紅川寅丸とTeam東方不敗の作品やご案内

ナズーリン「私はバカじゃないと思うんだが」(12)

翌日、弁当用の竹の皮を命蓮寺に届けにきた因幡てゐ。

それは口実で、興味本位でその後の様子を見に来たのだ。

「こんちはー、寅丸さーん、竹の皮ですよー」

少しして寅丸星が出てきた。

「こんにちは、てゐさん、いつもありがとうございます」

暖色系の笑顔に翳りを見て取ったウサギ。

「寅丸さん? どうしたの? 元気ないじゃん。

なんかあったんでしょ?」

「えーと、詳しいことはナズーリンに聞いてください。

貴方が来たら通すように言われていますから。

縁側に居るはずです、裏庭を通って行ってくださいね」

「あれ? ワタシが来るの読まれていたのか。

まあいいや、おじゃましまーす」

裏庭伝いに歩いたてゐは縁側を覗いてみる。

ナズーリンがぼんやりと座っていた。

「はーい、ナズリン」

「てーゐ、遅いじゃないか」

「は? 約束なんかしてないよ?」

「面倒ごとがあるんだ。こんな時は察してすぐに来いよ」

「アナタ、自分がどんなに横暴か分かってる?」

「ああ、多少はね。

だが、キミにしか言わないんだから構わんだろ?」

「それって、ワタシに甘えているってことでいいのかしら?」

「……ああ、そう言うことでいいよ」

「なに、その投げやりな言い方」

「いちいち文句を言うなよ、本題に入るから座れよ」

いつも裸足のてゐは部屋まで上がることは少ない。

大体は縁側で並んで話す。

隣に腰を下ろしナズーリンの様子を見る。

(あらー、随分と疲れているわ、よっぽど面倒なことなのね。

お節介ナズリン、お疲れさん)

昨夜、散々泣いて濡れたズダ袋状態だった星熊勇儀をナズーリンは怒鳴りつけた。

「星熊勇儀! 立て! どうした!? もうあきらめたのか!? 私はまだあきらめていないぞ!

それとも、キミのパルスィどのへの愛はタネ切れなのか!? これで何もかもお終いなのか!?

立てよ! バカ鬼! 立たないならパルスィどのは私がいただくぞ! このヘタレ鬼!!」

「……な、なんだとぉ?」

「キミがいらないと言うなら私が囲ってやる! キミよりたくさん可愛がってやるさ!

テクニックは私の方が上だ、キミ以上によがらせてやる! だから安心して腐っていろ!」

「ナ、ナズーリン、オマエ、自分がなにを言ってるか分かっているのか?」

「はっ! 悔しかったら立ち上がって私を打ちのめしてみせろ!

今のキミには負ける気がしないがな! さあ来い! へっぽこ鬼! その角はお飾りか!」

ゆらりと立ち上がった最強の鬼。

姫海棠はたてがナズーリンをかばう。

「デ、デスクー、洒落になってませんよー! 逃げてください! 本気でマズいですー!!」

自分をかばっているはたての前にスルリと体を移動させ、怒りに燃える鬼を睨みつける賢将。

勇儀は振り上げようとした拳を止める。

そして大きな大きなため息。

「……すまん」

張り詰めていた空気が緩む。

「勇儀どの、あきらめていないと言ったのは本当だ。

だが、キミが気力を失ってしまってはどうにも出来ないのだ。

キミは最後まで立っていてくれないと」

「ああ、本当にすまない。

私を立ち上がらせてくれたオマエの命懸けの誠意にいつの日か応えたい。

鬼の約定だ。

必ず果たすからな」

守矢神社を辞した。

二柱は揃って頭を下げていた。

「気休め程度にしかならんが、パルスィには私たちの【気】を少しだけ入れた。

差し障りのない程少しだから、長くは持たんがね。

力になれず、申し訳ない。」

勇儀も二柱に礼を述べた。

幸いパルスィの容態に変化はなかった。

命蓮寺に連れ帰り、朝を迎えた。

そして今、ナズーリンがてゐに経緯を話し終わったところだった。

「てーゐ、キミはどう思う?」

ナズーリンは唯一【友人】と認める詐欺ウサギの洞察力に一目置いている。

広範な一般知識には疎いが、人妖の心の機微に関することであれば自分より深い考察をする。

勇儀には【あきらめていない】と言い放ったが、実のところ、妙案があるわけではなかった。

あの後も散々考えていた。

てゐとのやり取りの中で、何かヒントを掴めればと思っていたのだ。

「力を失って消えていく妖怪、珍しいことじゃないわねー。

どうにかしてあげたいの?」

あっさり言った妖怪ウサギ。

「ナズリンお節介しすぎだよ。

これからも知り合いは全部助けるつもりなの?

アナタ何様なの?」

もの凄く痛いところをズバッと突いてくる。

でも、こんなことを言う、いや、言ってくれるモノはこれまで居なかった。

賢将と呼ばれながら、努力して何とか立ち回ってきたこれまでの自分。

それなのに、抜け落ちていたところを、見過ごしていたところを遠慮なく突きつけてくる存在が現れた。

因幡てゐ。

初めは頭に来た、いらだった、不愉快だった。

自分と同等以上の思考力で追い詰められる。

それを苦労して切り抜ける、次は逆転する、追いかける。

相手の論理の罠を見破り、引っかかったフリをしてこちらの罠に誘い込む。

なんと気持ちの良いことか。

一生の宿敵、友人をやっと見つけた。

こいつとは死ぬまでやりあってやろう。

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