紅川寅丸とTeam東方不敗の作品やご案内

ナズーリンデスク! スクープです!(4)

抱かれたまま、さらに涙をこぼすナズーリン。

先ほどとは違い、柔らかい表情であったかい涙。

「あのね、ワタシを理解してくれるヒトがここにいるの。

愚かで、淫らで、ちっぽけなワタシなのに。

許して、包み込んで、優しくしてくれるの。

十分なの、これ以上、望むものなどないの。

ワタシ、ワタシ、もう十分。

なんと蔑まれようと、誰から嫌われようと、痛くも怖くも悲しくもないの。

だから、だから、そばにいてね? ワタシそれだけでいいから」

顔を上げたまま、主人をさらに強く抱きしめるナズーリン。

「星! ダメだよ!? 勝手にいなくなったら、ダメだからね!

そばにいてくれないとダメなんだからね!!」

幻想郷の有力者たちがそれぞれに一目置く【小さな賢将】が、べそをかきながら、幼子のようにわがままを言う。

寅丸は、恋人が自分にだけ晒す【弱さ】と【脆さ】が愛おしく、何度もうなずきながら、

「ナズ、大好きです」

と何度も繰り返した。

しばらくして平静を取り戻したナズーリンはごまかすように言う。

「ご主人の放置系遊戯、半日どころか一刻ももたないとは情けない。

まったく、この私が貴方には泣かされてばかりだ。

ご主人は意外と加虐性欲が強いんだな」

いつもの冗談で混ぜっ返そうとしたナズーリンに、今回の寅丸は柔らかく微笑むだけ。

それを見たナズーリン。

「ちぇー、ご主人にはかなわないな」

そして少しの逡巡の後に発した、小さめの声には、はにかみがたっぷり。

「あ、あのね、星、【大好き】【愛している】それ以上の気持ちはなんと言えばよいの、かな?

ぜんぜん足りないよ、想いが伝わらないよ、弱すぎる」

「ナズ、私も十分です。貴方がいてくれれば十分ですから」

「ご主人、ずるいよ。それ、さっき私が言った言葉じゃないか。

自分の言葉で言いたまえよ。なんだかずるいよー」

そう言って頬を膨らませる。

むくれる恋人の頭を優しく撫でながら、満ち足りた表情の寅丸。

文の隠れ家。

犬走椛に、もたれかかって、だらしなく座っている文。

二人は表向き、仲が悪いことになっている。

そんな時期も確かにあったが、今は熱愛中。

今日の出来事を話している文。

一通り聞き終えた椛は少し考えた後、話しかける。

「この度は文さまにも非があるような気がしますよ」

椛の意見に心の中で首肯する文。

確かに言い過ぎたと後悔はしている。

改めて写真を見比べれば、ナズーリンの言う、違いが分かる。

しかし、文の憤りはそこではない。

「信じられないわ、山菜の女体盛りや、わかめ酒ってなんのつもりかしら!?」

なにやら考え込んでいる白狼天狗。

「椛? ねぇ椛、どうしたの?」

「女体盛りとわかめ酒ですか」

「も、もみじ?」

「文さま!」

真剣な顔でのぞき込んでくる椛、のけぞる文。

「はひっ!?」

「女体盛りとわかめ酒、どちらになさいますか?」

「えっ、どちらって、なんの二択なの?」

「私はわかめ酒ですかねー。

文さまはくすぐったがりですから、こぼれないように、がっちりお尻を掴んでおきませんとね」

「も、椛、あなた、な、なんであなたにそんなことしなくちゃならないのよ!?」

「お酒は冷たいの、熱いの、どちらになされますか?」

「えっ、また二択?」

「いずれにせよ文さまの肌温になりますが、始め、ひゃっこーいのと、あっつーいのと、どちらにしましょうか?」

椛の【押し】に、文は抗えた試しはない。

「えとえと、熱いのは嫌だから、つ、冷たい方がマシなのかしら?」

「ではキンキンに冷えたお酒を注ぎましょうね。

三角の泉に、小さな氷も浮かべましょうかね。

我慢できますか? 氷が溶けるまで我慢できますか?」

ぐいっと顔を近づけ、たたみかける椛。

「が、我慢できなかったら、ど、どうなるの?」

不安そうな文。

「うっかり動いたら、冷たいお酒が大事なところに回ってしまいますよ。

私、余さず飲まなきゃなりませんしね。ええ。

その場合は、なに酒と言うんでしょうか?

ねぇ文さま、なんと呼べばいいんでしょうね?」

「えっ、しっ知らないわよ!」

「物知りな文さまが知らないわけないでしょう?

ねぇ、教えてくださいよ」

文の腹部に人差し指を、くりくりとねじ込みながら追求する。

「ちょっと、椛、くすぐったいわ、知らないったら、知らない、ホント知らないわよぅ」

ぷしゃっ、と笑った。

この顔は【外】では絶対見せない、犬走椛だけが知っている射命丸文の無防備な笑顔だった。

「そうしていた方が可愛いですよ、喧嘩はよしましょうよ」

指を離し、両手で文を抱く椛。

「ナズーリンと言いましたか、なんだかそやつ、得体が知れません。

でも、えらく手強いような気がするんですよ。

ねぇ、文さま、敵対するのは、やめにしませんか?」

「そうは行かないわよ、私だって引けないときはあるもの。

はたてには言い過ぎたかもしれないけれど、あのネズミは生意気よ、とっちめてやりたいわ。」

「文さまは意地っ張りですね。

私はいつでも文さまの味方ですよ、頑張ってくださいね。

でも、戦うなら【敵】を知っておくべきだと思いますけどね」

椛の言はもっともだった。

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