紅川寅丸とTeam東方不敗の作品やご案内

七曜のクッキー(9)

連絡用の狼煙ではたてを呼びつけたナズーリン。

「はたて君、また、調べ物を頼みたいんだ。図書館に行ってきてくれ。 いいかい?」

返事をせず、下を向いてしまったはたて。

理由が分かっているナズーリン、少し心は痛んだが、本人から切り出させるために振ったネタだ。

「デスク、申し訳ありません、私、もう、図書館にいけないんです」

「なにかあったのかな?」

「パチュリー館長のご不興を買ってしまいました」

「話を聞かせてもらっていいかな?」

ナズーリンは決裂の直接原因が自分とは正直驚いた。

こんな自分が悋気の対象とは。

それにしても真っ直ぐな娘だ、いや、二人ともか。

「ふーむ。資料の拠り所が無くなって残念だね」

「パチュリー館長に、もう、会えないかと思うと、その方がずっと残念です」

「それはなぜかな?」

「とても優しくしてくださいました。

私、あの場所、いえ、館長と一緒にいると落ち着くんです。

それに素敵な七種類の美味しいクッキーを振舞ってくれました。

一緒にお出かけしました。

いろいろなことをたくさん教えていただきました。

あの方は机上の仮説を検証する方法をご存知です、だから、もっと外に出て欲しいです。

私、あの方に気に入られていると、勘違いしてました。

でも、あんなにデスクの話をしたのはパチュリー館長だけなんです。

私を分かって欲しいって、営業モードを止めちゃったんです。

きっと、全部受け止めて、理解してくれるんじゃないかって、甘えていました」

ナズーリンは思い巡らす。

パチュリーがはたてに特別な感情を抱いているのは間違いない。

はたてもパチュリーを【特別なヒト】と見始めている。

でもそれは、自分が寅丸星に抱く様な感情、あるいは星熊勇儀とパルスィ、慧音と妹紅等の関係とは異なる。

だが、後押しは難しくない。

「先刻、十六夜咲夜どのと話をしたんだ。

そのときの情報を与えよう。

そしてその先はいつものように自分で検証し、判断したまえ」

きょとんとしていたはたてだったが、最後の【自分で検証、判断】のところで記者モードに入った。

「【七曜のクッキー】作った本人以外ではキミしか口にしていないらしい」

「え? パチュリー館長も一緒に食べてましたよ?」

「だから作った本人以外と言ったろう?」

「……パチュリー館長が作っていたんですか……」

「咲夜どのに教えを請うて作ったんだそうだ。はたて君のためだけにな」

七曜のクッキーが初めて供されたとき、一つ一つをやけに丁寧に説明してくれていたことを今思い出す。

「最近、薄紫色の日傘を入手されたそうだ。

魔法にそれほど詳しくない咲夜どのから見ても過剰なほどの保護魔法がかけられているそうだ。

破損、劣化、紛失を許さない強靭な複合魔法らしい。

たかが日傘一本に」

【少し派手な色ね】と言っていたのに。

「サンドウィッチは時間がなかったんだそうだ。

前日から取り組んでいた製作物に時間をとられたらしく、外出当日の朝までかかってしまったらしい。

【私一人じゃもう間に合わない!】とても悔しそうな顔で咲夜どのに頼んだそうだ」

ここまで聞かされて七曜の魔女の気持ちが分からないはたてではない。

「私、どうしたらいいんでしょう?

これまでそんな風に想われたことないから。

パチュリー館長は好きですけど、こ、恋人とか、思えませんよー!

デスク! 私、どうしたらいいんでしょう!?」

「まぁ、すぐに付き合うとか、結婚するとかの話ではないだろう?

慌てて結論を出すことではないさ。

我々には結構時間があるからね。

ちなみに私は想い人に気持ちを伝えるまで、千年以上待ったんだぞ?

それより、今、キミはどうしたいんだ?」

「ワタシ! パチュリー館長に、パチュリーさんに会いたいです!!」

「ならば行け!! 今すぐに!! 速度記録を塗り替えろ!! さあ!!」

「はい! 行ってきます!!」

ナズーリンが指差す彼方へ向かって美優の翼が飛び立った。

紅魔館のテラスでは咲夜に焚きつけられたパチュリーが、日が翳っているにも拘らず、日傘をさして佇んでいた。

一人には慣れている。

一人が当たり前だから。

他人と関わることは煩わしい。

なにもかも元に戻るだけ。

でも【七曜のクッキー】どうしようかな。

結構作ってしまった。

魔法をかけたガラス瓶に入れてあるからしばらくは大丈夫だけど。

はたて以外に食べさせるという選択肢はない、まったくないの。

狭い幻想郷だからどこかで出会うかもしれない。

挨拶くらいできるかな、してくれるかな。

……私、悪くないもの……多分、悪くないもの……でも、悪かったのかな……

きちんと話をしたいな、そうしたらちゃんと伝えるのに……多分、伝えられる、と思うの……多分。

紅魔館近くで減速。

美鈴を視認。

「おっじゃましまーーす!!」

人の良い門番は、両手をぶんぶん振って迎えてくれている。

そして次は盛んに一方向を指差している。

その方向、テラスに薄紫の日傘を発見した。

すぐに見つけられた、やっぱりいい色だった。

ふひゅーっと一陣の風。

「パチュリー館長! やっぱり私、ナズーリンデスクの話、聞いてもらいたいんです!

これからも姫海棠はたての全部を聞いてください! お願いします!!」

パチュリーは突然かなえられた願いに少しだけ動転していた。

だが【これからも】の部分に全神経が反応した。

【やる気スイッチ】がONになり、【言いたいことを言うツマミ】がMAXに回された。

「そこのところは善処しましょう。

でも私も言いたいことを言わせてもらうわ」

「はい!」

「【外に出るべき】って、私、アナタの【羽】以外で遠出するのは嫌よ」

「はい! 今後もお任せください!」

「【七曜のクッキー】の検証、あと5037通りあるのよ?

途中で止めるのは許さないわ」

「はい! 今後もよろしくお付き合い下さい!」

「アナタを気にかけているのはこの世で唯一【ナズーリンデスク】って、面白くない。

だってアナタ、間違っているもの。

だって、だって……そう、私の存在も認めるべきね」

「は? は、はいー!」

(あ、あ、違うのに! 違うのにー! きちんと謝りたかったのに!)

【素直な気持ちを伝えるボタン】は相変わらず接触不良だった。

なんとも不器用で危なっかしい、こんな二人の長い長い、付き合いは、ようやく始まった。

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いやー、妙なテンションに煽られ、シリアスと脱線が入り混じりましたが、この二人の話は拙作、「ナズーリンデスク! スクープです!」の後、どうしても書きたかった話でした。拙作、ナズ星モノのスピンオフ作品です!(笑) ……すみません。偉そうでした。大それた物言い、片腹痛いですね。でも言ってみたかったー。まぁ、インターミッションっぽいのは確かなので、そこらへん、ご容赦ください。

今回も脱線しまくり(当社比五割増)&勝手設定、エロ極微(下着少々)です。

ぶっ飛び咲夜はご期待いただいた方がいらっしゃったので追加したんですが、結果的に次作への伏線っぽくなったので感謝です。

あちらこちらで見苦しいワルノリだと思いますが、これでもバランスをとった結果です(それでこの程度かい!)

お読みくださり感謝でございます。
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紅川寅丸

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