紅川寅丸とTeam東方不敗の作品やご案内

ナズーリンデスク! スクープです!(7)

「妹紅、怖い顔だよ」

そう言って慧音は妹紅の髪を優しくかきあげ、耳たぶを、かぷっと噛んだ。

「ひゃううん!? け、慧音!」

張りつめていた【気】が、すぱーっと霧散した。

「今夜は【ほ】の3番で遊ぼうか?」

「えっ? 【ろ】の2番じゃなかったの?

それに、【ほ】の段はしばらく封印するって言ったじゃない」

「今日は特別だ。急ぐ仕事もないし、明日は寺子屋、休みだしね。

3番から5番に飛んでも良いよ」

「ご、5番!? 初めてよね!? 慧音、大丈夫なの?」

「ああ、頑張るよ。今夜は私の底力を見せてあげるからね」

軽くウインクする慧音。

「じゃ、じゃぁ、私、支度してくるから! たくさん集めてくるから!

慧音! ご飯のこと、後お願いねー」

言いながら走り去る妹紅。

こんな時間から支度する遊びって?

遊び方の区分、番号付けって?

文にとっては、聞きたいことは山盛りだ。

しかし、明らかに妹紅を退出させるための方便を施してくれた慧音に礼を言うのが先だ、と口を開く前に、

「さて、言いなさい。ナズーリンさんになにをするつもり?」

目が座っている。

妹紅のとき以上に恐怖を感じる文。

妹紅の怖さが、純粋にその戦闘力による迫力とすれば、今の慧音の怖さは単純な【力】とは異なるものだった。

戦えば容易に勝てるはずなのに、仕掛けようとする気力すら押しつぶす、正体の知れない圧力。

それは、今の文を竦ませるには十分だった。

文は図らずも【競争】のこと、相手の情報を得ようとしたことをしゃべっていた。

「そうか。面白いことになっているのだな」

相好を崩す歴史学者。

「陳腐な言い方だが【血涙を流すほどの努力】を何百年も積み重ねて掴み取った、限りなく真実に近い知識と、熟集された経験則、それを巧みに操る実践行動。

その本物の【知力】の一端に触れられるだろう。

良い学びの機会を得たな。僥倖なことだ」

この教師が自分よりずっと若いことは知っている。

なのにいつも気後れしてしまう。

経てきた【生】の濃度の違いなのか、かなわないと思ってしまう文だった。

だが、学びの機会と言われても、理解したくは無い。

負けること前提で【勉強させていただきました】と言わされる展開には我慢できない文だった。

紅魔館では当主とその妹がテラスで紅茶を喫していた。

「一言でいうなら、恩人、かしら?」

怪訝顔の妹に優しく微笑みかける。

「私たちにとってのね」

以前になにか絡みがあったのだろうが、それ以上を聞き出せる雰囲気ではなかった。

退出際、十六夜咲夜に呼び止められた文。

「貴方がなにをしようと興味はないけれど、忠告してあげるわ。

【快傑ナズーリン】にちょっかいをかけるのなら、覚悟なさい。

必ず痛い思いをするわよ。

想像できる最悪の状態、さらにその三倍以上のダメージを受けると覚悟なさい」

そこまで言った咲夜は少し表情を綻ばす。

「何かあったんでしょ? 状況が許すなら、早いところ謝っちゃいなさいな。

根は優しいヒトだから、きっと許してくれると思うわよ」

しかし、今さら頭を下げるわけにはいかない文。

「そうはいきませんよ」

むっと言い返す。

咲夜は、軽いため息のあと、

「それならば最後にもう一言だけ。

紅魔館当主【レミリア・スカーレット】は【恩人】に害をなそうとするものを決して許さないでしょう」

一拍置いて、

「そして、この私もね」

一瞬だけ文をねめつけた後、その視線を、にこやかに話続ける吸血鬼の姉妹に戻した。

魔法の森では黒白魔法使いと人形遣いがキノコ採りに勤しんでいた。

「んー、アイツか、ヤな奴だぜ。いろいろ余計なことまで知っているし、嘘つきだし、悪知恵は働くし、詐欺師だし、エッチだし、変態だし、痴女だし、変態だし」

「変態って、二回言いましたよ?」

「二回? そうか、それじゃ足りないな、追加するぜ。アイツは【ド変態】だ」

「ちょっと、魔理沙、言いすぎでしょ? そんなに悪いヒトじゃないわよ?

やり込められたからって、ヒドいこと言っちゃダメよ」

アリスの言葉を聞いた文は内心驚いている。

【この傍若無人な霧雨魔理沙をやり込めた?】

「ふん、いつか泣かせてやるぜ」

「絶対、貴方が泣かされるわよ。今の貴方がかなう相手じゃないわよ」

なんだかんだで幻想郷ではそれなりに認められている霧雨魔理沙。

その魔理沙を良く知るアリスが【かなわない】と言っている。

今までの聞き込みからして、単なる戦闘力の話ではないことは明白。

山の神社では顔を知っている程度。

永遠亭、白玉楼では【誰? それ?】

交友範囲にムラはあるが、ある程度接触した先には強烈な印象を与えている。

椛の言っていた【得体が知れない】その力の正体がおぼろげに見え始め、楽観主義の文も不安を感じていた。

だが、後には引けない。

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