紅川寅丸とTeam東方不敗の作品やご案内

教えて!ナズーリン先生!(4)

当日は朝から寺子屋にうかがいました。

私はナズーリンに頼み込んで助手をさせてもらうことにしました。

壁に貼り付けた地図の前で、説明にあわせて印を付けたり、線を引いたり、文字を書いたりするだけですが。

ナズーリンは普段通りの格好ですが、私は抹茶色の作務衣です。

今日の主役はナズーリンですからね。

なるべく目立たないようにしたつもりですが、

女の子たちが【きっれー(あっありがとうございます)】とか、

男の子たちが【でっけー(なにがですか)】とか、言い始め、

なんだかいたたまれないです。

「今日は、ダウジングの達人、ナズーリン先生に来てもらった。

ダウジングとは、広い意味で物を探すことだ」

慧音さんが子供たちに紹介、ナズーリンが進み出て皆に会釈します。

「ナズーリン先生は、なくしてしまった物を探すために幻想郷中を飛び回っている。

だから地理に詳しいんだ。

今日は先生が、皆が暮らしている幻想郷の地理を色々教えてくれるよ」

慧音さんからバトンを受け取って、

「さーて、諸君、今日は私、ナズーリン先生が幻想郷の【地理】について授業するぞー」

いつもより高い声で茶目っ気たっぷりに、ニッコリ笑います。役者ですねー。

妹紅さんも来ていました。

今はお部屋の隅で慧音さんと一緒に座っています。

ホント、お似合いの二人です。

ナズは子供たちにも自己紹介をさせ、都度、名前を復唱して【よろしくな】と微笑みます。

私も【寅丸星です】【星ちゃん、だね? よろしくな】と微笑んでもらいたいです!

失礼。授業中でしたね。

ナズーリンが話を始めたら、皆は釘付けです。

誰だってナズの話は無視できませんよ。

子供達が理解しやすいように、最初に人里を中心にした東西南北をしっかり教えています。

「キイチ君、東はどっちかな?」

えーっと、と考えながら自信なさそうに左側を指差すキイチ君。

「うーむ、惜しいな、そちらは西だ。

キミの頭の中の地図をひっくり返せばドンピシャだ、そら、やってごらん」

キイチ君は頭をぐるぐる回しています。

それを見た皆は大笑い。

幻想郷の主だった山、川、森、建物、危険なところは何故危ないのか、名跡と呼ばれるところはどのように美しいのか、具体的に、面白おかしく説明していきます。

「そしてこれが命蓮寺、寅丸さんは、いつもはここでお昼寝しているのだ。

おっと、これはここだけの秘密だぞ?」

どっと湧く教室。

まぁ、いいでしょう。

ときに子供をイジり、ときに私をイジりながら、授業をすすめます。

はじめは地図を書き写している真面目な子もいましたが、いつしか皆、ナズーリンの話に引き込まれています。

休憩を挟みながらも、楽しい授業はもう終わりの時間です。

あっという間でしたね。

「さて、諸君、これでナズーリン先生の授業は終わるが、最後に先生から諸君にとっておきの良い話をしてあげよう」

これまで楽しい話を聞かせてくれたナズーリン先生が【とっておき】と言うのですから、子供たちは背筋が伸びます。

「皆が習っている、読み書き算盤、これは基本だ。

まずはこれから始まるからね。

これだけでも生きていくのには困らないが、心豊かに、もっと楽しく生きたいと思うなら、次を学びたまえ。

君たちが次に学ぶのは【歴史】だ」

ここで間を取るナズーリン。

子供たちはキョトンとしています。

「歴史とは、皆のお父さん、お母さん、そしてお爺さん、お婆さん、そしてさらに昔、その時のヒトたちがどのような生活をして、どのような出来事があって、どうして亡くなったのか、それを知ることだ」

ちょっと真面目な顔のナズ。

皆、しんとしています、いきなり難しいです。

「歴史の中にはすべてが在る。

美味しいご飯の作り方、野菜の育て方、服のあつらえ方、病気の治し方、家の建て方、他人と仲良くするやり方、喧嘩をした後の仲直りの仕方、楽しい遊び方、それは全部、歴史の積み重ねなのだ」

また少し間を取ります。

「れきしってすげー」

誰かがつぶやきました。

「歴史を勉強するのは難しい、一人で学ぶには時間がかかりすぎる。

誰かに教わるのが早道だが、よほど良い先生でないとキチンと学べない。

歴史を教える先生は心を正しく、強く持っていなければならない。

歴史を守り、伝えていく、これはとても大変なことなのだ。

私は幻想郷でもっとも優れた歴史学者を知っている。

その方は、学者でありながら、歴史を教えたいと強く願う教師でもある。

あ、教師とは先生のことだよ?」

ナズ、大丈夫ですか?
ホント、難しくなってきてますよ?

「すごい先生だぞ。

真面目で、ちょっと堅苦しいが、子供たちが大好きで、とても素敵な先生だ」

何人かが振り返り、慧音さんを見ています。

「そう。君達が教わっている上白沢慧音先生だ。

君たちは幸運だ、ツいている、ラッキーだ。

千年以上学び続けてきた私が言うのだから間違いはないよ。

幻想郷で一番、いや、他の世界を含めても指折りの素晴らしい【先生】から学べるのだ。

本当にうらやましい」

子供たちは全員、驚いた顔で慧音さんを見ています。

慧音さんは、顔を赤くして下を向いています。

妹紅さんが、そっと腰を抱いて何か囁いています。

いー感じですね。

[←]  [小説TOP]  [↑]  [→]

PAGETOP
Copyright © 2011 東鼠回顧録 All Rights Reserved.