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ナズーリン! 幻想郷名物、ハリセンチョップ!(6)

一通り話が終わり、諏訪子が何度目かのお茶のおかわりを振る舞う。

興味深い話の中からさらに細かく調べなければならないこともある。

ただ、確実に収穫はあった。

慧音も手応えを感じたようだった。

二人が二柱に礼を言って辞そうとしたとき八坂神奈子が言った。

「話を聞かせた交換条件というわけではないんだが、一つ私達の相談に乗ってはくれまいか」

もちろんナズーリンも慧音も否のあろうはずはない。

「実はウチの早苗のことなんだ」

守矢神社の風祝、東風谷早苗。

元は【外】の人間だった、女学生だったとも聞く。

幻想郷に来た当初はとても緊張しており、色々勘違いもし、苦しい思いをしていたようだが、今は楽しそう。

だが、この楽しそう、が結構曲者だった。

『この幻想郷では常識に囚われてはいけないのですね』

これは彼女の最近の口癖。

元々とても真面目で良識のある娘だった。

だが、こちらではこれまでの自分の価値観、常識が通用せず、場合によってはそれが崩壊してしまうような目に何度も遭った。

その中で新たに生まれた数々の勘違い、思い込み。

「最近は妖怪退治が楽しいみたいだけど、どうにも危なっかしいんだよね」

洩矢諏訪子が少し顔をゆがめて言う。

当初は神奈子も諏訪子も『まずは経験することが大事』と放任していたが、どうも色々とエスカレートしているようだ。

早苗は一日の出来事を包み隠さず事細かに二柱に報告する。

昔からの習慣らしい。

最近の話を聞くにつけ、いずれ大変な目に遭うのではと心配していると。

先日も妖怪ルーミアのリボン封印を引き剥がそうとして通りかかった博麗霊夢にこっぴどくとっちめられた。

『そのリボンには触らないで!

この暗闇妖怪は代々、博麗の管轄なのよ。まー私も最近知ったんだけどさ』

『霊夢さんは妖怪の味方なんですか!?』

『めんどくさいわねーアンタ、なんでもかんでも退治すりゃいいってモンじゃないのよ。

とにかくこのコには手を出さないで。

人間にとって特に厄介な妖怪なのよ。

今、ようやくこの形で落ち着いているんだから、ちょっかい出さないでよ』

『納得できません! 霊夢さんだって目があったってだけで妖怪をボコボコにするじゃないですか』

『そ、それじゃただのチンピラじゃないの、私は退治すべきモノとそうでないモノを区別できているからいいのよ』

『【カツアゲ巫女】のくせに』

『あ゛? アンタ今なんつったの?』

『退治されそうになっても、【お賽銭】と言って小銭を渡せば見逃してもらえるって。

だから、ここいらの妖怪はみんな小銭を持っているそうじゃないですか』

『そ、そ、そんな! だ、だ、だれがそんなこと言ってんのよ!!』

『魔理沙さんが言ってました』

『あンのドちくしょうめ!!』

『霊夢さん、仮にも巫女なんですから下品な言葉を使ってはいけませんよ』

『っさいわね! そんなのデタラメよ! ダボ魔理沙のヨタ話なんか信じるな!』

『とにかく納得できないものはできません!』

『はあーー、アンタの場合は体で覚えてもらうしかないようね。

いいわ、かかってらっしゃい、しばらくは硬いもの食べられなくしてやるわ』

さすがにそこまでヒドイことはされなかったが、散々ボコられて泣きながら帰ってきた。

また別の日には風見幽香を怒らせそうになったらしい。

正直本当に危なかったようで、話を聞いた諏訪子達は脂汗が吹き出たと。

ひまわり畑で姫海棠はたてと談笑していた幽香を指さし、

『アナタは妖怪ですね!?』

しかし幽香は気付きもしないではたてに話しかける。

『はたて、アドバイザー契約の件、貴方の新聞をいつでも一番に配達してくれるのなら考えてあげてもいいのよ』

『無視しないでこちらを見なさい!』

怒鳴り声でようやく振り返る最凶妖怪。

『何?』

『私は守矢神社の風祝、東風谷早苗です!

妖怪退治が仕事なのです!』

『風祝? 妖怪退治? そうなの、大変ね』

『あのヒト、お山に越してきた神社の巫女さんなんです』

はたてがフォローを入れる。

『巫女? そういえば巫女の服ね、脇があいてるわ』

『そう言えば幽香さん、巫女は脇毛が生えてきたら引退するらしいですよー』

『それホント?』

『私の仮説です。ただいま調査中ですけどねー。

私の持ち味は大胆な仮説と綿密な調査ですから。

まーハズレてしまうことも多いですが』

『はたて、残念だけど今回もハズレだと思うわよ。

だって、博麗の巫女は代々毛が生えないもの』

『えー!? そうなんですか?』

『なーんてね、ふふふ』

『い、今の冗談なんですか? 幽香さんが冗談を言うなんて……』

『たまには新鮮でいいでしょ?』

『こらー! 無視するなって言ったじゃありませんかー!』

『さっきからやかましいわね、消しちゃおうかしら』

姫海棠はたてが慌てて割って入る。

『早苗さん! 帰ってください! ダメです! 帰って!』

『神奈子様からお山の妖怪とは仲良くしなさいと言われています。

だから、はたてさん、アナタは見逃してあげますから早く立ち去りなさい!』

『このコ、ずいぶんと上からモノを言うのね。

ヒトが話をしているところへ無礼にも割り込んできて喧嘩の叩き売り?』

セリフの割にはニコニコしていたそうな。(それが恐ろしいのだが)

『勝負です!』

『勝負? スペカ? 殴りあい? 死んだら負けでいいのよね?』

『早苗さーん!! 逃げてーー!』

幽香の腰に抱きついたはたて。

『はたて、離さないとアナタにもヒドいことするわよ』

『ダメなんです! あの娘は山の神社の巫女なんです! 殺さないでください!』

『殺すなんて大げさね、両手両足を潰すくらいで許すつもりなのに』

『そ、そんなのダメですー! 許してくださーい! 勘弁してやってくださーい!』

『はたてさん! どきなさい! 勝負のジャマです!』

『ほら、あの娘、やる気十分よ?』

『う、う、どうしよう……そ、そうです! 幽香さん! 配達の件、お約束します! これから必ず一番にお届けしますから!』

『ホント? 約束よ。

【花果子念報】の最新号を誰よりも早く読んでいるのはこの風見幽香、ふふふ、これはなかなか気分がいいわ』

『では、早苗さんのこと許してもらえますか?』

『そうね、アナタに免じて少しお尻を叩くだけにしてあげるわ』

倍くらいに腫れ上がったお尻を押さえ、泣きながら帰ってきた。

数日の間、座ることもできなかった。

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