紅川寅丸とTeam東方不敗の作品やご案内

ナズーリンデスク! スクープです!(6)

視線を社に移し、少し照れた風情のナズーリン。

「今朝、源平葛の紅白の花が、陽と露をまとい、煌めいておりました。

そのあまりに可憐な様子に巫女さまを思い出し、居てもたてもいられず参上した次第です。

神職たる貴方様に懸想しているようで、なんとも罰当たりでございますが、なにとぞ御寛恕をいただきたい」

深々とお辞儀。

「まぁ、いつもお上手ですこと。

いつの日か本気にしてしまうかも知れませんことよ?」

「ではその日を心待ちにすることにして、今日は失礼をいたしましょう」

「もうお帰りですの? お茶も召し上がってくださらないのですか?

いつもすぐに帰ってしまわれますのね。

ゆっくりとお話をしたいものです」

「ありがとうございます。そのお気持ちだけで、十分なご利益です。

心卑しいネズミ故、そのお言葉に甘えたら最後、帰りたく無くなってしまうに違いありません」

大げさに目を剥き、おどけてみせる。

「ご冗談ばっかり」

口に手を当てて、ころころと笑う。

「ではこれにて失敬」

「あ、ナズーリンさん」

振り向くナズーリン。

「今日一日、貴方のご無事を祈らせていただきますね」

満面の笑みで応え、会釈するナズーリン。

そして、再び身を翻し、静かに帰って行った。

眉間に皺を寄せた射命丸が近寄ってきて、

「なんですー? いまのやりとり。とーっても気持ち悪かったんですけど?」

「んなこたぁ、わーってんのよ」

いきなり伝法な口調に戻る霊夢。

「清楚で麗しい巫女さま、その巫女さまに気があるんだけど、きちんと言い出せない小洒落た紳士。

そんな感じの即興劇ってところかしら?」

「自分で清楚とか言っちゃうんですか?」

「だーかーらー、役を楽しんでいるんだってば!

お互いボロがでないうちに、さっさと終わらすワケよ」

口元を引き締め、少し真面目な表情の霊夢。

「あのやりとりの間、私は清楚で可憐な博麗の巫女さま、なんだもの。

悪い気はしないわ、お賽銭もお土産もあるし、【巫女さま】扱いだし。

冗談にせよ、あんな風に私を扱ってくれるのって、【あの御方】だけだもの。

博麗の巫女、ってことになっているけど、正直ピンとこないで今までやってきたの。

異変解決、妖怪退治、やっているときはそれなりに集中しているけど、終わった後、ここに帰ってきて一息ついていると、私って何だろう? 博麗の巫女って何だろう? って思うときがたまーにあるのよ。たまーによ?

嫌になるわけじゃないけど、空っぽになっちゃう感じって言えばいいのかしら?

私と【博麗の巫女】が重ならなくなるって言うか」

それまで淡々と語っていた霊夢が文に向き直り、少し表情を崩し、照れくさそうに再開する。

「そんなときに正面きって【博麗の巫女さま】と呼んでくれたのが、あの御方なのよ。

はじめはもちろん胡散臭さ爆発だったけど、本気っぽいし、本音も話してくれたし、まぁ、いいかって感じだったけど、言われる度に、私、ここの巫女なんだなー、と、博麗霊夢なんだなー、と少し落ち着くの。

だからなに、って訳じゃないし、偶々なんだと思うけどさ。

初めてよ、ホント初めて。くすぐったいけど、嬉しいのよ。

洒落でもいいのよ。楽しいもの。下心? 構いやしないわ。

まぁ、結界を壊せとか、誰かを封じろとか言われたら、そりゃしないけれど、特に問題が無い範囲だったら、最優先で応えたいわねー」

少し間を取り、文の顔をじっと見つめる。

「例えば、あの御方に【鴉のブン屋が目障りです。懲らしめてもらえませんか】と頼まれたら、二つ返事でやっちゃうかもね?」

そう言って意地悪く笑う霊夢。

少し青ざめる文、冷や汗が首筋を伝う。

「そんで、あの御方のなにを聞きたいんだっけ?」

「いえ、あの、もう結構です」

そそくさと飛び去る文。

寺子屋がはねた夕刻、上白沢慧音と藤原妹紅は夕餉の支度をしていた。

射命丸文の問いかけに支度の手を止め、寄り添って文に向き合う。

「尊敬できる学者にして、知識を伝える術に長けた熟練の語り部、賢者と呼ばれるに値する人物だ」

過剰な修辞に満ちた慧音のコメントに対し、妹紅は一言。

「素敵な先生」

最上級の賛辞、ほとんど参考にならないコメントに文の顔はあからさまに曇る。

その反応を見た妹紅が警戒し始めた。

【先生になにをするつもりなのか】

警戒色は攻撃色に変わりつつある。

藤原妹紅は【素】の戦いにおいては最強クラス。

本気でふっかけられれば、鴉天狗といえども、無傷では済まない。

文へ向けた視線をまったく動かさない妹紅。

ほんのわずかなやりとりの間に、場は息苦しい緊張感に包まれる。

[←]  [小説TOP]  [↑]  [→]

PAGETOP
Copyright © 2011 東鼠回顧録 All Rights Reserved.