紅川寅丸とTeam東方不敗の作品やご案内

ナズーリン! てゐ! 二人はプリポナ!(うそ)(4)

紅魔館の野外パーティー。

いつものようにレミリアの気まぐれで開催されたパーティーは、陽が落ち始めてから広大な庭で行われた。

今回最大の演し物が【博麗霊夢vs霧雨魔理沙の弾幕ごっこ】だからだ。

パチュリー・ノーレッジ謹製の魔法の外灯で昼間のように明るい。

それでも無粋な虫が寄ってこないのはリグル・ナイトバグを買収したから。

続々と到着する幻想郷の有名人たち。

命蓮寺からは聖、一村ぬえ、そしてナズ星。

今夜は通いで来ている妖怪たちに留守を預けてある。

聖白蓮が『留守をお願いします』と頭を下げれば、『命に代えましても!』と勇みたつ面々。

雲山が広域監視をしており、大事になる前に一輪に知らせが入る手はずになっている。

だから、まず問題はないだろうと主要メンバーがこぞって参加した。

陽が落ちかけた空、射命丸文と姫海棠はたてが飛んできた。

ほぼ左右対称の動きで旋回し、交差し、重なるようにきりもみし、ぱっと散開する。

時に速く、時にゆっくりと、二人が飛び交う。

沈みゆく陽を背景にした刺激的で優雅な空中舞踊。

やがて美翼美脚の二人が同時に着地した。

会場から拍手がおこる。

これだけでも十分に演し物と呼べる舞踊だった。

空を飛べるモノの多い幻想郷、それだからこそ分かる別格の飛翔。

『これが(空を飛ぶ)ってことなのね』

多くのモノが感嘆した。

「デスクー! こんばんわー! みなさんこんばんわー」

命蓮寺’sに駆け寄るはたて。

そんなはたてを取り囲みねぎらう一同。

「はたてさん! カッコよかったー!」

「あんまりスゴいからずっと、口、開いたままだったよー」

「今日のお二人の舞は生涯忘れないでしょう」

命蓮寺の広報係、というくらい馴染んでいる彼女を寺の皆は暖かく迎える。

ナズーリンが進み出て、柔らかい笑顔で言う。

「はたて君、素晴らしい飛翔だったよ。とても、とても綺麗だった」

「えへへへー、ありがとうございます。

実は結構、練習したんです。

私、最高速度は文にかないませんが、旋回精度や姿勢制御はどっこいなんですよー」

皆に誉められ、てれてれのはたて。

少しして、それぞれ勝手に会場をうろつきまわり始める招待客たち。

ナズーリンは、近くにいた山の神社の一行に挨拶をした。

ナズーリンが守矢の二柱と話し始めると、東風谷早苗は八坂神奈子の後ろに隠れてしまった。

「なんだい早苗、どうした? 彼女には、このあいだも会っただろう?」

「だって神奈子様、ネズミですよ?」

早苗の発言に顔を引きつらせた神奈子が、ナズーリンに詫びる。

「すまないね。まだまだ躾が足りないようだ」

「なに、かまわないさ いずれじっくりネズミの怖さを教えてあげよう」

にやっと早苗に笑いかける。

「ところで、あの地底の娘、パルスィはどうなったんだ?」

顛末を説明するナズーリン。

消滅の危機にあった水橋パルスィを気にかけていた神奈子。

橋姫は星熊勇儀の子を成す、というトンでもない目標を得て復活した。

「うーん、なんというか、途方もない結末だな。だが、結果は良しとするべきなんだろうな」

「あら、ワタシは【あり】だと思うよ」

土着神の頂点が割り込む。

「神同士だったら性別関係なしで出産、って割と普通だよ。

神奈子ったら、忘れちゃってるの?

一時、ワタシを孕ませようと頑張っていたじゃない」

「お、おい! 諏訪子! いい加減なことを言うな! そんなことしたことないだろう!?

早苗もいるんだぞ!? 教育上よろしくないことは法度だろう?」

あわてる神奈子に、にやつく諏訪子、目を剥いたまま固まっている早苗。

「冗談はさておき、そのテのことならワタシの知ってる限りの伝承を話してあげる。

今度、神社に遊びにおいでよ」

「そうだな、私も思い出してみよう。
それにオマエがあの時、鬼の大将に叩きつけた啖呵はとても小気味よかった。

オマエは勇気と知恵があって、そして優しい。

歓迎するよ、いつでもおいで」

「でも、ネズミ……」

早苗だけが顔を曇らせていた。

山の一行と別れたナズーリンに博麗霊夢が声をかける。

「こんにちは、ナズーリンさん」

普段では考えられないほど上品に微笑む幻想郷の裁定者。

周囲が【なにごとか】と見守る。

【ナズーリンさん】と呼ばれたことでいつもの小芝居が開幕する。

会釈をしたナズーリンがよそ行きの笑みを浮かべる。

「博麗の巫女様、なんとも奇遇なことですね。

このように賑やかな席にお出ましとは。

驚いてしまいました」

「私が宴席にいるとおかしいですか?」

「これは失敬、物静かで清楚な貴方様には似合わないのでは、と私の勝手な思いこみです」

「実は私、宴が好きですのよ」

「左様ですか。考えてみれば、神事と祭事、切り離せるものではありませんね。しかし……」

少し難しい顔をするナズーリン。

「そのように笑顔を振りまくのは感心しませんね、よろしくありません」

「まあ、なぜですの?」

本気できょとんとしている霊夢。

「今宵ここには幻想郷の美姫が数多く集っているようです。

皆、精一杯めかし込んで……

ですが、巫女様の笑顔の前ではそれも霞んだ果てに散ってしまいましょう。

懸命に飾り立てている皆があまりに気の毒です。

少し【手加減】をされるがよろしいかと。

それに……」

「それに?」

「その麗しい笑顔、独り占めなどとは恐れ多いですが、私も人並みに嫉妬をするのですよ?

どこぞの誰かが不埒な想いを抱いてしまうのではと、気が気ではありません」

そう言って少しだけ唇を噛むナズーリン。

霊夢はほんのり頬を赤らめる。

「ナズーリンさん、私、少し調子に乗っていたようです。

貴方を困らせるつもりなどありませんでしたのに」

「いえ、私のことなどお気になさいますな」

「浮かれ女のような振る舞いに怒っていらっしゃるのでしょう?」

「いえ、怒ってなどおりません」

「うそ、怒ってます、ナズーリンさん怒ってます」

悲しそうな表情を作る霊夢。

「誓ってそのようなことはございません」

なんだこのカユいやりとり。

聞いていた周囲の面子は喉のあたりをボリボリ掻きながら呆れている。

しかし芝居だと分かっていても、博麗霊夢にこんなことを言わせるとは。

この小さなネズミ妖怪、何者なのか。

あまりナズーリンを知らない連中は、心の中で要注意の札を貼り付けた。

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