紅川寅丸とTeam東方不敗の作品やご案内

ナズーリンの星っていくつあるの?(10)

「ごっご主人、怖いよ、落ち着こうよ」

「私の全妖力と、命の珠全てを使って、宝塔の法念放出を強制的に陰回転させます。

限度を超えてどんどん加速させます。

暴走の果て、宝塔は大きく、大きく膨らんだ後に弾けます!

その瞬間、幻想郷は爆縮消滅します!

後に残るのは、貴方への未練の情念【ナズーリンのバカァ!】だけです!」

はわわわ、まて、まって、なんでそうなるの?

誰かこの人止めて、ホントにやりそうだよ。できそうだよ。

なんで泣きながら宝塔を掲げてるの!?

今、幻想郷を救えるのは私だけなの!?

「ご主人、とにかく落ち着け! 訳分からなくなってるよ!? もう少し説明して、ねっ? ねっ?」

「もう我慢できません! ナズが色々変なこと言うから、私、壊れます!

もうダメです! 全部言わせてもらいます!」

とりあえず宝塔を置いてくれたけど、えらく気合いを入れて座り直したぞ。

「私、ナズーリンが好きです! ナズーリンが大好きです!」

このタイミングでそれ!?

えーっと、そのナズーリンは【スーパー・ナイス・ナズーリン】とは別だよね?

この私、【エロズーリン】のことでいいのかな。まて、【エロズーリン】は言い過ぎだろう、我ながら。

ああ、こんなどうでもいいこと、ホントどうでもいいのに。

顔と胸とお腹がどんどん熱くなる。

直で言われるのが、こんなにスゴいことだなんて。

「今度は私が説明します! 語ります! 貴方の魅力を!

私が語れるのはこれだけです!

でもこれだけは誰にも負けませんよ! 聞いてくれますよね!」

あう、これは【おねだり】なんだろうか、気迫に押しつぶされそうだ。

でも、【貴方の魅力を】って、さっきのことといい、勘違いと思いこみで創作された【スーパー・ナイス・ナズーリン】の話だと、お尻がむずがゆいんだが。

「私だっていずれは好きあった男性と添い遂げるものだと思っていました。

それが当たり前なのだと思っていました。

でも、私が困っているとき、心細いとき、悲しいとき、寂しいとき、いつも貴方がいてくれました。

ナズーリン、貴方は自らをいつも【ただのネズミ】と卑下していますが、私を支え、導いてくれました。

常に揺るぎ無く。

それがどれほど頼もしかったことか。

女性に言うのはおかしいと思いますが、私にとって、貴方は誰よりも雄々しく、頼りになる美丈夫です。

あっ、男だと思っているわけではありませんよ?

そんな姿をいつも目の当たりにして、どうして他に目がいきましょう」

【美丈夫】は間違っていないか? 私、こんなに小さいんだよ?

「それに貴方は狂おしいほど愛らしい。

凛とした表情、力強い物言い、機敏で無駄のない動き、それらだけを見れば、ただの格好いい女の子なのに、時折見せる柔らかい笑顔、こっそり苦痛に耐える姿、寝顔のあどけなさ、ああ、貴方がもう少し小さければ、肌身離さず持ち歩くのに!」

ご主人、私、それでもいいよ。

ペ、ペンダントが第一希望かな。

「それにナズが、あっ、いえ、ナズーリンが、探索にいくとき、どれほど心配しているのか知らないでしょう?

貴方が傷を負って帰ってくる度、狂いそうになります。

貴方をこんな目にあわせたものをこの手で八つ裂きにしに行きたくなります。

仏の教えを具現せねばならない私が何度も禁を犯しそうになりました。

貴方は負傷の原因や相手を決して教えてはくれませんでしたね。

私に罪を犯させまい、としてくれていたのでしょう?」

ご主人の心を煩わせるのは本意ではなかったからだけど、そこまで心配してくれていたんだ。

「優しく強く賢いナズーリン。貴方のおかげで私は私でいられます。

ダウジングの能力でもたくさん助けてもらいましたが、私は貴方の心に、貴方の在り方に助けてもらっています。

かっ体はまだ早いと思うのですが、貴方のしなやかな体を抱きしめたら、どんなに気持ちが良いのだろうと夢想する事はあります。

貴方が優しい笑顔で口付けしてくれたのなら、私はどうなってしまうのだろう、と一睡もできない夜もありました。

貴方に意見できる立場ではありません、私はどうしようもなくイヤラシいんです!」

あわわ、それそれそれって、シグナルグリーン? 直進OKってこと?

ホントにいいの?

うえーん、夢? 嘘だったら、夢だったら、私、壊れるよ! 誰か背中押して下さい!

私、一歩踏み出したいよー! うわーん、助けて、誰か助けて、いえ誰かじゃなくって、助けてよ私の大事な『ナズーリン、ごめんなさい、我慢できません!』

妄想を遮ったのは、絞り出すようなご主人の声。

何を謝るのか、と思っていたらにじり寄ってきた。

膝同士がぶつかり、覆い被さるように抱きしめられた。

そして、

唇をふさがれた。

ご主人と、寅丸星と、キスをしている。

驚きはしたが、以外と冷静な自分。

私からすることばかり夢想していたからなのか。

奪うつもりが奪われたからなのか。

ただ唇を押しつけ、荒い息遣いでじっとしている。

不器用だ。

勢い任せで【接吻】なんて甘い感じではない。

でもご主人からしてくれたのだ。

あの潔癖鈍感不器用な寅丸星が自ら口づけてくれたのだ。

どれほどのものと引き換えに決意をしたのだろう、それだけでも感無量だ。

抱擁を解いた彼女は涙ぐんでいた。

「ううっ、ごめんなさい、私、下手です!

初めてのキスはもっと素敵にしたかったのに!

全然ダメです! もっと上手にして、ナズをうっとりさせたかったのに、こんなのじゃうれしくも何ともありません!

私、バカです! ごめんなさい、こんなことしてごめんなさい!」

そんなことで泣きそうになるのか。

可愛いなぁ、嬉しいよ。

背中を押してくれたのはやっぱりご主人だった。

いつも私を助けてくれるのはこの人なんだ。

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