紅川寅丸とTeam東方不敗の作品やご案内

ナズーリンデスク! スクープです!(3)

「結果がすべてよ。忘れないで」

文は、そう、吐き捨てて飛び去った。

残された三人。

「姫海棠はたてどのだね? お初にお目にかかる。ナズーリンという。

こちらの寅丸星の【夜のおもちゃ】だ」

「ナズーリン!!」

「おっと、これは願望だった。

今のところは寅丸星の【下着専門の洗濯係】に甘んじているがね」

「ナッ! ズー! リーン!! こらーっ!!」

ナズーリンの冗談と寅丸の怒号に、困り顔のはたて。

「こちらの無理に乗ってくれて感謝するよ。私の合図を分かってくれたんだね」

ぎゃおぎゃお言っている寅丸を片手で制しながら、はたてに笑いかける。

「うーん、なにか事情があるように見えたからねー」

「君にとっても悪い話じゃないよ。まぁ、詳しい打ち合わせは明日にしようか。

評判のよい新聞を見繕って、命蓮寺に来てくれたまえ。

いろいろとびっくりさせてあげよう」

はたてと別れ、寅丸とナズーリンは家路についている。

「ナズーリンらしくありませんでした。

射命丸さんをわざと怒らせていましたし、その、なんだかとても下品でしたよ」

とがめるような口調の寅丸。

ナズーリンは気にせずに話し始めた。

「天狗は他の妖怪を見下している。これは習性と言っても良いね。

社会構築、技術力、独自の文化、自分達が持っているそれらを持たないモノを下に見るのは仕方のないことだろう。

まぁ、格下のモノを支配しようと考えないだけ人間よりはマシだがね。

だから、元より彼女たちの人格までを否定するつもりはないさ」

軽く肩をすくめておどけてみせる。

「随分と突っかかってきたよね。

新聞大会とやらが近くて気が張り詰めているのだろう」

「どうしてですか? なにか理由があるんですよね?」

少し疑わしそうな寅丸の質問。

「彼女に悪意はないにせよ、報道機関の力は侮れないよ。

特にここのような情報入手の手段が少ない狭い社会ではね。

捏造された話も、根も葉もない噂も、度重なれば馬鹿には出来なくなる。

早いうちに押さえておきたかったのだよ。

いずれは弱みを見つけるなり、協力体制をとるふりをするなりして、ある程度こちらの制御下におくつもりだったからね。

意識改革も出来ればもうけものだ。

こちらの存在を認めさせるために少し痛い目に合わせてから、譲歩案を出そうと思っていたのだよ。

そのきっかけを探していた矢先だったから、願ったりかなったりだ」

得々と語るナズーリン。

主人からの賞賛を期待し、その顔を見上げる。

しかし、寅丸は前を向いたまま口をつぐんでいる。

「なんだね? ヒドい奴だと思ったのかい?」

力なく首を振る寅丸。

それを見て少し不安そうなナズーリン。

「なんと思われようと、やるよ、やってやるさ、見ていたまえ」

寅丸からの返事はない。

「嫌いになったかな? でもやめないよ、分かって欲しいんだが」

未だ返事をくれない主人、縋るように見上げる従者。

「ねぇ、ご主人」

手をつなごうと左手を差し出す。

が、その時、寅丸の右手は、顔を覆うためにさっと引き上げられた。

空を切った従者の手。

偶々タイミングが合わなかっただけ。

並んで歩いていたはずのナズーリンが隣にいないこと気づいた寅丸が振り返る。

無表情で立ちすくんでいるナズーリン。

見開いた両目から涙がこぼれていた。次々と。

拭おうともしない。

寅丸が慌てて駆け戻る。

「ナズーリン!どうしたんですか!?」

「キラ、イ、ニ、ナラ、ナイ、デ、ワ、ワタシ、キ、キライニナ、ナラ、ナイデ、ワタ、シヲ、キラ、イニナラ、ナイデ、ワタシ、キライ、ナラ、ナイデ」

ガクガクと震えながら、壊れた自動人形のように繰り返す。

虚ろな目からは涙が止まらない。

愛しい人の突然の変容に驚く寅丸。

「ワタシ、キライ、キライ、ワタシ」

「ナズ!! 違うんです!」

小さな体を思い切り抱きしめる。

ぜひゅー、ぜひゅー、と不安定な呼吸音。

背中を優しく撫でながら、落ち着くのを待つことしばし。

やがて寅丸の良く知る、いつもの呼吸と心音に近づいてきた。

「ナズが他人を傷つけようとするのは考えがあってのことでしょう?

ヒドいことをするように見えても、必ずなにか意味があるでしょう?

でも、貴方が他人を傷つけようとするとき、いつも貴方の心はその何倍も傷ついているじゃないですか!

今回もそう、貴方はとてもつらそう。

私はそれが嫌なんです!!

貴方はなぜ、そこまでするんですか?

自分を傷つけてまでも、余計なことをしてしまうんですか!?」

抱きしめ返したナズーリンが寅丸の胸から顔を上げる。

「この場所や住人たちを、ご主人にとって、少しでも、快いように変えていければ、と思っているの」

ようやく聞き取れるほどの小さな声でナズーリンが言った。

「そんな、そんなことまで頼んでいませんよ! やりすぎです!

そんなことで貴方の心が傷ついていくなんて、嫌ですよー!」

叫ぶ度に強く抱き、寅丸の目にも涙が浮かぶ。

「ナズ、ナズ、ダメです、もうやめましょう! 私、もう十分ですよー!」

自分のためにここまで周到に考え、その身と心を削る従者にして無二の恋人。

寅丸にとっては、この献身が痛い、そしてつらい。

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