモノはいませんよ!

みんな、誰でも好きになっちゃいます!

ダメです! そんなのダメですよー! うわーん!」

泣きながら突っ伏してしまった。

えーと、それはどちらのナズーリンさんなのかな?

とりあえず【スーパー・ナイス・ナズーリン】としておくか。

文句なしの【イイ男】だけど、私じゃないよ、そんなモンじゃないよ、私は。

「ナズーリンの大事な人ってだれなんですか!?

咲夜さん? アリスさん? パルスィさん? 勇儀さん? 文さん? 慧音さん? それとも魔理沙さん?

私、勝てません!

取られちゃう! 私のナズーリンなのにぃ、ずーっと私だけのナズーリンだったのに、うううっ」

伏せたままの慟哭。

私だって泣きたいよ、この人、こんなに私を想ってくれていたのか。

「私は心が狭いんです! その人とナズーリンの幸せなんか祝福できません!

きっと、なにもかも滅茶苦茶にしてしまいます!」

少し身を起こしたご主人、上目遣いだが、甘酸っぱくはない。

剣呑な雰囲気だ。

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