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ナズーリン「私はバカじゃないと思うんだが」(7)

パルスィの様子を見に行きたいと言った鬼に許可を与えた医師。

立ち上がった勇儀がふらついた。

慌てて支える寅丸。

そのまま二人で別室の扉をくぐって行った。

永琳と二人残ったナズーリン。

「アナタがナズリンね」

「いや、ナズーリンなんだが」

「てゐと仲良くしてくれているのね」

患者には必要以上に感情移入しないのだろうが、切り替えの早さに呆れるナズーリン。

「週に一回、夕方から酒飲んでバカ話をするだけなんだがね」

「お酒と肴、持ち寄りなんでしょ? あのコ、肴は自分で用意しているのよ。

普段は料理なんてほとんどしないのに」

ナズーリンは驚いた。

【余り物だけど】【もらいものだけど】【鈴仙が作ったものだけど】

持ってきた漬け物や煮物、干物をいい加減に広げながらそう言っていたのに。

ナズーリンは自分で作ってはいない。

寅丸に作ってもらった肴を持っていっている。

どうせなら美味い方が良いに決まっているから。

てっきりてゐもそうだと思っていたのに。

「あら? 知らなかったの? てゐは言っていないのね?

うーん、じゃあ失敗ね。私が話したってことは内緒にしてね? 怒られちゃうわ」

気の利いた返しが思いつかないナズーリン。

「先週のハヤの甘露煮美味しかったでしょ?

何度も作っては失敗した甘露煮をウドンゲに食べさせていたのよ。

だからあのコ、甘露煮が嫌いになっちゃったみたい」

そう言えばあの甘露煮は確かに美味かった。

「せっせと作っていたわ。アナタと会うのがよほど楽しみなのね。

あんな姿、これまで見たことなかった。

アナタのこと、とても大事にしているのね。正直、羨ましいわ」

普段のてゐからは想像も出来ない話だった。

弱みを握ったようにも思える。

だが、なんだか胸が締め付けられたナズーリン。

彼女がこのネタで、てゐをからかうことはないだろう。

「どんな話をしているのかしら? とても興味深いわね」

「ウサギとネズミの小妖がくだらん話をしているだけだよ。

月の賢者様が気にかけるようなものではないよ」

ほんの少し肩をすくめるネズミ妖を見て、くすっと笑う天才頭脳。

「あら、意地悪な言いかたね。

噂に高い賢将ナズーリンと【あの】てゐ、この二人が夜通し交わす楽しげな論陣。

少しでも自分の見識に自信があるモノなら興味を持って当然でしょ? 知りたいわ」

「買い被りすぎだね」

片眉を上げて答えるナズーリン。

「可愛いのに可愛くないのね」

かつてナズーリンが推測したとおり、永琳はてゐに一目おいている。

調子は合わせるが、決して心を開こうとしない偏屈ウサギに永いこと手を焼いていた。

そこへ初めての【友人】ナズーリンの登場、天才の好奇心に火がついたらしい。

「今のあのコ、とても楽しそうなのよ。

アナタもココに遊びにおいでなさいな。

私も【主人】とのつきあい方、教育、しつけ、たくさん話したいわ。

似た立場のヒトに初めて会ったのだもの。

いいでしょ? ね?」

そう言って首をかしげて笑った。

何歳だか分からないが、ちょっと可愛いなと思ってしまったナズーリンだった。

しかし、八意永琳と個人的な繋がりを持てたことは収穫だが、今の優先事項は別にある。

気を取り直す。

「パルスィどの、あとどのくらいもつのかな?」

それを聞いた永琳は表情を引き締める。

「薄い嫉妬に何とか縋っている状態よ。

それが無くならなければ数年は大丈夫でしょうね」

嫉妬狂いの妖怪に戻すだと? 冗談じゃない、冗談じゃない!

帰り道で何度もパルスィを抱きしめる星熊勇儀。

とまどいながらも嬉しそうなパルスィ。

「勇儀? どうしたの? なんだか変よ?」

「パルスィ、私はお前が好きだ。お前だけが好きなんだ。それなのに……」

「ホントどうしたのよ? 私も勇儀が大好きなんだから大丈夫よ?」

勇儀は顔を天に向けている。

鬼の目は潤み、歯は強く噛み合わされているが、その表情はパルスィには見えなかった。

寺に戻った一行、パルスィが【少し疲れちゃった】と客間の布団に潜り込んだ。

勇儀の匂いがすると言って、くすくす笑ったあとは静かな寝息。

それを見届けた勇儀はそのまま枕元に座り、想い人を見守った。

寅丸とナズーリンはかける言葉も無く、それぞれの仕事に戻るしかなかった。

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