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ナズーリン「私はバカじゃないと思うんだが」(13)

何様と言われ、返す言葉が見つからないナズーリンに、てゐは真後ろから追撃した。

「でもさぁ、ここで知らん顔するナズリンは私、キライだねー。

よけいな苦労を背負い込み、悩んでかけずり回るお人好しナズリン、そうでなくっちゃ。

困って考え込んでいるアナタを眺めるのは楽しくてゾクゾクするからねー」

「……キミはホンッ! と、に性格が悪いな!」

「あれー? アナタへの好意を精一杯表したんだけどなー? 分かんないの?」

「全く分からんよ!」

「でも、願いがかなって消えていっちゃう妖怪はホント珍しくないよ?」

幸せになって消滅してしまった妖怪、ナズーリンもこれまでに何度も見てきている。

その都度、多かれ少なかれ別れの一幕があった。

今回の幕は特別過ぎる。

ナズーリン自身もそうだが、パルスィを失った寅丸星がどれほど落ち込むか。

寅丸も幾多の悲しい別れを経験してきている。

だが、彼女にとってパルスィはナズーリンや聖たちとも違う特別な存在だった。

生まれて初めて芽生えた激しい恋情、それを理解し応援してくれた唯一人の【戦友】だから。

どちらが大事、などと単純に比べることのできない特別な存在だった。

元気のない寅丸。

それはナズーリンが今までで最も恐れてきたモノだ。

なんとかしたい。頭の中身をしぼりまくる小さな賢将。

幸せ(願いがかなう)になったら消えてしまう、ならば、幸せではない(願いがかなっていない)状態に戻せば消えない。

(勇儀どの、旧地獄に戻ったら女遊びにうつつを抜かしたまえ、男でも構わんが。

パルスィどのが文句を言ってきてもヘラヘラかわすんだ。すぐバレるうそを吐くんだ。

たまに気紛れを装っていい加減に可愛がり、大いに妬まれることだ。

これで万事解決!)

……ダメだ、解決はするが、こんなのダメだ……

どうにもまとまらないナズーリンは隣に座るてゐを見る。

足をブラブラさせてぼんやり空を見上げている。

「てーゐ、キミは何で妖怪になったんだ?」

「私は死にたくなかっただけ。

健康に気をつかっていたら結構長生きしちゃってて、いつのまにかこうなっていたわねー」

「キミらしいな。……いや、聖も根幹は一緒か。

死にたくないって言うのは強い思いだよな」

「妖怪にしろなんにしろ、それまでの体から変わるのは強い思いがあればこそじゃない?

もちろん、思っただけで変われるわけじゃないし、望んでなくてもなっちゃうときはなっちゃうし。

それに私だって【妖怪ウサギになりたーい】なんて思ってなかったよ?」

「まぁ、そうだろうね。

【妖怪】になりたいと思うモノは少ないだろうね。

強い思いありき、か。

んー、じゃあ、その思いがかなったキミはなぜ消えないのか?」

「なによ、消えて欲しいの?

【もっと長生きしたい】って思っているからじゃん」

「それは願いの内容が変化したってことかい?」

「新しい願いができちゃったって感じかな?

ナズリンだって、昔と今じゃ願いは違うでしょ?」

確かに今のナズーリンの願いは寅丸星を中心にいくつもある。

しかし自分が【発生】したときには、当然寅丸は存在していなかった。

これも強い思いの内容変化だろうか。

……だったら、だったら……

「ところでナズリンはどうやって妖怪になったの?」

「その話は次の機会だ。少々込み入っているからね」

「えー、ずるーい。

私の恥ずかしい秘密を聞き出しておいて、自分は内緒なんてずるーい」

「恥ずかしいってなんだよ。ちょっと黙ってくれ! 思いつきそうなんだ」

「あー、ひどーい、困ったときだけ色々聞いてきて、用が済んだら黙れですって。

どんだけ都合のいい女なのよ私ったら。

寅丸さんに言いつけてやろーっと。

ついでにお菓子もらっちゃおーっと」

てゐは縁側から飛び降り、厨房へと歩いていった。

お互いに分かっている。

ナズーリンが何か思いついて策を練り始めたことに。

てゐはその邪魔をしないように怒ったフリで離席したことに。

二人はそういう仲だった。

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