紅川寅丸とTeam東方不敗の作品やご案内

ナズーリン! てゐ! 二人はプリポナ!(うそ)(6)

レミリアの胸元に視線を移したナズーリン。

真紅のバラを模った豪華な細工物が飾られている。

「素敵なブローチですね。よろしければ由来をお聞かせ願えませんか?」

にこっと笑うナズーリンに、明晰なレミリアはその意図に気づく。

「この世で一つの【レミリア・スカーレットのバラ】よ。大事な宝物なの」

「近くで拝見してもよろしゅうございますか?」

「え、ええ、どうぞ」

「ありがとうございます、では失礼いたします」

レミリアのそばに跪き、目線を胸元に合わせる。

「これは素晴らしい、仕事柄、あまたのお宝を見て参りましたが、これはすごい。

この繊細に重なった花弁は、貴方への募る想いの重なりを。

この華やかな煌めきは、貴方の輝きに対する憧れを。

この上品で力強い【赤】は、夜の王たる貴方への尊崇を。

なんという美しい具象なのでしょう。

【想い】を形にすることは、古来、困難な命題とされておりましたのに、ここに答えがあるとは。

これを贈った方が貴方へ抱いている憧憬、愛情が激しい波濤のように伝わってきます。

レディ・スカーレットがとても、そう、とても大事なのでしょう。

貴方が身につけることにより、どちらもひきたっている。

その方はこの効果を十分わかっているのでしょうね。

素晴らしい、本当に素晴らしい。

眺めるだけで幸せな夢に浸れます。

貴方が【宝物】と呼ぶにふさわしい極上の一品ですね」

レミリアの後方、真っ赤な顔で俯いているフランドール・スカーレット。

以前、レミリアから探し物を頼まれたナズーリン。

このバラがフランドールが自分の宝石羽根から作り出したものであることを知っている。

突き止めたのは他ならぬナズーリンだから。

そのことは秘密となったが、なんとかこの姉思いの妹に一声かけてやりたかったので、このような回りくどい物言いをした。

それを察したレミリアは後方にいた妹を前に出す。

「お褒めにあずかり光栄だわ。

そう、そう、我が妹、フランドール・スカーレットを紹介しましょう」

「あ、あの、わ、わたし、フランドール、す、すかれっと」

動転している妹姫を満面の笑みで包み込む千両役者。

「フランドール様、初めてお目もじつかまつります。

ネズミの騎士、ナズーリンと申します。

お見知り置きをお願いします」

膝をついて大仰に礼をする。

そしてナズーリンはそれまでほとんど置物だった主人を引き合わせる。

「毘沙門天が認じし代行者、我が主人、寅丸星でございます」

「命蓮寺の寅丸星と申します。フランドールさん、よろしくお願いしますね」

フランドールは寅丸と話しながらも、ナズーリンが気になって仕方がないようだった。

別れ際、レミリアが精一杯上品に微笑んで二人に言う。

「今夜は楽しんでいらしてね」

吸血鬼の姉妹が言葉を交わす。

「お姉さま、あの【ネズミの騎士】様、とてもいい感じ。素敵な方ね」

「そうね、私もそう思うわ」

お世辞やおべんちゃら。

誠意云々の問題はもちろんだが、TPOを弁え、最小限に綺麗にまとめれば印象に残る。

『お世辞は嫌いだ』そう言うモノは多い。

これは見え透いた下手なお世辞が嫌いなのであって、タイミングと節度を弁えたお世辞はコミュニケーションの絶妙なスパイスになりうる。

ナズーリンの得意技の一つではあった。

だが、彼女は心底気に入らない相手に世辞を言ったことはこれまで一度もなかった。

レミリア達が去った後もその場に残っていた十六夜咲夜。

ナズーリンのそばまで歩み寄ったパーフェクトメイド。

寅丸にちらっと目線をやってからナズーリンに無言のまま微笑みかける。

そして、自分のスカートの裾を両手でつまみ、ゆっくりと引き上げ始めた。

大物に絡みっぱなしのナズーリンは会場の注目を集めたままだったので、このトンでもない余興に気づいた周囲が唖然としながらも見守る。

誰だゴクリっ! って!

徐々に上がっていく幕、一体どんな素敵なショウが始まるのか?

そして、光沢のある【白】が見えっ……! その瞬間、ぱっと手を離した。

あっ! と数人が声に出す。

もう終幕かい! アンコールは!?

意図を諮るように咲夜の顔を見上げるナズーリンに対し、パチッとウインク、口元に艶っぽい笑みをのせ、

「続きは、あ・と・で……」

ナズーリンだけに向けたささやきだったが、誰も聞き漏らさなかった。

意味ありげな流し目をくれつつ、もう一度殺人級のウインク。

そして鮮烈な印象を残して去っていった。

目撃した面々は、咲夜の間違えようのない【お誘い】(実際は間違っているのだが)を受けた新参のネズミ妖怪をめぐり、ひそひそひそひそ。

ナズーリンをほとんど知らない連中。

→(なんなの? あのネズミ!)

少しは知っている連中。

→(あれが噂のナズーリン、あの十六夜咲夜さえも攻略済みとは、やるわね!)

よく知っている連中。

→(えー!? 寅丸さんはどうするの?)

そしてこの場で唯一、状況をほぼ正確に理解している因幡てゐ。

→(ナズリン、またバカやったのね? 面倒見切れないわ)

そして寅丸星。

「私は演武の準備がありますから」

平坦すぎる声でナズーリンに背を向け、さっさと行ってしまった。

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