紅川寅丸とTeam東方不敗の作品やご案内

ナズーリンユウギ(5)

「私は因幡てゐの存在が大きいと思っている」

てゐさん?

「彼女は永琳どのを【お師匠様】、輝夜どのを【姫様】と呼んでいるようだが、
もともと、ウサギたちに智慧を授けてくれるなら、永遠亭に人間が寄りつかないようにする、
そういった交換条件のもと契約を交わした対等の関係と聞いている。

永琳どのがどんな腹積もりで契約内容を受け入れたかは知らんが、その時点では間違いなく対等だね」

にーっ、と笑うナズーリン、この笑い方って、本当に面白いものを見つけたときです。

「現に従者のように振舞いながらも、従ったり従わなかったり、好きにやっているようだ。

また、永琳どのもそのことをとやかく言わないようだ。

いや、言えないのかも。

警戒されるほど強くもなく、さりとて軽んじられほどは弱くもなく。

微妙な立ち位置にいながら、発言力も保持している。

永琳どのは一目置いているはずだ。

興味深い相手だね」

ナズーリン、とても嬉しそうな顔です。

「興味深いといっても、性的な意味じゃないからね? ヤキモチは無用だよ?

私、幼女体型には微塵も興奮しないから」

なっ! そーんなこと、思ってもいませんよー!

真面目な話だったのに、またしてもいろいろブチ壊しです。

次の日、ナズーリンは急な探し物の依頼を受け、人里に行くことになりました。

仕方ありませんが、大丈夫、私一人で行ってきます。

寺の皆が、それぞれに同行を申し出てくれましたが、大丈夫、一人で行けますよ。

何故、皆、そんなに不安そうなんですか?

失礼ですね、傷つきますよ?

ナズーリンだって、これも経験だ、と言ってくれましたし。

ん? 誰です? 【はじめてのおつかい】なんて言うのは。

これまでに何度も一人で買い物やお使いに行っているじゃないですか。

たまたま永遠亭が初めて、ってだけでしょ?

ナズの【印】だってありますし、昨日のてゐさんのところまでならモーマンタイですよ。

あ、一輪、こっそり雲山に見張らせようとしていますね?

そんなことしたら晩ご飯のオカズ減らしますからね! ホントですよ!

てゐさんと自分のおにぎり弁当をこしらえ、気合を入れて出発します。

寺の皆が横一線に並んで見送ってくれたのが何故か腹立たしいです。

姫海棠はたてさんや、小傘ちゃんまで手を振っています。

なんなんでしょう、まったく。

ナズーリンの【印】を頼りに迷いの竹林をぺくぺく歩きます。

昨日の大岩に着きました。

てゐさんが座っています。

ほーら、大丈夫だったでしょ? やりましたよ! ふん! ふーん!

「寅丸さん、こんにちは。 何をそんなに興奮してるの?」

「え、? いえ、なんでもありませんよ、それよりお昼ご飯にしましょうよ!

お弁当もってきましたから!」

興奮して挨拶も忘れちゃいました、はー、私、やっぱりダメですね。

おにぎりが三つ、オカズは、ほうれん草入りキノコ出汁巻き卵、京ニンジンとゴボウの煮物、鶏肉シュウマイです。

オカズが多いのでおにぎりの具は梅干し、刻みタクアン、シジミの佃煮であっさり目です。

さあどうぞ召し上がってくださいな。

「美味しい! 鈴仙のよりずっと美味しい! おコメの炊き具合、にぎり加減、これ美味しい!

オカズもスゴく美味しい!」

パクパク食べるてゐさん、お口にあってなによりです。

「寅丸さんたちは、いつもこんな美味しいご飯食べてるの?」

なんだか照れますね。

「作った甲斐がありました、よかったです」

「え!? 寅丸さんが作ったの!?」

そこ、驚くところなんですか?

「あら? ごめんね。寅丸さんって、てっきりぶきっちょなんだと思ってたから」

あぅ、やっぱりそう見えるんですね。

「えっと、ぶきっちょは間違いありません。

初めておにぎりを作ったときは、力任せに握って、お餅みたいになっちゃって、ホントヒドかったんです。

もう二度と作るまいとも思いました。

それでもナズーリンはニッコリ笑って食べたんです。

【ちょっとしょっぱいかな】って、それだけでした。

私それからも作りました。

何度も何度も」

ナズに美味しいって言ってもらえるように。

ナズに認めてもらえるように。

「そう言えば、ナズリン、どうしたの?」

おにぎり話はあっさりスルーされちゃいました、まぁいいですけど。

「ナズーリンは急な仕事が入ってしまって来られません」

「ふーん」

大して興味もなさそうに三つ目のおにぎりを食べ始めました。

「ん? この梅干し、なんだか不思議な味ね。

うん、美味しい。これはスゴいよ。

これも寅丸さんが作ったの?」

「残念ですが違います。

博麗神社秘伝の梅干しなんですよ。

ナズーリンが博麗霊夢さんから特別に分けてもらったものです」

滅多に口に出来ない梅干ですが、恩着せがましく言うのもなんですし。

でも、違いが分かるとは、てゐさんの味覚はなかなか鋭いんですね。

「あの因業巫女が分けてくれるなんてどんな手を使ったのかしら?

ナズリン、やるじゃない」

ヒドい言いようですね。

霊夢さん、悪いヒトじゃないのに。 多分。

「ナズーリンはちょくちょく神社に参拝にいくんです。

懇意にしていただいているようなので、分けてくれたのだと思います」

「参拝? あの神社に? ナズリンが?」

眉をしかめるてゐさん、考え込んじゃいました。

何度目か首をかしげたとき、私の視線に気づいたようです。

「あ、ごねんねー、ぼけっとしちゃった。

でも、ナズリンってやっぱり面白いんだね」

いえ、呆けているようには見えませんでしたけど。

ナズがやっぱり面白い? 何を考えていたんでしょうか?

「ごちそうさま、とても美味しかったわ。

約束どおり永遠亭に案内するね」

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