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ナズーリンユウギ(8)

私どのくらい泣いていたんでしょうか。

夕闇が迫ってきた頃、ようやくナズーリンに手を引かれ、命蓮寺に向かいました。

永遠亭でのことで泣いたんじゃありません。

ナズーリンの【想い】が熱すぎて、嬉しくて泣いたんです。

私、この世で一番の幸せモノでした。

そして、それに気づかない、この世で一番のマヌケでした。

だって、なにがあってもナズーリンがずーっと一緒にいてくれるんですよ?

これ以上の幸せってあるんでしょうか?

それにあらためて気づいたマヌケですが、もう、いいんです。

私、もう、大丈夫です。

ナズが一緒なんですから。

寺に戻って、聖に顛末を伝えました。

ナズが聖にだけは全部話しておけ、と言いましたし、私もそうすべきだと思いましたし。

永琳さんに侮られるだろうの件について、聖は【そうですか】と言っただけでニコニコしていました。

このヒト、こんなことでは動じないんですね。

はあー、やっぱりスゴいなー。

箱代のことは【必要経費】ですねって言ってくれましたが断りました。これは私の貴重な教訓ですし。

翌日ナズーリンは出掛けていきました。

行き先は言いませんでしたが、きっと、てゐさんのところだと思います。

こんなことがあったとき、ナズは必ずと言っていいほど報復をします。

きっとなにか仕返しをします、そして恨まれるのはいつもナズなんです。

私なんかのために嫌な役をするんです。

私、望んでいないのに。

これまでにも何度も、何度も、やめて欲しいと訴えてきましたが、譲ってくれません。

【ご主人の尊厳、純心を汚したものを私は許すわけにはいかない】

ナズが他人を傷つけ、そしてナズ自身が傷つくのは耐えられないのに。

帰ってきたナズーリンはいつものように無表情でした。

なにがあったのかは話してくれません。

とても気になりますが、私から聞くことではないと思ったので、待つことにしました。

二日目、また行き先を告げず出掛けていきました。

帰ってすぐに【夕食はいらない】と言って部屋に篭っちゃいました。

心配だったので、軽めのお夜食を部屋の入り口に置いておきました。

三日目、二人分のお弁当を頼まれました。

二人分? てゐさんの分?

帰ってきてから【明日、豆大福を持って行きたいんだ】と言われました。

材料はありますからかまいませんが。

四日目、この日も二人分のお弁当、そして豆大福を持っていきました。

そして帰ってきませんでした。

今日、五日目の朝、帰ってきたナズーリンは参拝者向けの朝汁を二杯飲んでから【ちょっとだけ寝るから】と言って自室に下がりました。

昼過ぎに部屋に呼ばれました。

本棚と文机、座布団が二つ。質素なナズーリンの居室。

部屋着に着替えたナズが迎えてくれました。

「呼び立てしてすまないね。まぁ、座っておくれよ」

落ち着いたいつもの雰囲気ですが、なんだか嬉しそうです。

「お察しのとおり、ここ数日、因幡てゐのところへ行っていたよ」

やっぱり。

「少し懲らしめてやろうと思っていたんだがね・・・・・・」

そこまで言って、ちょっとうつむき加減で頭を掻いています。

ナズーリンらしくない歯切れの悪さです、どうしたんでしょう?

「因幡てゐと話したんだよ。 うん、たくさん話したんだ」

この数日のことをぽつぽつと話し始めました。

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私に興味を覚えていたんだそうだ。

ご主人にああいったことをすれば、私が必ず会いに来るだろうと踏んでいたようだ。

『ナズリン、蓬莱の薬ってさー、何種類あると思う?』

初めに【蓬莱の薬】について切り出されたんだ。

ご主人のことで色々言ってやろうと思っていたのに、機先を制されてしまった。

私たちが【蓬莱の薬】の情報を欲しがっていることを見抜かれていたようだ。

はっきりとは言わなかったがね。

カマをかけただけかもしれない。

しかし、私は喰いついてしまった、いきなり、まさかの話題を振られ反応してしまった。

やられたよ。

最近、輝夜どの【姫様】のところに妹紅どのが来ないそうで、少し淋しそうなんだと。

知ってのとおり、今、妹紅どのは慧音どのにべったりだ、いや、べっちょりだ。

慧音どのと生きることを決めてしまったからね。

『あの一途で生真面目で性根の優しい娘が心を許したのなら、その相手と添い遂げたいと思うはずよね?

だったら【蓬莱の薬】をどうにかしたくなるんじゃない?』

そう言って顔を覗き込まれたら何も言い返せなかった。

『ナズリン、アナタが賢くて用心深いのはわかるわ。

そして笑っちゃうほど義理堅いこともね。

私、耳がいいのよ、いろいろ噂が聞こえてくるもん。

紅魔館のこと、寺子屋のこと、鴉天狗のこととかね。

お節介さんだよね。

それで最初にアナタにあったとき、一目見て間違いないって思った。

私に会いたかったんでしょ? この私に。

あの、さびしんぼ娘のために一肌脱ごう、ってんでしょ?

そのために私を利用したいんでしょ?』

そうしよう、と思ったのは間違いないが、ここまで読まれるとは驚いた。

『アナタは【尽くす】ことに生き甲斐を感じる性分なのね。

誰かの役に立つことでようやく自分を信じられる』

どうにも恐れ入った。

こんな序盤で私の要を暴かれるとは思わなかった。

それにしても随分と饒舌だし、妙に突っかかってくるなと思った。

正直に恐れ入った、と伝え、その理由を聞いてみたんだ。

『そう言われればそうね。んー、ナズリンのことを聞いていると、黙っていられなかったのよね。

ウソもイジワルも他人のため。

私、そういうのイライラするんだよね。

それでいいの? 自分はどこにあるの?ってね』

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