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ナズーリン! てゐ! 二人はプリポナ!(うそ)(9)

有力者が集まるこの宴席を、招待されてもいない多くの妖怪や、物の怪の類が遠巻きに注目していた。

そして震え上がった。

多少腕に覚えがある程度で太刀打ちできるレベルではない。

最近やけに人妖の集まる寺、命蓮寺。

ちょっかいを出してやろうともくろんでいた、タチの悪い連中は、

【命蓮寺にはトンでもない武者がいるぞ】

【近寄るまいぞ】

あの槍、かすっただけでも存在が霧散してしまうだろう。

逆に、これまで虐待されていたモノ、行き場のないモノ、そして 迷いのあるモノたちは、命蓮寺に行けば救われるのではないかと、希望を灯した。

悪意を退け、救いを求めるモノを集わせる。

まことに堂々たる武神の顕現。

普段の【柔】とは異なった武神の代理、寅丸星の【剛】の体現であった。

そして好対照をなした聖白蓮の【慈愛】。

幻想郷の妖たちに命蓮寺の存在を強烈に印象づけた。

「ねぇ、さっきの【バカーーーーッ】は誰のことなのかな?」

ナズーリンが相方の妖怪ウサギに問う。

「気配りのヘタクソなどっかのバカネズミのことでしょ? ふんっ」

吐いて捨てる因幡てゐ。

「て、て、てーゐ」

「ああ、もう、寅丸さんのことだとホント、情けないんだから」

腕にすがり付いてくる【通称:賢将】をうんざりと見やる太古のウサギ妖。

「まあー、すごいわねー。とーっても強そう。

妖夢とどちらが強いかしらー?」

西行寺幽々子が魂魄妖夢に問いかける。

「幽々子さま、もしかしたら私、勝てないかもしれません」

「そうなのー?」

妖夢の実力は剣道でいえば高段者クラスだが、いかんせん、実戦経験が少なかった。

彼我の実力差を正確に測る【目】の修養が足りていなかった。

八雲紫が寅丸星を見つめている。

気づいたのはてゐ。

「ナズリン! しっかりしなさいよ! ちょっと気になる事があるから!」

グズグズのナズリーンを小声で叱咤する。

「あのスキマ妖怪、寅丸さんのことをしゃべっているわ」

【スキマ妖怪】と聞いて、一瞬でその目に知性の輝きが戻った賢将。

「・・・・・・教えてくれ」

かなり離れた位置、口元を扇子で覆いながら八雲藍に話しかけている。

純粋な聴覚のみで聞き取っているてゐが気づかれる心配は少ない。

『あのコ、やっぱりいいわー』

『紫様、あきらめていなかったんですか?』

『あきらめる、なんて言ったことないわよ』

『しかし、あの尼僧の下、毘沙門天の加護もありますから、無理ですよ』

『すぐに、ってわけではないし、気長に待つとするわ、【黄】の名は空けておきましょう』

てゐの盗聴内容を聞いて軽く舌打ちするナズーリン。

「まだあきらめていない、ってことか」

首をかしげる妖怪ウサギに小声で説明する。

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八雲紫は、妖獣だった頃の寅丸を自分の【式】にしようと狙っていたらしい。

稀に見る優秀な妖獣、一歩違いで聖白蓮に持って行かれたのだろう。

ナズーリンの推測の裏づけは、自分が従者として赴任した時から時折感じていた【覗き目】の存在。

正体は分からなかったが、聖が封印されたあたりから、目の存在に気づく頻度が上がった。

今思えば、不安定になった星を取り込む機会を狙っていたのかもしれない。

だが、この元妖獣は崩れなかった。

ナズーリンはもてる力の限りを尽くし、寅丸星を支え続けた。

幻想郷に来て確認できた【覗き目】の正体と、【式】である妖獣、八雲藍の存在。

そして今のてゐの情報、全てが繋がった。

八雲紫は寅丸星を【式】にするつもりなのだ。

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