紅川寅丸とTeam東方不敗の作品やご案内

ナズーリン「私はバカじゃないと思うんだが」(11)

守矢神社に到着した一行を東風谷早苗が出迎える。

「早苗、諏訪子は戻ってきている?」

頷く早苗にいくつか指示を出す。

それを聞いた風祝は小走りで社殿に入っていった。

神奈子が客人たちに向き直る。

「さあ、皆、本殿に上がっておくれ」

道中、ナズーリンは神奈子に今回の訪問の目的を説明し終えている。

本殿の床には布団が一組敷かれており、洩矢諏訪子が待っていた。

神奈子の指示でパルスィを布団に寝かせる勇儀。

二柱はパルスィの両脇に座り、半眼でじっと見下ろしている。

正体は不明だが、ナズーリンには【探査】系の力が橋姫を覆っているのが分かる。

ややあって神々は目を合わせ、頷きあう。

「鬼の大将」

神奈子の問いかけに鬼が答える。

「星熊勇儀だ」

「では星熊。

この娘の容態は、先に診た医者の申す通りだ。力の源が消えかかっておる」

「だからアンタたちの力で新しい力を宿らせて欲しい!」

「ふむ」

相方の土着神の頂点を見やる。

諏訪子は腕組みしたまま少しだけ首を傾げる。

その仕種を見た勇儀は慌てる。

「おい! 出来ないって言うのかい!?

地獄鴉に【八咫烏】の力を与えたのはアンタたちだろ!?」

「星熊、落ち着け。

確かにあの時、私たちは故あって鴉に力を付与した。

だが、今回は状況が全く異なる。まずは聞け!」

鬼の四天王を制する山の神。

「この娘、パルスィ、だったか? 純粋な心の持ち主だ。

あの鴉もある意味、純粋だったがな。

新たな力を受け入れるには、その純粋な精神が必要となる。

そうでないと二つの心が反駁しあい、壊れてしまうからね。

疑いを持たず、一途に信じる心、だからあの鴉はやりやすかったのさ。

しかし、このパルスィ、純粋だが、複雑で繊細、その感情を幾度も洗い直し、繕い、今に至っている。

同じ【純粋】でもこの娘の心は、悲しく、脆く、そして美しすぎる」

一旦、言葉を切った八坂神奈子。

立ち上がった諏訪子が後を引き継ぐ。

「【力】を与えたなら、その【悲しく、脆く、そして美しすぎる】心が塗りつぶされるかも知れないんだ!

力の付加ってのは強引なんだ! 乱暴なんだ! ワタシが言うんだから間違いない!

失われるよ!? ホントに大事なモノがいくつもいくつも!

その細やかな配慮、いつの間にか薄布をかけるような控えめな心遣い。

我侭を許さないように振舞いながら、実は全て理解して許す不可視の慈愛。

常にオマエを最上の状態に保とうと心を砕き、それを自分の幸せと転化させる献妻の心根。

……それが全て失われるかも知れないんだ! 別人になるかも知れない!

オマエっ!! それでもいいのか!?」

洩矢諏訪子は叫んでいた。

二柱は、パルスィを【診た】とき、その心の深遠にも触れてしまっていた。

そして神の身でありながら、この薄幸の献妻に同情してしまっていた。

何とかしてやりたかった。

だが、八百万の神とて全能ではない。

儚く美しい心を壊すかも知れないとわかっていて、無茶は出来ない、したくない。

お互い眼でかわした結論は【このまま逝かせてやろう】だった。

【ドサッ】その場に崩れ落ちた星熊勇儀。

『パルスィ! パルスィー! パルスィーーー!!!』

鬼が哭いた。

数多の人妖を恐れさせ、泣かせてきた鬼が哭いた。

最も強く最も恐ろしいと謳われた無敵の鬼が、小さな翠緑玉を失うのを恐れて体を丸めて哭いていた。

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