紅川寅丸とTeam東方不敗の作品やご案内

七曜のクッキー(2)

「日月火水木金土、と、土金木水火月日では全く違う物語です。

それぞれ特徴のある味ですから、次にどれを口にするかで印象が変わります。

この前の【日月火水木金土】の順番ですと、こうでした! ジャジャン!

最初の出会いは甘いバター、次にちょっと塩気のあるスノーボール、そしてやや苦味の利いたピールは中盤の意外な展開です。

ミントで気を静めた後に抹茶の風味とアーモンドの歯応え。

ここが山場でしょう。

クリームチーズでちょっぴり切なくなって、チョコで甘くほろ苦い穏やかな終幕。

味覚を中心に全身で【聞かされた】優しい恋の物語のようでした!」

ポカンとしているパチュリー。

「季節、気温、天候、その日の気分、お茶の種類によっても、変わってきますから【これがベスト】っていうのはないんだと思います。

なんにせよ、すべての組み合わせを試すべきですよね。

すべてを検証したいですね。

組み合わせはいっぱいありますよねー。

7種類ですから、最初に選ぶのは7種類、次に選ぶのは残りの6種類、三番目は残りの5種類で、えーと、何通りあるのかな? えーと」

「5040通りよ」

「えーー! そ、それじゃあ、週に一回検証してたら100年近くかかっちゃいますよ!」

「つきあっても良いわよ」

「へっ!? あ、ありがとうございます、パチュリー館長!」

自分にはできない発想、ユニークな着眼点、知識豊富なはずの魔女が度々驚かされる。

そしてその考え方の根底には常に明朗な優しさがうかがえる。

単に礼儀正しく好奇心旺盛なだけではこの【動かない大図書館】の心は動かされない。

パチュリーははたてを気に入っている。

とても気に入っている。

「今日はなにを調べているの?」

はたては携帯電話型の写真機の画像を見せる。

その岩は歪なキノコようだった。根元のほうが細くなっている。

風水に削られたのか、不自然な隆起があったのか。

「最近見つけたんです、私の【能力】で検索したら、まだ誰も撮っていないみたいなんで、独占できそうなんです。

しっかり調べてから記事にしようと思いまして」

「ん? アナタの能力って【念写】よね?」

「ナズーリンデスクに教えていただいたんです。

私の能力は既存写真の念写ですから、検索して出てこなければ、誰も撮ったことがないってことになるんですよ、デスクは他にも……」

嬉しそうに話す鴉天狗。

パチュリーはナズーリンと言うネズミ妖怪とは面識がある、そもそもはたてとの出会いもナズーリンが居てこそのことだった。

「不思議な形の岩ね。私も見てみたいわ」

はたての話を遮るように切り出したパチュリー。

はたては自分の話が遮られたのにも驚いたが、それ以上に出不精の魔法使いが外出を望んでいることに驚いた。

内心の驚きを隠し、その言を受けてみる。

「ご案内しますよ。いつにしましょうか?」

「明日、いえ、明後日にしましょう。昼食は用意するから」

「え? よろしいんですか?」

またも驚いた、この魔女は本気だ。

「ええ、ここからだと、どのくらい時間がかかるのかしら?」

「うーん」

射命丸文には敵わぬまでも、鴉天狗であるはたての飛行速度はかなりのものである。

しかし、眼前のインドア魔女が高速飛翔する図は想像しにくい。

「アナタ一人だと、どのくらい?」

はたてがなにを考え込んでいるのか察した魔女が答えやすいように質問を変える。

「通常の巡航速度で四半刻(30分)弱でしょうか」

パチュリーの飛行速度は速くはない、いや、はっきり遅い。

風に乗るようにして楽な姿勢でふわーっと移動する。

その速度は、はたての二割も出ないだろう。

「では、夜明けを待って出発しましょう、いいわね?」

はたては考える。

出掛ける気満々なのはいいが、この魔女が往復数時間の空の旅に耐えられるだろうか?

丈夫な体ではない。

日差しが強かったら片道も持たないだろう。

パチュリーの飛行姿勢で高速飛翔。

思いついた。

以前に借りた西洋童話にでてきた馬車だ。

「パチュリー館長、背もたれのついた大きめのクッションをご用意願います。

それに綱を取り付けて私が引っ張ってまいります。

館長はご自分の体を浮かせておいてください。

これでしたらかなりの速度で飛ぶことができますよ」

はたての提案はすぐに理解できた。

「でも、それではアナタが馬かトナカイのようだわ」

「構いませんて。パチュリー館長の足、いえこの場合、羽になりますよー。

それに私、朝早いの苦手なんですよ、これでお願いできませんか?」

下手なウソだ。

昼夜を問わない体当たり取材が身上のはたてに苦手な時間帯などない。

自分の体を気遣ってくれているのが分かったパチュリーは下手なウソに乗っかった。

「仕方ないわね。それじゃ、明後日、昼前にいらっしゃい」

「了解しましたー!」

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