紅川寅丸とTeam東方不敗の作品やご案内

ナズーリン「私はバカじゃないと思うんだが」(5)

翌朝、永遠亭に向かう四人組。

薄暗い曇り空、午後には一雨きそうだった。

夕べの朧月を見ていたナズーリンは一行の出発を早めた。

寅丸は朝課に出られない旨を聖に伝えたが、住職は何も聞かずに許可してくれた。

勇儀とパルスィは手をつないでいる。

地底では人目をはばかり、往来で手をつなぐことはなかった。

だが、地上では気兼ねする必要がない。

パルスィはとろけそうな笑顔で情人を見上げている。

本当に嬉しそうで、楽しそう。勇儀の懸念は取り越し苦労に見える。

「昨日の牛蒡の揚げ物は旨かったなー、気に入ったよ。

パルスィ、寅丸に作り方を教わっておいておくれよ」

「勇儀さん、おかわりの分を揚げたのは彼女なんですよ? もう完璧です」

ナズーリンと一緒に先導していた寅丸が振り返って言う。

「そうだったのか。さすがパルスィだ」

そう言いながらツレの髪を柔らかくかき回す勇儀。

照れくさそうに微笑んだ橋姫が囁く。

「帰ったらたくさん作ってあげるから」

迷いの竹林に入ったあたりで先行していたナズーリンが止まった。

「私がこのまま案内してもいいんだが、ここに赴いて声をかけないと後で拗ねるからね。

案内人を呼ぶとしよう」

息を大きく吸い込むナズーリン。

「おーい! てーゐ! いるかー! てーゐ!!」

小さな体からは想像できないほどの大音声。

十を数えるくらい待ったがどこからも返事はない。

「うーむ、聞こえているとは思うが、近くにいないのかなぁ」

ならば、と小さな鞭を取り出すナズーリン。

ピシッ、ピシッ、ピシッ、とリズム良く打ち鳴らす。

「マーチ○ッ! マーチー○ッ!! 出てこおおおおお〜〜〜〜いッ!!」

程なく竹林からひょいと姿を現したのは垂れ下がったウサギ耳の少女。

「聞こえているわよ!

誰がマー○ンなのよ! 誰が戦闘用マンドリルなのよ! バオーと闘わせたいの!?」

因幡てゐがムスッとしながら登場した。

「お、来たね。もったい付けてないで早く出て来いよ、お客さんだぞ」

腕組みをし、一行をねめつけているてゐ。

「コイツは迷いの竹林の主、極道ウサギの因幡てゐだ。

こちらは地底からの客人、星熊勇儀どのと奥方の水橋パルスィどのだ」

奥方と紹介され、ビックリしているパルスィ。

「まぁ、てーゐは口は軽いし、ウソつきだが、こう見えても実はまったく信用できないヤツなんだ」

「ナズリン? 今のおかしいよ? どっこも誉めてないじゃん!」

お互い本名が呼びにくいからと、ナズリン、てーゐと呼び合うようになったのはつい最近。

やっと見つけた友達、腹黒幼女風味のこの二人はなんだかんだでエラくウマがあった。

「寅丸さん、それお土産?」

目ざといてゐは、星が担いでいる荷物を指差した。

「あ、そうなんですよ。桜餅を作ってきましたから、永遠亭の皆さんで召し上がってください」

担いでいた荷を下ろし、菓子折りを取り出す寅丸。

普通、荷物は従者であるナズーリンが持つものだが、寅丸は譲らない。

『何かあったとき、ナズーリンの手が空いているほうが良いんです。

それに私、とても力持ちですし』

過去の宴席で【力】の勇儀と力比べをした折【能力抜きなら互角】と評された武神の代理人である。

宣なるかな。

「八つ入りかしら?」

菓子折りを見て問いかけるてゐ。

永遠亭は作業ウサギを除けば実質四人だから二つずつでちょうど良いはず。

ちょっと考えているてゐにナズーリンが突っ込む。

「てーゐ、キミは四つだけ持っていって、半分をガメるつもりだな?」

「ふん、甘いねナズリン、一個ずつしかない方がよっぽど不自然でしょ?

だったら全部私がいただくわ」

「ご主人! ダメだ! コイツには渡すな!」

「てゐさん、貴方にはこの栗ヨウカンです。

ですから桜餅は皆さんで。 ね?」

にっこりして小さな包みを渡す寅丸。

「ほーら、寅丸さんはちゃーんとわかってるんだよ。

そういうことなら話は別よね。

物分りのよいご主人様だよねー。

アナタにはホントもったいない」

「ご主人! コイツを甘やかしてはいけない!

優しくしたって、図に乗るだけの忘恩の輩だぞ!」

「ふーん、甘くしていいのは【ワタシだけ】って?

相変わらず自分のご主人様の本当の器量がわかってないのねー。

ぬるいことやってたら、アナタ、置いていかれちゃうよ?」

「う、うぐぐっ」

「ほっほー、オマエが言い負かされるのを初めて見たぞ、面白いなー」

目を丸くし、兎と鼠を見やる大鬼。

「まー、ナズリンは寅丸さんが絡むときだけはズルズルに脆くておバカになるからね」

「違いない。

ナズーリンは少しバカだからなー。

良いヤツなんだが、そこだけは残念でならんよ。

好きなモノを大事にするにも程度があるってことを知らんのだ」

自分のことは棚に上げっぱなしの勇儀。

「おいっ! キミらは好き放題言ってくれているな! 上等じゃないか!」

寄って集って【バカ】扱いされ暴れ出しそうなナズーリンを後ろからしっかり抱き止めている寅丸。

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