紅川寅丸とTeam東方不敗の作品やご案内

ナズーリン「私はバカじゃないと思うんだが」(4)

夕食をかねた小宴。

聖はいつもと変わらない。

しかし、一輪、ムラサ、ぬえ、そして、たまたま来ていた多々良小傘は緊張を隠せない。

魑魅魍魎の頂点部位にいる【鬼】。

圧倒的な怪力を誇るその種族の中で更に【力】の名を冠されている四天王の星熊勇儀がいるのだ。

なにかの拍子で暴れ出したら誰が止められるのか。

しかし、当の四天王の一角は、いたって穏やかで明るい。

料理に舌鼓を打ちながらのんびり酒を飲んでいる。

パルスィを、ナズーリンを、寅丸を肴に話題を振り、寺の皆、一人ひとりに陽気に話しかける。

聖にだけは【聖どの】と呼びかけ、話題の振り方にも気配りが感じられる。

無敵に近い鬼が、自分たちの主を別格と扱っていることに一輪、ムラサは気を良くした。

場の雰囲気が和らいでいき、勇儀を中心に宴席は緩やかに盛り上がる。

これもカリスマの一種か。

桁外れの大きな力と、ヒトを惹きつける存在感、包容力、細かいことに頓着しない雰囲気、何となく毘沙門天の代理に重なることが多い。

封獣ぬえがボソッとつぶやく。

「自分に自信がついた代わりに品性がほとんど無くなっちゃった寅丸みたい」

(あ、そうかー、なーるほど)

その場にいた全員の心の声。

「実はパルスィが病気のようでな。

あ、いや、そんな深刻なモンじゃないんだが」

宴席がひけて勇儀とナズーリンは裏庭に面した縁側でくつろいでいる。

風呂の順番待ちだ。

客人が優先と言った聖に対し、【ワタシらは長風呂なんだ、先に使ってくれると気兼ねがない】

そう言って盃をあおった。

聖もそれ以上は言及せず、【そういうことでしたらごゆっくり】と風呂に行ってしまった。

縁側に繋がる部屋では寅丸とパルスィがお茶を飲みながら話をしているが、声はほとんど聞こえない。

こちらの声も聞こえていないのだろう。

ナズーリンは朧月を見上げ、猪口を舐めながら勇儀の話を聞いている。

「地上には妖怪も診てくれる腕の良い医者がいるらしいからな」

「永遠亭の八意永琳先生のことだね」

「どこが悪いというわけではないんだが、生命力というか、活力が細くなっているようなんだ。

寝込むことも多いし、以前のこぼれるような愛らしさにかげりが見える」

「変わったようには見えないけどね」

「私にしかわからないよ。

よがるときの声にハリがなくなってきている。

『あっひぃ〜』が『あひ〜』になっている。

これはおかしい。なにかおかしい。どこかおかしい」

「キミの頭がか?」

「まじめに言っているんだぞ?」

「ホントかね?」

「ホントだとも」

いつも余裕しゃくしゃく、冗談混じりの受け答えが身上の大鬼が珍しく真顔だった。

この陽気な好漢が本気で憂えるのは掌中の翠緑玉のこと以外にはない。

それくらいは理解しているナズーリン。

今回の地上遊山の目的はそれか。

「わかった、明日、案内しよう」

「頼む」

部屋の奥では寅丸とパルスィ、月も謝罪して消えるだろう二人が楽しそうに懇談している。

見ている側も心穏やかになる。

「麗しい絵画のようだね、うん、綺麗だ」

「ああ、最高の肴だ」

乾杯する守護者二人。

しかし、本当に守られているのは果たしてどちらなのか。

「勇儀どの、パルスィどの、お二人は客間で寝てもらうことになるが、キミら自重できるかな?

ここは寺だからね。

ものスゴいことは控えて欲しいのだが」

そろそろ就寝の時間。

ナズーリンが客人の寝場所を決めようとしている。

「私がパルスィの口をずっと塞いでいれば済むことだろう?

迷惑はかけないつもりだが?」

「……キミは」

ナズーリンがド変態鬼に山ほど文句を言おうとした矢先。

「今夜はパルスィさんと寝たいです」

「私も星さんと一緒がいいの」

寅丸とパルスィがほとんど同時に提案した。

つもる話がまだまだたくさんあるのだろう。

それを聞いた勇儀は少しだけ寂しそうな顔したが、情人のたまの我侭を受け入れたようだった。

「そんじゃ、私はオマエと寝るのか?」

ナズーリンを指さす勇儀。

「うーん、なにもしないと約束するならかまわないがね」

「それはこっちの台詞だろう?」

「しかし、乳枕はしてもらおうか、勇儀どの。

もちろん私はうつ伏せだ、そして先端も少しいただくがよろしいな?」

「ナズーリン!!」

寅丸の怒号。

「ははは! オマエは節操がないなー。

寅丸も苦労するよなー。

だが、ナズーリン、寝ぼけて私の指がどこぞに潜り込んでも知らんぞ?」

「一本だけなら。 二本以上はご主人の許可が要るよ?」

「うっかーー!! ナッ! ズウゥーリィーーン!!」

「ゆううううぎいいいい!!!」

つかみかかろうとしたパルスィの手を取り、きゅっと抱きしめる勇儀。

「おお! 久しぶりに威勢の良いパルスィを見たねー。

元気なパルスィは良いなー。はははは」

「バカ! バカ鬼! 最低!」

抱きすくめられ、むぐむぐ罵るパルスィの頭と背中を優しくなでる。

徐々に【バカ バカ】の声が小さくなる。

「ほう、なかなかカッコ良いな。

そうか、これだな、わかったぞ」

得心のいったナズーリンが両手を広げ寅丸に向く。

さぁおいで。

あれっ?

ナズーリンの相方は、立ちすくんでいる。

歯を食いしばり涙ぐんでいる。

やべっ! ガチ泣き寸前だ。

慌てるナズーリン。

「ご主人! 冗談! じょーだんだよ! 変態鬼にあわせただけだ!

そんなことするわけないじゃないか!」

「アナタはいつもそう、私の気も知らないで浮ついたことばかり言って振り回すんです」

「ち、ちがうんだよ! そういうつもりじゃないんだよ!

信じておくれよ! ねえ! ごしゅじーん!!」

跪いて寅丸の腰にしがみつき、必死に許しを請う。

(くっそー! なんでこうなるの!?  私、スゴいカッコ悪いよ?

なんだか締まらん! 何故うまくいかない!? 納得いかなーい!!)

結局勇儀は一人客間で寝ることになった。

ナズーリンも自室でおとなしく寝た。

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