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ナズーリンデスク! スクープです!(13)

「結果は明白だな。 さて、約束だね」

「好きになさいよ!」

普段にも増して写真を多めに配置し、記事の数で勝負をしようとした(文々。新聞)は選外。

(花果子念報)は最下位ではあるがランキング入りを果たした。

人里での【受け】が無視できないほど大きかったことが要因だ、とナズーリンは評した。

「射命丸文、姫海棠はたて、二人共同で新聞を作りたまえ。

三回でいいだろう。号外ということで作ってもらおうか。

新聞の名は(文果新報)だ」

呆然としている文。

てっきり、とんでもない下品な要求をされると思っていたから。

「返事はどうした? 約束だろう?」

もとよりはたてに否はない。敬愛するデスクの要請だから。

文がフットワークを活かしネタを拾い集める、ネタを吟味し、はたてが密着取材する。

何度も喧嘩する二人を都度、ナズーリンが調整する。

妥協点ではなく、昇華点のヒントを提示していった。

ネタの豊富さ、個性的な写真、熟考された考察記事、意外な情報、トンでもない青文字記事。

(文果新報)は、驚かされ、笑わされ、考えさせられる、いわゆる【面白い】新聞だった。

評判は上々、各地から【定期購読したい】との要請が相次いだ。

その内容の評価は、辛口書評で知られる八意永琳のコメントがすべてを語っていた。

「次はいつ出るのかしら? 定期購読料はいくらなの?」

あまりの人気に、最後の三号目が出たところで、天狗社会の上層部から、『待った』がかかった。

【新聞編者は個人であることが望ましい】と初めて聞く、忠告のような恫喝が伝えられた。

命蓮寺に、そのことを伝えにきた鴉天狗二人を前にしてナズーリンは腕組みで考え込む。

少し離れたところで寅丸が心配そうにしている。

「予想通りだな。

射命丸どのとはたて君が力を合わせると、天狗社会にも多大な影響を与えてしまう、ということだな」

はたては反響の大きさにうろたえていたし、文でさえ、ここまで評価されるとは予想していなかった。

ナズーリンが優しく笑う。

「キミたちは優秀な新聞記者だ。

今回の合同作業で自分の足りない部分も分かっただろうし、それぞれの個性も再認識できたはずだ。

(文果新報)は解散するが、これからもお互い、切磋琢磨し、良い新聞を作って欲しい」

文はこの偉そうなネズミに何か言ってやりたかった。

だが、共同作業中の充実感と日に日に高まる反響と期待感に快く酔っていたもう一人の自分に後ろ頭を掴まれ、無理やり頭を下げさせられた。

しばらく頭を下げたままの文は、踵を返し、飛び去った。

「いつか借りは返します!」

そう言い放って。

ナズーリンとはたてが向き合っている。

「はたて君、キミに謝らなければならないんだ」

ナズーリンのこれまでに無いほどの真剣な表情。

不思議そうにしているはたて。

「キミを利用していたんだ。

訳あって射命丸文を凹ませたかったのだ。

そのためにはキミの存在がちょうど良かった。だから利用したんだ」

深々と頭を下げる。

「だが、キミに伝えたことには嘘は無い、出来る限りのことをしたつもりだ。

しかし、騙していたことに変わりはない。申し訳ない。

罵るなり、殴るなり、好きにしてくれ」

膝をつき、うつむくナズーリン。

しばらくしてはたてが告げる。

「デスクは正直ですね。それも馬鹿がつくほど。

黙っていれば気がつかず、【皆、幸せになりました】で終われたのに。

ホント、おばかです。

でも、それが、それこそが私の尊敬する【ナズーリンデスク】なんですよね」

はたての目が潤み始める。

「デスクのおかげで私、たくさん勉強させてもらいました。

私、変われたと思うんです。

私、嬉しかったんです。ヒトから怒られたことは何度もあるけれど、私のために本気で叱ってくれたのはデスクだけだから。

でも、申し訳ない、とおっしゃるなら、一発だけお見舞いします」

その言葉を聞いたナズーリンは立ち上がって目を閉じ、歯を食いしばる。

はたてはナズーリンではなく、寅丸に視線を移す。

「寅丸さん、ごめんなさい」

敬愛する指導者を、そっと抱擁し、耳元で【ありがとうございました】と告げる。

そして、軽く触れるだけの接吻。

「恐くて厳しいけど、誰よりも優しく素敵なナズーリンデスク。

教えてもらったことは私の宝物です。

どんな思惑があったのか、そんなこと関係ありません。

私と一緒にいてくれた時間、姫海棠はたてにぶつけてくれた情愛は本物だと分かっています。

だから、これでお別れなんて絶対嫌です!

私、頑張りますから、これからもバックアップ、よろしくお願いします!」

ナズーリンから離れ、潤んだ目で飛び去った姫海棠はたて。

「えーと、ご主人、今のは、なんと言うか、その」

主人の勘気に触れたのではないか、と恐々見上げる。

「私の前で正々堂々でしたね」

意外なほど穏やかな表情の寅丸。

「ちょっとヒヤヒヤしました。

だってはたてさん、ナズーリンの最も深い優しい心根に触れかかっていたんですもの」

「さて、それはどうかなぁ?」

「あそこで本心を打ち明け、正直に謝るのもナズーリンですね。

はたてさんじゃないですけど、ホント、おばかさん。可愛いおばかさん」

ナズーリンが寅丸に抱きつく。

「ナズーリン? どうしたんですか?」

「ここしばらく新聞づくりにかまけてご主人が不足していた。カラカラだよ。

世にも珍しい【ナズーリンの木】は、寅丸星という【水】が無いと枯れてしまうんだよ。

だ、か、ら、たーっぷりと水分を補給させてもらうよ?」

【おばか】呼ばわりが少し面白くないナズーリンは、困らせるように艶っぽい声で告げた。

「私の水分って! たっぷりって! ちょっと! ここじゃいけませんよ!」

「あーん? ちょっとキスするのもダメなの?」

「へ? キッ、キスッなんですか!?」

ニヤニヤするナズーリン。

「ご主人、なにを想像しているのかな? どこの水分かな?

うーん、些か【エッチな妄想】が過ぎるようだね。

いかんな、いかんよ、エロもほどほどが肝心だ。

スケベ根性も大概にしておきたまえよ?」

「うっかー! ナズに! ナズに言われましたー! うえええーん」

「おっと、もったいない、先にこちらからいただくかね」

ぺろちゅう

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射命丸文は大好きなキャラです。今回は涙をのんで敵役にしました。
はたてのイメージがつかめず、苦戦しました。オリキャラのようになってしまいました。
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