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魔法使いナズーリン! 放てマスタースパーク!!(3)

魔理沙が人里の道具屋の娘で、今は勘当されていることは周知のことだ。

私がつかんでいる情報では、両親は仕事でいつも多忙、おばあちゃん子だったようだ。

魔理沙が家を出たのは、この祖母が亡くなってから一ヶ月もしないうちだと聞いた。

このおばあちゃんとやらが、魔法使い霧雨魔理沙の誕生に関わっていると睨んでいる。

聖に亡き祖母を重ねているのか。

確かに聖白蓮は見た目の割に老成した雰囲気がある。

まぁ、実年齢は1130から1140歳くらいのはずだ。

不老となった人妖は、その時の年齢の感性をひきずることが多い。

体が若返れば、気持ちも若返るが、一度完全に老成していれば、どうしても、そのときの感覚が抜けないようだ。

神変を得るタイミングはまちまちだが、完全に老成してから不老となるものは実は稀だ。

あまり年をとってからだと、気力、情念が不足し、神変に耐えられないからだ。

聖は際どいところで間に合った口なのだ。

それに、聖はもともと貴人であり、ろう長けた尼公だから、物腰も落ち着いている。

魔理沙の出自、聖の気質から【おばあちゃん】と呼ばせるまでの経緯は想像できる。

【ねぇ、おばあちゃん】か、からかうネタではないな。

誰にも言うまい、封印だ。

今日の夕餉はいつにも増して賑やかだ。

大きな土鍋に炭火のコンロ、【常夜なべ】の始まりだ。

魔理沙は聖の隣に当たり前のように座っている。

一輪とムラサは面白くなさそうだが、【客分】ということになっているので黙っている。

ムラサの隣はいつの間にかぬえの指定席になっている。

なんだかんだでこの二人は仲が良い。

私はご主人の隣、普段空席の反対隣には、はたて君がいる。

夕刻、寺へやってきたときはハイテンションだったが、魔理沙をみとめてから、あまり機嫌がよろしくない。

以前、大図書館で一悶着あったそうで、仲が良いとは言えないようだ。

豚肉とほうれん草と大根おろし、あっさりしていて結構いけてしまうぞ。

お腹がくちくなってきた頃、

「おまえもブン屋なのか?」

突っかけてきたのは年若い魔女だった。

はたて君は少し厳しい目をして応える。

「(花果子念報)の姫海棠はたてです。ナズーリンデスクの一番弟子です」

「あー、最近ちょいちょい見かける【あれ】かー」

今の【あれ】には、明らかに見下し成分が含まれている。

言い返そう、と力の入ったはたて君の肩に手を置く。

食事の席で争いごとは無粋だが、このコ、私の【お気に】なのだ。

一番弟子とはこそばゆいが、仮にも師匠なら、守ってやらなければならないな。

「はたて君、気にするな。キミの新聞は良識のある大人向けだ。

魔理沙どの、(花果子念報)は、キミにはまだ早い。

もう少しおっきくなったら読んでみようね」

わざと子供をあやすように言った。

ぷっと吹き出すはたて君。

「なんだって!? もう一度『一輪、お茶をいただけますか?』

聖の、大きくはないが、よく通る声が小競り合いの場を終息させた。

魔理沙に向かってほんの少し微笑む。

それだけで喧嘩っ早いトンガリ魔女が引き下がった。

大したもんだ、格の違いってヤツだね。

こちらは元より争う気なんてないから、これで良しとするか。

「は、はい、姐さん、ただいま」

一輪は席を立ってお茶の支度をする。

雲居一輪は聖に心酔している。

盲信していると言っていいかもしれない。

頭巾を取ってそれなりの格好をすれば、なかなかの別嬪だ。

この地に寺を開設した当初は、ピリピリして、来るものすべてにガンを飛ばしまくっていたが、最近は参詣客に愛想笑いをするようになった。

以前は私のことを「ネズミ」と呼んでいたが、復活した聖に窘められ、名前で呼ぶようになった。

私は気にしていないのだがね。

ご主人にはちょっと格上の【仲間】として敬意を表しているようでなによりだ。

聖と命蓮寺を守るのは自分の役目なのだと、【守護者】を自任している。

真面目な娘だ、一緒にいる入道はもっと真面目だが、これはこれでうまくやっている。

ムラサも聖の信奉者だ。

ある意味、一輪よりも想いは強いのかもしれない。

命蓮寺は聖輦船なので、船長として寺の施設管理は自分の仕事だと張り切っている。

通いで来ている妖怪たちに掃除や修繕の差配をして、常に寺を小奇麗にしている。

このことは間違いなく寺の人気に一役買っているよね。

小奇麗で安全、カリスマあふれるツートップの存在、滋味に満ちた朝餉、楽しい縁日等の催し物、そしてなにより美人揃い、おっと、私はオミソだが。

これで人気が出ない方がおかしいさ。

船長は一輪並に真面目だが、茶目っ気はある。

ある日、彼女の部屋の前を通りかかったおり、ただならぬ気配に、覗いてみたら、

「聖輦船からザイダベック号へ! チェンジ!! ザイダーベッーク!!」

勇ましく右手を振り上げて叫んでいた。

こちらの気配に気づいて振り返ったもんだから、目が合ってしまった。

あれは気まずかったな。

半泣きで【お願い、誰にも言わないで】とすがりつかれた。

まぁ、言って面白いネタでもないしね。

ぬえは【かまってちゃん】だ。

たまにイタズラの度が過ぎてムラサにどやされているが、あれもかまってほしいからだ。

正体不明の妖怪、それは他人に注目されてナンボ、ということだ。

時折やってくるちょっと悲しい傘化けと根っこは同じなのだよな。

あの不憫な付喪神も近いうちに聖に抱かれるだろう。

そうなって欲しいな。

小傘、 早くここに来いよ。

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