紅川寅丸とTeam東方不敗の作品やご案内

魔法使いナズーリン! 放てマスタースパーク!!(2)

「お二人とも楽しそうですね。はたてさん、おはようございます」

実は妬きもちやきのご主人だが、はたて君には不思議と寛容なのだ。

私を抱きしめたままの彼女にもちょっと困った顔をするだけだ。

「寅丸さん、おはようございまーす! 今朝の【スープ】はなんですかー?」

朝の参詣者向けにご主人が用意している朝汁(あさしる)は、寺の名物になりつつある。

最近のはたて君は、当たり前のようにもらいにくる。

よほど気に入ったのだろう、まぁ、私は一向にかまわないのだが。

ちょくちょく珍しい食材を持参するし、私の対面をおもんぱかってか、寺の皆には礼儀正しく接しているので魔理沙と違って受けが良い。

「今日は冬瓜とヒラタケのお醤油仕立てです。

卵をふわふわ溶いてありますよー、あ、カタクリで少しとろみをつけていますから、熱さがこもっています、火傷しないように気をつけてくださいね。

あと、刻んだ柚の皮を置いてあります、お好みで散らしてくださいな」

「あはー、美味しそー、いただきまーす。

えーっと、寅丸さん、あの、今日は」

「はい、はい、お弁当ですね。用意しますからちょっと待っていてくださいね」

ご主人はにっこりして厨房へ向かった。

やれやれ、昼の弁当もねだるとは。

清々しいほどの図々しさだな、まぁ、はたて君だからいいか。

大鍋から自分でよそった朝汁を、ふーふー冷ましながら、ちょみちょみ飲んでいる。

一人っきりでの食事が多いと、食べ方が雑になるのが普通なのに、このコの食べ方には可愛げがある。

飲み終わる頃を見計らって話しかける。

「そう言えば、先ほどの連続写真のことなんだが、キミの写真機は【連写】ができるのだったね? 使わない手はないな。

この間の煎餅屋の早業の記事だが【目にも留まらぬ早業】それを連続写真で納め、カット毎に、解説を入れてみてはどうかな?」

新聞づくりに関して、たまにアドバイスのようなものをしてやっているのだ。

「あ、あー、そうか、そうですよね!

ありがとうございます! デスク! 早速、やってみます!」

そうこうしているうちに、ご主人が弁当の包みを携えてやってきた。

「はい、どうぞ。今日もお仕事、頑張ってくださいね」

「ありがとうございます!!」

はたて君は勢いよく直角に腰を曲げ、礼をする。

少し後ろにいた私にはお洒落なランダムストライプがもろ見えだ。

ううむ、スカートが短すぎるのだな。

注意するのも無粋なのかな。

困ったもんだ、うん。

しかし、はたて君、キミ、尻の形が良いな。かなり良い。

スレンダーボディーなのに、きちんと主張している、キレイな逆さハート型だ。

あ、そうか、ご主人の尻に似ているんだ! 縮小版だが、確かに似ている。

だから好ましいのか、うん、納得だ。

「はたてさん、よろしければ今夜は寺へ寄ってくださいな。

猪豚のお肉をたくさんいただきましたので、薄切りにして、ほうれん草と一緒に【常夜なべ】にしますから。

慧音さんから教えていただいた、特製ぽん酢と、たっぷりの大根おろしで食べるんですよ。

はたてさんが好きな【鬼おろし】も用意しますから、是非いらしてくださいね」

そして、にーっこり。

通称【慈愛の毘笑】。

老若男女を問わず片っ端から虜にすると評判の、ご主人の必殺技だ。

はたて君は、カクカクカックカクと頷き、

「かーんならずぅ、まっいりぃまっすぅ!!!」

弁当片手にカッ飛んでいった。

今日は三食とも命蓮寺、いや寅丸星か。

はたて君は私の唇を強奪した前科持ちなのに、何故かご主人は甘い。

以前、そのことを聞いたら、

【あの時はびっくりしましたけど、はたてさんはナズーリンのことを、分かってくれるヒトです。

もちろん妬けちゃいますけど、ナズの良さを理解するヒトがいることが、嬉しいんです。

あまりたくさんのヒトにナズの良さが知れ渡っては困ってしまいますが、少しは知って欲しいんです。
私、矛盾していますよね? でも、そんなムズムズする感じなんですよ。

それに、はたてさん、いつも一生懸命で可愛いじゃないですか】

なんとも鷹揚なことだ。

逆の立場だったら、私は我慢できそうに無いのだが。

やはりご主人は器が大きいんだよな、素敵すぎる恋人だ、ちぇっ。

はたて君が去った後、魔法使い二人の鍛錬を覗いてみることにした。

聖の得意分野は身体強化系魔法だ。

魔理沙に、弾幕ごっこに不可欠の回避運動、その際の機動力をあげるための身体強化魔法を手ほどきしているのだ。

今、聖が説明しているのは、急停止、急激な方向転換に耐えるための筋力、動体視力を一時的に上げるための魔法だ。

これでも私はある程度、魔法に通じているから大体分かる。

内緒だがね。

ただ、魔法使いを生業とするつもりは無い。

魔法は、下拵え、準備がほとんど全てといって良い。

結構面倒な商売なのだ。

「ねぇ、おばあちゃん」

魔理沙が聖に問いかけた。

ん? おばあちゃん?

「なんでしょう?」

「ワタシ、もう、【天馬壱式】を使って良いんでしょ? 早く試したいんだけど」

「魔理沙、慌ててはダメよ。

アナタは確かに飲み込みが早いけれど、身体強化の魔法は最初の発動がとても大事なのですよ。

今日はこれまでのことをしっかりおさらいして、発式は明日にしましょうね」

「えー、おばあちゃんのけちー」

「なんと言われよう明日です。

そのかわり、今夜は一緒にご飯をいただきましょうね。

【常夜なべ】ですよ」

「ホント!? ワタシ、なべ大好き! やったぜー!」

そう言ってピョコンと飛び跳ねた。

横顔しか見えないが、満面の笑みのようだ。

このコの無邪気な笑顔はスゴイ破壊力だな、横顔だけなのに見とれてしまったぞ。

横顔が美しいことは人気の出る大きなポイントだ。

日常では顔の正面をじっくり見ることは稀なことであるけど、横顔は結構長い時間見ていられるからだ。

互いに気兼ね無く。

つまり横顔は不特定多数に見られることが多い。

魔理沙は意識せずとも恋の種を振り撒いていることになるな、罪作りなことだ。

三年もたてば十六夜咲夜に勝てるかも知れん。

奔放で強がり、皮肉屋、弱いところを見せまいと突っ張っている。

所々尖っているのは輝きでもあり、この穏やかな幻想郷ではそれも魅力のはずだ。

それはともかく、聖を【おばあちゃん】呼ばわりか。

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