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ナズーリンユウギ(10)

てーゐがこの程度のウソに引っかかるとは、驚きだった。

まぁ、なかなかイイオトコだったね、と振ってみたら、

『なかなか、ですって!? アナタおかしいんじゃない!?』

えらい剣幕でね。

そこから語る、語る、とまりゃしない。

『あんなイイオトコいないもん!

優しくて、高貴で、強くて、賢くて、そして超絶イケメン!

笑顔がこれまた爽やかで、でも馬鹿正直で、どこか要領が悪そうで、ほっとけない感じ。

このヒトのために何かしてあげなくっちゃ、って思わせる、天然スーパーカリスマジゴロ

あ、ちょっと下品になっちゃった。今のナシ。

昔、ちょっとイタズラしたら結構ヒドイ目にあっちゃってさ、死ぬかと思った、ホント。

そんとき、あの方が助けてくれたんだよ?

今、どんなお話で伝わっているか知らないけどさ。

ワタシを抱いて真水があるところまでいってくれたんだよ?

ワタシをそっと優しく洗ってくれたんだよ?

ワタシのために蒲の穂を摘んでくれたんだよ?

ワタシが治るまで黙ってそばにいてくれたんだよ?

急ぎのホントに大事な用事があったんだよ?

それなのにワタシのために!

そんなオトコに出会ってしまたんだもの。

私のことなんか覚えていないだろうけど、ただの兎だったしね。

でも、私の理想は大穴牟遅様、大国様だもの、私なんかがどうにかできるとは思わないけど、
ホントに最高にイイオトコなのよ!』

涙を溜め、叫ぶように訴えかけてきた。

大国様に助けられ、大国様に一目惚れ。

最初に【最高】と出会ってしまったんだ。

そしてそれは手に入らないものだった。

てーゐの比較対象は常に大国様なんだ。

これは悲劇かもしれないよ。

確信した、実はとても一途な娘なんだと。

そしてもう一つ、確信には至らないが、気づいたことがあった。

てーゐがイタズラやウソをし続ける理由に。

もしや、アイツは大国様にもう一度会いたいんじゃないかと。

イタズラして、ばれて、ヒドい目にあったら、もう一度大国様が助けに来てくれるんじゃないかと。

出会いの場面を無意識のうちに再現しようとしているのじゃないかと。

これほど賢く慎重なヤツがこんな単純な理由で生きてきたとは思えなかったが、
考えてみれば、理想の相手を求めるって、純粋にして覇気あふれる想いだよね。

そのとき、私、てーゐを大国様に会わせてやろう、って思ったんだ。

筋道立った理由が見当たらないんだが、そうしたいって、強く思ったんだよ。

会ってどうなるかなんて分からないし、かえって悪くなるかもしれない、
いらぬお節介だとも思う。

おかしいよね。

でも、私、そのときはそうしたいって強く思ったんだ。

お館様【多門様】に頼んだんだ、大国様のお出ましを。

七福つながりで結構交流があるからね。

これでもそれなりに功績をあげているから、多少の無理は利いていただけるのさ。

二日目、その旨を手紙に書いたんだよ。

こちらの声は届きにくいが、お館様にとって【見る】事は容易だ、
この程度の結界ならばね。

返事は、とある星の瞬く間隔を調整することで知らされた。

まぁ、暗号のようなものだよ。

早かった。

翌々日の夜、一刻(二時間)だけだが、竹林にお越しいただけることになった。

昨夜のことだ、月が昇りきった頃から一刻だけご来臨いただいた。

豆大福? 博麗大結界の管理者、霊夢どのへの貢ぎ物だよ。

お目こぼしいただくためのね。

賄賂みたいなものだ。

ちょっと結界をくすぐるのを見て見ぬ振りしてもらうのさ。

【今夜、結界の一部が揺らぐやも知れませんが心配は無用です。

ほんの一刻ほどですみますから】

いくら神様がなさることといっても、事前に知っているのと、そうでないとでは、
後々の心証が違うからね。

大国様とてーゐの再会。

流石に盗み見をすることはしなかったよ。

しばらくして様子を見に行ったら、てーゐは潤んだ目で月を見上げていた。

『覚えていてくれたの、私のこと。

姿かたちが違うのに、私だってすぐ分かってくれたの。

抱っこしてくれたの、私の話をきいてくれたの。

相変わらず、ううん、前よりイイオトコだったー』

なんとも穏やかな顔だった。

『ナズリン、ありがと』

だってさ。

『私、もう少し長生きして、いろいろ頑張ってみる。

大穴牟遅様は艶福家だし、奥さんたくさんいるし、頑張れば、愛人くらいにはなれるかもね』

逞しいものだ。

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