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ナズーリン! てゐ! 二人はプリポナ!(うそ)(5)

一方、姫海棠はたては遅れてやって来た大物に捕まっていた。

「はたてさん? 最近のアナタの新聞、面白いわよ、頑張っているのね」

「はい、ありがとうございます!」

八意永琳の労いにかなり恐縮している。

天才薬師の書評は幻想郷で最も辛口と言われているから。

「とても興味深い考察記事が多いわ。

でも、もっと見聞を広めることを勧めるわね。

もし良ければ、アナタに紹介したいヒトがいるの。

なかなか広範な知識と良識を持っていて、とても深い思考をするヒトなの。

今日も来ているから紹介してあげましょうか?

きっと得るものが多いと思うわ」

八意永琳が言うのだがら一角の人物に間違いないだろう。

知識欲旺盛なはたては『是非お願いします』と答える。

はたての返答に満足そうに頷く永琳。

「ナズーリンと言うネズミ妖怪よ。

だけど、外見に惑わされないでね、立派なヒトなのよ」

【え?】

「命蓮寺の寅丸星の従者なのだけれど、優秀な頭脳を持っているわ。

なかなか底を見せないの。

皮肉屋で意地の悪い物言いをするくせに根は恥ずかしいほど善人なの。

そのあたりも可愛いのよ」

得々と弁ずる天才薬師だが、はたては大慌て。

「あ、あの、八意先生、ちょっとお待ちください!」

「なあに?」

「ナズーリンさん、ナズーリンデスクは私の師匠なんです。

最近の私の新聞、評価いただけるようになったのなら、それはナズーリンデスクのおかげなんです。

記者としての私を一から鍛えなおしてくれたのはデスクなんです!」

勢いに乗った姫海棠はたての言に驚いている永琳。

「そうだったの? じゃ、あの文果新報にも絡んでいるの?」

以前、射命丸文と共同で発行した【文果新報】は三号のみの号外扱いだったが、幻想郷で絶大な支持を受けた。

「絡むもなにも、あれはナズーリンデスクの発案です。

私と射命丸文に報道出版のなんたるかを改めて指導してくださったんです」

「そうだったの? 彼女、新聞のことは、一言も言わなかったのに」

「自分の功を誇る方ではありません。

デスクのほとんど全ては、主人である寅丸星さんのためにあります。

普段、デスクの本質は隠されています。

寅丸さんのために知徳体を磨き、鍛え上げてきた清廉誠心の士なんです!

ちょっとエッチですけど、そこも魅力です」

べた褒めとはこのことか。

だが、あの因幡てゐが【私の友達】と公言し、なんだかんだでとても大事にしている。

単に賢いだけでは、あの捻くれて老獪な妖怪ウサギの心は捉えられないだろう。

改めて考えると、これはすごいことなのかも知れない。

「ナズーリン……ますます興味が出てきたわ」

月に一度くらいしか永遠亭に遊びに来ないネズミの賢者。

永琳は次回のナズーリンの訪問を心待ちにした。

「寅丸、ナズーリン、お久しぶりね」

寅丸と合流していたナズーリンに、今宵の主、レミリア・スカーレットが妹と従者を伴い、挨拶してきた。

「レディ・スカーレット、本日はお招きをいただきありがとうございます」

自然な所作でレミリアの右手をとり、手の甲に接吻するナズーリン。

こんな挨拶をされたのは初めての経験で、一瞬固まったレミリアだが、急いで取り繕う。

「【レディ】と呼ばれるのは何年ぶりかしらね?」

嘘であった。

レディなんて、生まれてこの方呼ばれたことはない。

貴族として生まれながらも、種族上、普通の社交界に入れるわけもなく、身近なもの達がちやほやするだけで【レディ】と呼ぶものなどいなかった。

辛苦の果てに当主に収まったものの、実は正式な社交の場での処し方をあまり知らないレミリアだった。

「真夜中の薔薇の君。

日の光あるところで衆目に晒すにはあまりにも危険な麗しさ。

どうか夜の世界だけで咲き誇ってくださることを切に望みます」

意味をつかみかねているレミリアにネズミの紳士が続ける。

「それがこの世の平安を保つことにつながります。

なぜなら、貴方を求めて繰り広げられる諍いを最小限にできるからです。

私は貴方の愛くるしい外見には惑わされません。

私の目に映っているのは、幻想郷で唯一の本物の淑女(レディ)です。

もう一度申し上げます。

私が幻想郷でレディ(淑女)と呼ぶのは貴方だけです。

失礼、卑俗な其れがしには他に気の利いたことが申せません」

そう言って深く腰を折る。

自分だけが本物のレディ(淑女)と言われ、鼓動が早くなるレミリア・スカーレット。

レディとして扱われることに本当は憧れていた。

茶番劇と分かっていても、これだけ丁寧に接されると心が激しく揺さぶられる。

「く、口がお上手なのね。

こ、今宵の宴、な、なにか不都合はないかしら?

遠慮なくなんでも言って頂戴! なんでも!」

必死に動揺を隠そうと奮闘するレミリアにナズーリンが優しく微笑みかける。

「ありがとうございます、レディ。

不都合などございませんが、一つ気になっていることがあります」

「な、なにかしら?」

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