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快傑!ナズーリン!!(4)

「それで昨日は何があったのかしら?」

アリスが氷塊を叩きつけた。

私も少し寒気がした。

「へっ!? あはっ!? いや、あの、その」

魔理沙は、きょろきょろしながら縋れそうな藁を探している。

仕方ない。

魔理沙を助けたいわけではないが、私もこんなことで時間を無駄にしたくはない。

「もういいでしょう。本題に戻らせていただくわよ?」

アリスが軽く座り直した。

矛を収めてくれるようだ。

「ナズーリン、理解していただけて?」

ナズーリンが私を見つめている。真剣に。

力がみなぎるわけでも、気負った感じでも、過度に張りつめた風でもない。

真剣なのに自然体。

プロフェッショナルが【仕事を始める】ときの雰囲気とはこれなのか。

「いくつか質問がある。差し支えのない範囲でお答えいただこうか」

この言い回しに少なからず緊張した。

ナズーリンは私たち一族の、決して外に漏らしてはならない秘密までも知っているのだろうか?

だから【差し支えのない範囲】といったのだろうか?

私の沈黙を了承と判断したのか、ナズーリンが切り出す。

「まず、【宝石羽根】のことだ。レミリアどのが気づいたのはどこでかな?」

「フランの部屋に焼き菓子を持っていった時よ。

一週間ほど部屋から出て来なかったから様子見を兼ねて訪れたの」

そのときのフランの慌て様が、なにか隠している様に見えたのだけれど。

「それは、一週間、部屋から出ないことが不自然だ、ということだね?」

これまで何年も部屋に閉じこもっていた、いや、閉じこめていたのだから、たかだか一週間出て来ないことは不自然でもなんでもないはず。

そう、そのはず。

でも、今は違うの。

「【紅い霧】以降、フランは部屋から出るようになったの。

最近は私と一緒に食事をするようになったし、会話も増えたわ。

あのコは変わった。いえ、変わったのは私かしら?」

あの異変を経て、なにか吹っ切れたようなフラン。

咲夜から【お姉さまと、お話がしたい、とのことです】と聞かされたときは耳を疑った。

初めはぎこちなかった食事会も、今は私自身が楽しみにしている。

「それは良いことじゃないか」

邪気のない笑顔で魔理沙が言った。

息を飲むほど愛らしい。

綺麗だ。このコは成長とともに間違いなく桁外れの美人になる。

いつもそうやって笑っていればいいのに。

彼女なりにフランのことを心配してくれているのだろうか。

「妹君と一番最近会ったのは、一週間前ということだね? その時は【在った】と」

「そうね。それまではほぼ毎日一緒に食事をしていたのに、ここ数日は【気分がすぐれない】【とても眠いから】と顔を見せてくれなかったの」

一週間前の食事会で何があったのかしら。

実のところ、【宝石羽根】よりも、フランが顔を見せてくれない理由のほうが気になっている。

「ふむ、気にはなるが、まずは【宝石羽根】のことだ。

大きさや質感を私自身がある程度知っていないと探しようがない。

私は妹君とは面識がない。書物にある姿絵ぐらいでしか知らないのだ」

「姿絵? フランの姿が描いてある本があるの?」

「お嬢様、こちらでございます」

咲夜が差し出した本は【幻想郷縁起】と書いてあった。

役に立つ従者だこと。

しおりが挟んであり、そこを開くと、まさしくフランの姿絵があった。

そのページに描かれていたフランはなかなか可愛らしかった。

「妹君と面会はできるのかな?」

「できると思うけれど【宝石羽根】を探していると、気取られたくないわ」

羽根を無くしていることを私たちに知られたくなくて部屋から出ないのだと思う。

「それもそうか。

しかし、彼女自身に接触できないにしても、紛失を認めた居室から探索開始するのが定石なのだが」

「そういうことなら後で案内させるわ」

「【快傑ナズーリン】さん、私がご案内いたします」

「さっ、咲夜どのまでっ! ヒドイよ! それっかっ勘弁してもらえないか!?」

少しビックリしているナズーリン。

魔理沙が【プッ】と噴いた。

怪訝そうにしている天然メイド長。

「ご一同、今後、その【なんとか】ナズーリンはやめていただきたい。よろしいな?」

私たちを見廻しながら、決して大きくはないが、力のこもった声で宣告。

まぁ、皆、肯くしかないわね。

軽いノック。

「お嬢様、寅丸星様です」

入ってきた寅丸は顔を上気させ、息遣いも荒かった。

随分と急いできたのだろう。

「お待たせいたしました。ナズーリン、レンズを持ってきましたよ」

「ご主人、早かったね。無理をしたんじゃないかい?」

「いえ、このくらいなんと言うことはありません。

【快傑ナズーリン】のためですもの」

室内が凍り付いた。

「ご、ご主人、その呼び名は【無し】になったのだよ」

顔をひきつらせ、絞り出すようにナズーリンが言う。

「えー? なんでですか? どうしたんですか?

【快傑ナズーリン】、かっこいいじゃないですか?」

魔理沙は下を向いたまま肩が震えっぱなしだ。

笑いをこらえるのに必死のようだ。

かく言う私もツボに入りそうでやばい。

寅丸星、天性の【何か】を持っているのね。

「理由は必要ない、とにかく無しだ、ダメだ、却下だ、許可できん!」

ナズーリンが強い口調で叱りつける。

「うー、では、第二候補の【ミラクルナズーリン】でいきましょう」

は? 第二候補?

「だっ! かっ! らっ! そのテは全部無しなの!!」

どうやら登場時の痴態にはこの寅丸星が、がっちり絡んでいるようだ。

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