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快傑!ナズーリン!!(5)

まだブツブツ言っている主を怖い顔で威嚇しているナズーリン。

寅丸の再登場で思わず脱線してしまったけど、この辺りで少し息抜きも必要だったということか。

「少し休憩にしましょう。咲夜、皆に紅茶のおかわりを」

返事をした咲夜は、時を操らずに洗練された手つきで順序よく紅茶をついでいく。

この動作を見せることも【休憩】のうち、と分かっている。

こんなメイド、ちょっといないでしょ?

咲夜の作った焼き菓子をかじりながら四人を見渡す。

アリスが来てくれたのは分かる。

このコはなんだかんだでホントは情に厚い優しい娘だから。

魔理沙は、まぁ、【オマケ】だしね。

ナズーリン、こいつが分からない。

私の倍以上生きていて、ずば抜けた知恵者であることは間違いなさそうだけど、寅丸星が絡むと、どうにも色々と脆い。

なぜこの愉快な賢者は私の招請に応じてくれたのかしら。

それなりの礼はする、と咲夜には申し付けておいたけれども。

それをナズーリンに問うてみたら、答えたのは寅丸だった。

「私は、こちらに伺うことを後から聞いたのですが、ナズーリンは昔から困っている人がいたら見過ごせないのですよ。

なにはともあれ助けに行くんです。

私は少なくとも、五万回は助けてもらっています」

満面の笑みで言われた。

我がことのように誇らしげだ。

しかし、五万回って、千年にわたるつきあいと聞いているけど、週に一回はなんかやらかしてきたってことよね?

能天気を絵に描いたような寅丸の笑顔を見ながら、この従者の長年の苦労に思いを馳せていると、

「要求された報酬が妥当だと思われましたから【契約】を成立させました」

咲夜が真面目くさって言った。

「報酬?」

【ガタッ】と席を立ったのはナズーリン。

「あ、あの、咲夜どの『十秒間だけ私の体のどこでも好きに触らせる、というものです』

「さっ! 咲夜! おまえ、なんて、はしたないことを!」

私は叫んでいた。

なんということだ。

「しかし、服は脱がなくても良い、とのことでしたので、報酬としては【安い】、と判断しました」

「ちょっ! ちょっと待ってくれ! 咲夜どの! あれは冗談だと言ったはずだ!

冗談だと、少なくとも二回は言ったはずだよ!?」

「そうだったんですか? どうしましょう? 契約内容に不備がでてしまいました」

咲夜は困り顔だが、おまえの頭の中が困りモノだよ、まったく。

それにこのネズミも存外、うかつモノなのかしら。

そのナズーリンの隣から、なにか良くないものがムクムクと湧きだしている。

「ナズーリン。どういうことなのでしょうか?

貴方が咲夜さんを認めているのは知っていますが、ずっと私だけを、この私だけを想っていたと言ってくれましたよね?

あれは偽りだったのですか?」

寅丸からあふれだした怒気が部屋をあっと言う間に満たした。

そして怒気はずんずんと濃く、重くなっていく。

すごい妖力だ。

私たち大妖に匹敵する質と量だ。

魔理沙とアリスも青い顔をして周囲を警戒している。

暴発したら、紅魔館が吹き飛んでしまいそうだ。

止めなければ。

私が腰を浮かしたとき、

「ご主人! あれは挨拶代わりのジョークだよ!

瀟洒と噂に高い咲夜どのが、なんと切り返してくるか試しただけだよ! 本当だ! 嘘ではない!

星! 誓って言うから!!」

大慌てのナズーリン、必死の決死の既死の説得。

もちろん冗談のつもりだったのだろう。

しかし【瀟洒で完璧な従者】と世間では言われているこの咲夜は、実はかなりの天然気質だ。

しかもデンジャラスにしてトホホ系だ。

稀に飛び出すとんでもない言動には結構振り回される。

まぁ、それが可愛いのだけれど。

「冗談でもそんなことを言ってはイヤです。

思ってもイヤです。

ホントに、ホントにイヤですよぅ」

ポロポロと涙をこぼす寅丸。

怒気が急速に薄らいでいく。

すかさずナズーリンが側により、両肩に手をおいて、

「すまない。私の不徳のいたすところだ。

私の胸を切り裂けば、【寅丸星への想い】が湖一杯分は噴き出すのにね」

なにそれ?

「でも咲夜さんは【星五つ】ですし」

「あ、あの、ご主人、その星の件はもう無かったことにするはずだったでしょ?」

星五つ?なんだか気になるわね。

座ったままの寅丸を胸にかき抱くナズーリン。

先刻とは逆の構図だ。

【ナズが悪いんです】とか【不安にさせてしまったね】とか【いやらしい】とか【ごめんよ】とか【バカ、バカァ】とか【私の心に住んでいるのは星だけ】とか【お風呂で詫びる】とか【ご主人が触らせてくれるのなら】には【それとこれとは別】とか、どーでもいい話になってきた。

それにしても騒がしい連中だ。

どうしたものかと思っていたら咲夜が進み出て、言った。

「ナズーリンさん、もう少し長い時間でも私は構いませんが?」

「咲夜っ! おまえはちょっと黙っていなさい!」

こーんのぉ、空気読まない天然メイドが!

わざとか? 分かっていて言っているのか?

バカなのか? バカなのね!? スッゲーバカなのね!?

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