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ナズーリン! 幻想郷名物、ハリセンチョップ!(5)

洩矢諏訪子が出迎えてくれた。

慧音と二人、社殿の奥の居間に通される。

八坂神奈子が待っていた。

【巫女】はお出かけ中だったので、土着神の頂点がお茶を入れてくれた。

八坂神奈子、洩矢諏訪子、二柱は代わる代わる話をしてくれる。

系統だった話でない。

それぞれ思い出し、思いついたことを次々と話すだけ。

たしかこうだった、

いやちがうよ、

んー、だれだったかな、

それ、かんちがいだよ、

おい、ごっちゃになっているぞ、

あー、そういえばそうだった、

そりゃきみのかみさんやがな、

たまごのおやじゃぴよこちゃんじゃ、

これでぎゃらはおんなじ、

いいかげんにしなさーい、

やっとられんわ、

あちらこちらに脱線しながら、ボケとツッコミが目まぐるしく入れ替わる。

漫才のようなノリで進んでいく。

脈絡のない話なのになんだかグングン引き込まれていく。

この二柱、名人劇場にでてもおかしくないほど、絶妙のコンビだった。

神々の婚姻、神と人、神と妖、人と妖、妖同士、様々な組み合わせとそれに纏わる不可思議な物語。

幸せな結末は少なかった。

だが、それは平穏な話より、悲劇の方が伝承として残りやすいからだ。

そのあたりは歴史に造詣の深い学者二人は心得ている。

慧音はせっせと記録をとっている。

だが、ナズーリンは黙って聞いているだけ。

ナズーリンは話を聞くときに基本的にメモは取らない。

数値や固有名詞がたくさん出る場合は別として。

話す時の声の抑揚や表情、それらを含めて全部記憶をする。

一旦文字にしてしまうと見落としてしまう事があると知っている。

『誰其れがこう言った、こういうことをした』

その事実を語ったモノがその時に【賞賛を込めて言った】のか、【苦々しく言った】のか。

それによって裏に隠れている事実は微妙に異なってくる場合がある。

そして語ったモノの見方、感じ方も分かってくる。

だからこそナズーリンは黙って聞いている。

人それぞれにやり方はあるが、小さな賢将はこの方法を貫いてきた。

たくさんの話が出た。

興味深いもの、雲をつかむようなよく分からないもの、色々あったが、およその傾向はつかめた。

【神度】そんな基準があるかはともかく、これが高いほど、そしてより【原初】に近い存在ほど【なんでもアリ】ということ。

【必要とあらば、とにかく子供が生まれちゃう】

神代の存在はほとんど好き勝手に繁殖、いや、増殖したように見える。

多くの神を担いだ民族、種族が融合、分離するたびに神やそれに類する存在は姿や名前を変えながら増殖、統合していった。

思念体、妖怪同士なら子を成すことは意外と簡単なのかも知れない。

ナズーリンは思いを巡らせる。

星熊勇儀と水橋パルスィ、彼女達のために、そしていずれは自分達のためにもなんとか手立てを見出したい。

一方、慧音と妹紅。

共に素体は人間の女性。

妊娠、出産の過程は人間のソレにならうだろう。

この場合、基本は雌体の単独繁殖だが、精子に代わる形質伝達物質が介在すれば、あるいは別の刺激があれば受精・卵分割自体は起こりうる。

それに婚姻なり強い想いが後押しをする形だろうか。

なんにせよ、越えなければならない課題はいくつもある。

一段落したところでナズーリンが神奈子に話しかける。

「神々のことで一つ思い出した。この度とは関係ないのだが、知りたいことがある、よろしいか?」

さも、今思いついたように聞く。

「もちろん構わない、我々が答えられることならね」

「石長姫(いわながひめ)はこの山におはすのかな?」

ぴくっと眉をつり上げる神奈子。

「それを知ってなんとする?」

それまでとうって変わって真剣な顔の山坂と湖の権化。

「別になにも。いるかいないか、それだけだ。

あちこちから頼まれごとをされているからね。ついでで調べることも多いのさ」

少しおどけてみせるナズーリンをじっと見つめる八坂神奈子。

やがて大きくゆっくり息を吐き出してから告げた。

「そっとしておいてやってくれないか、頼む」

石長姫。

寿命長久、不老長寿を、言い伝えによっては不死を司る神。

八ヶ岳に宿っているとも伝え聞く。

妖怪の山が八ヶ岳の一部であるならば、【居て】も不思議はない。

山の神なら知っているはず。

そしてナズーリンの読みは正しかった。

答えは聞けた。

藤原妹紅との約束、不死の呪縛からの開放の手段を得るため、八意永琳を攻略中ではあるが、他のルートからもアプローチをしている。

その一つが石長姫だった。

慧音はちらとネズミの賢者を見たが、何も言わなかった。

ナズーリンも教師に一瞬目線をくれただけで何も言わない。

この唐突な問いかけの本当の意味を慧音が理解しているかどうか、賢将にもこの段階では分からないが、仮にも歴史学者が【石長姫】を知らないはずがない。

それでもここでは沈黙を保つ分別はあったようだ。

ナズーリンは賢将の誉れ高いが、難題に対しその場で次々と即答できるような伝説級の賢者ではない。

そのことは本人が一番よく分かっている。

時間をかけて調査し、思考し、地道に根回しし、常に複数の解決ルートを模索する。

そしてギリギリのタイミング、皆があきらめかけた頃にようやく解決策をなんとかひねり出す。

敬愛する主人、寅丸星のため、努力を重ね、賢将の名を必死で築き、維持してきたのだ。

『あれほどの賢人が【ご主人様】と認め、仕える寅丸星とは、いったいどれほどの大人物なのだろう』

寅丸星が侮られないよう、少しでも多く尊崇を集められるよう、自分の【在り方】を力の及ぶ限り演出してきた。

ナズーリンの生は寅丸星を中心に回っている。

星を認めさせるために、そしていつか星に認めてもらうために、ナズーリンはそのために生きてきた。

だが、先だって【星に認めてもらう】ことが叶ってしまった。

命より大事な【ご主人様】が打ち明けてくれた。

すべてを引き換えにしてもアナタを取ると、ずっと昔からアナタが好きだったと。

嬉しくて泣いた。

心身を捧げたヒトと恋人として共に生きていけるのだと分かり、嬉しくて泣いた。

なにもかも思い通りではないが、十分に幸せだ。

張り詰め、尖り、触れるモノを容赦なく切り裂いてきたナズーリンの精神は今はとろん、と緩んでいた。

主人が最優先なのは変わらないが、緩んだ分、余裕が生まれた。

そして好奇心旺盛でイタズラ好き、負けず嫌いだが 面倒見がよい、生来の性質が前面に出始めた。

それに伴い、色々な面白面倒なことに関わるようになってきた。

それも悪くないと思っている。

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