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教えて!ナズーリン先生!(5)

ナズーリンは常に自分の役回りを理解しています。

地理の授業だけではなく、慧音さんの存在を子供たちに強く訴えました。

歴史を通じて人妖の均衡を理解してもらいたいと願う慧音さんは、そのままだと、ただ口うるさく、難しいことばかりを言う【先生】と
思われてしまうかもしれません。

歴史の大事さ、それを教える慧音さんの素晴らしさを子供に理解させるにはこのくらい大げさな言い方が必要なのかもしれませんね。

たまにやりすぎることもありますが、望まれたことには、期待以上に応えようとするナズーリン。

その一見、分かりにくい言動の真意が分かった瞬間、じわっと涙が出ます。

このヒト、ホント優しい、切ないほどに。

仏様、罪深いお願いです。

ナズーリンの一番深い心根には誰も気がつきませんように。

私が生きている間はナズーリンを独り占めにさせてください。

お願いします。凄く罰当たりですが、お願いです。

「そして諸君、今日の授業は付録があるよ」

「先生、ふろくってなんですかー?」

「オマケのようなものだ。

ココにいる皆、それぞれ一回だけだが、探し物で困った時、私、ナズーリンが探してあげよう。

命蓮寺にくるといい」

ニッコリ笑ったナズーリン。

あう、このヒト、ス、テ、キ。

お昼は慧音さんたちがご馳走してくれました。

通された居間からは支度をしているお二人の様子が良く見えました。

交わす言葉は少ないのですが、阿吽の呼吸というか、お互い相手のやることを分かっているというか、動きに無駄がありません。

時折、慧音さんがなにか囁き、妹紅さんがクスクス笑いながら言い返しています。

あらまぁ、なんて楽しそう。

川魚の酒蒸し、薄切り筍の味噌焼き、山菜のおひたし、豆腐の味噌汁と白御飯。

豪勢なお惣菜に恐縮です。

お腹一杯食べちゃいました。

オイシかったー。

「ナズーリンどの、今日はありがとう。改めて礼を言う」

食後のお茶。頭を下げる慧音さん。

「しかし、最後のアレは言いすぎだよ。明日、子供たちにからかわれそうだ」

恥ずかしそうにしている慧音さん、可愛いですね。

「私はそうは思わないな、慧音どの。

貴方は類稀な学究の徒にして、一流の教育者でもある。

自覚と自負を持ってしかるべきだ。

そうだろう? 妹紅どの」

「はい、私もそう思います。慧音はもっと自信を持って良いんですよ」

「二人とも、もう勘弁してくれよ」

か細い声、真っ赤な顔、どうしましょう、抱きしめたくなっちゃいました。

食後、歴史について議論を交わすナズと慧音さん。

どうやら焦点は幻想郷の今後の在り方のようです。

【隔離された世界】が【恒久的に存続】するために必要な条件、そのあたりのようです。

途中、なん度か妹紅さんがお茶を入れてくれましたが、二人は気づきもしないようでした。

慧音さんの真剣な顔を優しげに眺めている妹紅さん。

私と妹紅さんは、お互いの想い人の真剣で凛々しい雰囲気にうっとり。

「ナズーリンさん、寅丸さん、よろしければ晩御飯もご一緒してください」

二人の話が途切れた隙を突いて、妹紅さんが言いました。

あら、もうそんな時間? そういえば、日も随分と傾いています。

「妹紅、あまり無理を言っては」

「慧音が楽しそうだから。ナズーリンさんもよろしいですよね?」

慧音さんの制止を妹紅さんが笑って遮りました。

「ご主人、どうする? 寺の皆には何も言ってきていないが」

ナズーリン、お耳が【もっと話したい】とぴこぴこしていますよ。

「私はご相伴させていただきますよ。ナズーリンもそうなさいませ。

慧音さん、妹紅さん、お願いいたしますね」

ここは私が意を汲んであげませんとね。

「では私が寺へ言伝に行ってこよう、慧音どのに見せたい本もあるし」

「私は一度、庵に戻るよ。帰りに買い物をしてくるから」

「では妹紅どの、途中まで一緒に行こうか。貴方とも話をしたいしね」

ふんわり笑って応える妹紅さん、うわぁ、このヒトやっぱり可愛いです。

慧音さんと二人になりました。

「寅丸どのは退屈だったんじゃないか?」

「いえ、私、ナズーリンが真剣に話をしているところ大好きなんです」

「お二人は本当に仲が良いのだな。羨ましい」

「慧音さんと妹紅さんも仲がよろしいようですね」

「うーん、そう見えるのかな。しかし、どうなのだろう、よく分からない」

難しい顔になった慧音さん。

「話は聞いたのだろう? アイツは辛く悲しい生を送ってきたのだ。

なんともすさんだ目をしていた。美しい容姿なのに。

はじめは同情だったよ。

慰めてやろうと半ば強引に家に招いたのだ。

私はすぐには気づけなかったよ、その泣き声に。

たくさん辛い思いをして、たくさん虚しい戦いをして、心が泣いていた。

泣いているのに涙は出ず、喉も嗄れ、ただひゅうひゅうと聞こえるばかり。

ずっと泣いていたのに。

毎夜家に招いて、一緒に食事をして、少し話をするだけだった。

特になにをしたわけでもない。できることもなかった」

いえ、慧音さん、貴方のしたことはとても素敵なことなんですよ。

「来ない夜は探しに行った。

そのうち用事のない日はウチに泊まるようになった。

彼女の部屋も用意した。

少しずつ自分の話をしてくれるようになった。

これまでに二回、私の前で泣いたよ。

一度は声を押し殺し、二度目は大声で。

悲しかった、苦しかった、死にたかった、誰か傍にいて欲しかった、と。

私の能力を使って、悲しい歴史を【喰って】しまおうとも思った。

しかし、近頃の妹紅は泣いてはいない。

私が余計なことをする必要はなくなったように見える」

それは慧音さん、貴方のおかげなんですよ。

「寅丸どの、貴方は分かってくれると思う、私は妹紅がなによりも大事なのだ。

あの娘の生き方が可哀想だと思っていたが、今はそれに耐えてきた強靭なのに優しい心根に惹かれているのだ」

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