紅川寅丸とTeam東方不敗の作品やご案内

ナズーリン! てゐ! 二人はプリポナ!(うそ)(8)

「よう! ナズーリン、久しぶりだな!」

ドッボドボに意気消沈しているナズーリンに霧雨魔理沙が声をかける。

「なんだキミか……」

「おい、霊夢やレミリアとずいぶん対応が違うじゃないか!」

「いや、まぁ、いろいろあって些かくたびれているんだ、勘弁してくれよ」

「そうなのか? でも今日は見ていてくれよ。

オマエのアドバイスはがっちり取り入れさせてもらったからな!」

寅丸星の懇願で魔理沙にパワーアップの手段をいくつか伝授したのは少し前のこと。

根は真っ直ぐな若い魔法使いは一つ一つ真面目に取り組んだようだ。

「ほう、期待していいんだね?」

「うん、完璧とはいかないが、全部が揃うまでじっとしているなんて性に合わないからな」

「まぁ、キミらしいな。 で、不安材料はなんなんだね?」

不安を見透かされたような気がして魔理沙はちょっと怯んだ。

「むっ…… オマエにはアドバイスをたくさんもらっているから話すけど、アリスと一緒に作ったスペカが問題なんだ。

かなり強力なカードなんだけど、未だに使いこなせないんだよ」

魔理沙が眉間に皺を寄せたまま話し始める。

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アイツに【魔道具】のこと相談したら、ワタシ用の【人形ベース・スペカ】を作るって言い出したんだ。

概要と言うか、デザインを聞いた段階で鳥肌が立ったぜ。

かなりスゴいスペカだった。

でも、人形を展開させた後、自分で操作しなけりゃ効果は薄いってことで、アリスほどしっかりしたものは無理だが、【魔法の糸】を繋いで操る訓練を始めたんだ。

この訓練がトンでもなくてな。

人形操作って、指先の感覚もそうだが、手のひら、手首の微妙な感覚、肘、肩、そう、結局全身をコントロールしなけりゃできないんだ。

まず基本ってことで、テーブルに置いたティーカップに米粒(炊く前の)を放り込めって言うんだ。

座ったままで米を一粒つまんで、テーブルの端にあるカップに、ひょいっと投げるだけなんだが、固いもの同士だから、弾かれてこぼれちゃうんだよな。

カップの壁面のイイ場所にぶつけないとおさまってくれない。

まぁ、何とかできるようになったよ。

そしたら次はカップが二つになった。

米粒も二つだ。

二つ同時につまんで、同時に放って入れるんだ。

これは難しかった。

単なる集中力でクリアできるもんじゃないよ。

投げた軌道が事前にイメージできて、当たり前のように自然に手が動く、そうなるまでに結構時間がかかった。

そして次はなんだと思う?

そう、三個ずつだ。

『もう、無理だぜ!』って言ったら、アリスはカップを十個並べて、戸口近くまで離れたんだ。

米粒を入れた小皿に指先を突っ込んだと思ったら、その右手がテーブルに向かってぱっと開かれた。

しゃりりりーん、って音がしたら、十個のカップに米粒が一個ずつ入っていた。

なんか言おうとしたら今度は左手が開かれた、しゃりりりーん、カップの米粒は二個ずつになった。

【これが出来たら次の段階よ】って言われてちょっと泣いたぜ。

ワタシ、自分では結構、器用な方だと思っていたんだけど、アリスのアレは次元が違う。

えっちらおっちら、オマケしてもらいながら段階を上げていったんだけど、時間がないのと、ワタシの力不足で、どうにも細かいところでボロが出るんだ。

このスペカ、最悪の場合、本来の一割くらいしか効果が出ないぜ。

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珍しく弱気な魔理沙だが、それだけ自分を冷静に精確に見られるようになったということか。

「そのカードが100%発動すれば勝機があるんだね?」

「ああ、いくら霊夢でも新しいスペカの連続投入で集中力が限界を超えるはずだ。

トドメは新型のマスタースパークだけど、その直前に使うアリスの【赤い靴のヨコハマドール】が霊夢の集中力を完全に涸れさせる段取りなんだが、うーん」

「だが、ここまできたらやるしかない、ってところだね」

「ああ、そういうことだな」

そろそろ余興が始まる時間だった。

余興の司会進行をする紅美鈴が寅丸星を呼び出す。

「続いてはー、命蓮寺からの参加です!

毘沙門天の代理、寅丸星さんの槍の演武でぇーっす!!」

灰色の武闘着に着替えた寅丸星が槍を携え、御影石を敷き詰めた舞台に立つ。

基本の型はそこそこに、槍と自身の回転を多めに取り入れた独自の演武。

実戦的ではないが、演し物として、見せ場作りのための派手な組み立て。

初めのうちは槍が風を切る音が、 ビュッ! ビュッ! と小気味よく聞こえていたが、やがて回転速度が上がっていくと、その音は高く乾いた金属音に変わる。

もはや目で追うことが困難になる。

そもそも槍が見えない。

ちょっとした竜巻を作れそうな風の流れを、逆の回転や、反対の風向きを作ることで相殺していく。

美しく見事な演武だが、それなりの重量物があり得ないほどの速度で動いている。

『怖い……』

誰の呟きだったか。

一旦動きを止めた寅丸に向かって、ムラサ船長が数十個の小石を放り投げる。

爆竹が鳴るような勢いで次々と繰り出される穂先。

小石は一つも落ちてこない。

粉よりも細かく砕かれた小石は煙となって漂っていた。

状況を理解しようとする観客の反応を待たず、腰だめの基本形で気を溜め始める武神の代理。

そして裂帛の気合 「バカーーーーーーーーーーーーッ!!!」

六合大槍でいう突きの型、【扎】(チャー)が湖の方角へ突き出された。

その一撃に込めた十分な気迫は、目に見えるほどの塊となって飛んでいった。

その塊に引っ張られた空気が、元に戻ろうと会場を激しくかき回す。

なんと凄まじい一招か。

「命蓮寺の寅丸星! 演武を終わります!!」

そして終了の合図とばかりに槍の石付きを床に打ちつける。

皆、てっきり、ガーン! とか ビシーィッ!! とか床石が派手にひび割れると思ったが、

【ずっ】 鈍い音。

一尺ほど御影石の床に刺さっていた。

ヒビ一つなく。

どれほどの力で突けばこうなるのか。

緊張している会場。

歓声も拍手もない。

寅丸は険しい表情のまま俯き気味で動かない。

しゅうしゅうと音がするほどの闘気が彼女を取り巻いており、収まる気配がない。

舞台に上がっていったのは聖白蓮。

ゆっくりと寅丸に歩み寄り、軽く抱きしめた。

聖の方が頭一つ近く低いのに、その姿は全てを包み込むように大きく見えた。

寅丸の闘気が消えていく。

聖白蓮の体の中に吸い込まれていく。

憎しみも諍いも苦しみも、全てを受け入れ、許してくれそうな柔らかく穏やかな存在。

見るモノ全てが命蓮寺の住職に大いなる母性を感じ取った。

表情が和らぎ、恥ずかしそうにし始めた寅丸を連れ、退場する。

ここでようやく拍手喝采が巻き起こった。

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