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ナズーリンユウギ(11)

ナズーリン、大仕事でしたね。

お節介? いいえ、やっぱり貴方は素敵なナズーリンです。

私はそう思いますよ。

「ご主人、実はてーゐに言われたことがあるんだ」

そう言えば、なんで【てーゐ】って言うんです?

「ああ、それか。

私、【てゐ】って言いにくいんだよ。

普通に呼んだら【てゐっ】って強く呼びつけているようだろ?

てゐどの、てゐさんは嫌がるし。

それに、アイツも私のこと、言いにくいからって【ナズリン】と呼ぶし、いつのまにかこうなったね」

あらまあ、随分仲良しになったんですねー。

「あ、ごめんなさい。てゐさんになんて言われたんでしたっけ?」

「ナズリン、私、アナタの友達になってあげる、いえ、友達になって、って」

これはビックリ。

「ご主人、私、どうしよう。

うん、まぁ、てーゐと話をしていると、ドキドキするんだ。

ご主人とは違った興奮だ。

こんなことって久しくなかった。

性的興奮は全く覚えないが、気を抜けない緊張感と、脳がチリチリするほど刺激されるやりとり。

それなのに不思議な心地よさがあるんだ。変な気持ちだ」

難しい顔をしてうつむくナズーリン。

「ナズ? それって、貴方も友達になりたいってことですよね?」

「でも、友達ができたら、ご主人と一緒にいる時間が減るかもしれないよ?」

私、ヤキモチ焼きなんですけど、これ、違いますね。

ナズを独り占めにしたいですが、お友達を持ったナズはもっともっと素敵になるような気がするんです。

これは賭ですけど、きっとかなり分が良い賭です。

「それでもとてもいいことだと思いますよ」

「ホント? 実は私、アイツと友達になりたいんだ」

ぱぁっと笑うナズ。

「あの、でも最後はいつでも私と一緒にいて欲しいんです。

【ラストダンスは私に】なんです」

「ロマンチックだね。 私は越路吹雪の歌唱がいいね」

「明け方、てーゐの隠れ家で渡されたのがこれなんだ」

差し出されたのは大き目のシジミ貝。

ナズーリンが開くと、鮮やかな紅が詰まっていました。

「蜜蝋とひまし油、紅花、そしていくつかの鉱物を混ぜた手作りの口紅だよ」

何でこんなものを?

「てーゐの内職だそうだ。

アイツ、実は化粧に詳しいんだ。

初めは自分のためだったようだが、試行錯誤するには量が要るということで、作りすぎたものを人里に卸していたらしい。

本人は【イメージに合わない】と言って使わなくなったようだが。

まぁ、幼女に口紅はいただけないからね。

おかしなものは含まれていないよ、安心して使うといい」

そう言って手鏡も渡してくれました。

紅は端が少しだけへずれていました。

調べてくれたんですね、慎重なナズらしいです。

紅差し指は薬指でしたね。

ナズの手鏡を見ながらちょっとずつ塗ってみます。

塗りすぎは下品になりますから、注意して。

やや深めの緋色です。

グロスが結構ありますね。

あーこの唇、いいですね。

自分の唇を言うのも変ですが。

なんだか唇だけ美人になったみたいです。

唇だけ緊張しちゃいます。

ナズ? どうですか?

ナズ? どうしたんですか?

「あ、あ、あーーーー! 十分イメージしたはずなのに、気の利いたことを言うつもりだったのに、
嬉しすぎてどうしていいのか分からないよ!!

綺麗だ、可憐だ、美しい、いや妖艶だ、ああー!! 違う! こんな陳腐な言葉じゃない!

うっあーー!! 壊れそうだー! くそーっ! アイツの思うとおりなのかーー!」

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アナタのご主人って、とても美人よ。分かってるの?

ああ、もちろん分かっている。

どうかしら? せっかくのヒト型、その中でもかなりのものよ。

暖色系美人って言おうかしら?

暖色系? 聞いたことないな?

あったかで、穏やか。やさしくて、やわらかい美人さん、ってこと。

それなら合点がいくな。

あのヒト、ぽわぽわしているから、自分のこと絶対分かってない、気にしなさすぎ。

それがご主人の良いところだ。

美人はね、自分は美しいんだと意識したときから美人度が上がっていくのよ、踏み外すヒト、多いけど。

そうかも知れんね、いや、そうだね。

もっと綺麗になるのに。アナタ、好きなら、もっと綺麗にしてあげればいいのに。

しかし、着飾ったり、化粧したりすることは嫌がるんだよ。

いきなり何もかもじゃなくていいのよ。

紅をひくだけでもうんと変わるわよ。アナタ、腰が抜けちゃうよ?

まさか、そこまでではないだろう?

ふふん、ナズリン、まだまだだねー。

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自分を捨て、歯をくいしばって生きてきた鼠は、ようやく探し当てた。

理想を求め、孤高を保って生きてきた兎は、幸せの種子を見つけた。

お互い、生まれて初めて友を得た。

自分の能力に因るものなのか、偶然なのか。

理由なんかどうでもいい。

生涯の友を得た、この奇跡に心ふるわせるだけ。

酒を酌み交わそうか。

知恵比べをしようか。

それとも幻想郷をかき回そうか。

ナズリン、

てーゐ、

これから二人、たくさん、たくさん、遊ぼうよ。

でも、私はご主人が最優先、それでも良いならたまには付き合ってやろう。

ふん、私だって大国様が一番、それでも良いならたまには遊んであげるわ。

ふ、ふぁははははー

きゃははははははー

強く賢い突っ張り娘たち、でも本当はちょっと寂しがりだった。

永く生きてきた二人の少女は、生まれて初めて心の底から笑った。

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ナズーリンの友人、友誼の話を書いてみました。
ナズーリンとてゐ、腹黒幼女キャラと言われる二人ですが、それぞれ信念を持って長く生きてきたんだと思います。友達がいなかった、と言うより、作らなかったんじゃないかなと。そんな二人が打ち解けあって、友誼を持てたら、素敵で愉快なコンビになりそうじゃないか?と思い至り、話を組み立ててみました。

梅干しの件、創想話でお世話になっている【お三方】から少し頂戴しちゃいました。

この場を借りてお礼申し上げます。

お読みくださり感謝でございます。
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紅川寅丸

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