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ナズーリン! 幻想郷名物、ハリセンチョップ!(7)

「ナズーリンどののお弟子さんが居合わせて良かったな」

慧音の感想。

最近評判の良い【花果子念報】の製作者、姫海棠はたて。

ネズミの賢者を【師匠】と慕っていることは事情通の間では了解事項だ。

「いやまったくだ。大げさかも知れんが【命の恩人】だ。

当の早苗は理解できないだろうが」

神奈子も同意する。

こんなことをしているといずれもっと大変なことになるのではと心配している。

ナズーリンは早苗の話を少し距離をとって聞いていた。

喧嘩を売る相手も売り方についても、【わかってねぇなぁ】と思うだけ。

そもそも妖怪のこともどれくらい理解しているのか、怪しいものだ。

一般に知られていないだけで、幻想郷には危険な妖怪・魔物はまだまだたくさんいる。

このままではさらにややこしい状況に巻き込まれることは必定だろう。

早苗のことは、トラブルメーカーとして面白い存在だと思っているナズーリン。

多少のトラブルは牧歌的な幻想郷ではちょっとしたスパイスだと思っているし、さすがに死ぬようなことはないだろうとたかをくくっている。

自分のことを【ネズミ、ネズミ】と呼び捨てているが、そんなことは全く気にならない、勝手にやっててくれと思うだけ。

つまり、あまり真剣に取り組む問題ではないと思っている。

だが、神奈子と諏訪子にとっては代え難い【巫女】であるし、それ以上に大事な大事な愛しい【娘】である。

早苗の問題は切実だった。

「我々も新参者だ。早苗に教えてやれるほど【ここ】を理解してはいない。

だから改めて誰かに教育、指導をしてもらえないかと思っているのだ」

神奈子が本題を切り出す。

何を教育するとハッキリ言わなくとも分かる。

幻想郷の人妖の均衡、ひいては守矢神社の巫女としての立ち位置を教えて欲しいということだろう。

正直、ほとんど丸投げの面倒な課題だ。

「話が通じやすい、そー、【人間】がいいと思うんだけど、誰かいないかな?」

さらに条件をかぶせる諏訪子。

ナズーリンは今の幻想郷で東風谷早苗に渡り合えそうな【人間】の顔を思い浮かべる。

まずは博麗霊夢。

立ち位置としてはほとんど同じ、最も適しているように思う。

が、そんなことを頼んだとしてもきっと【めんどくさい】のひとことで切って捨てられるだろう。

均衡に関して、霊夢自身は感覚的に理解はしているものの、ヒトにそれをうまく説明出来そうにない。

言いたいことが伝わらず、癇癪を起こす様が容易に想像できる。

【プレイヤー】としては秀逸でも【コーチ】としての適性は皆無だろう。

次に霧雨魔理沙。

いい加減ではあるが意外に世話好き。

うまく頼めば色々教えてくれるかもしれない。

ただそれはそれでまずいことになるかもしれない。

魔理沙の価値観を持った風祝って、明らかにまずい。

盗癖、虚言の巫女、これは明らかにまずい。

完全な人間とは言いにくいが魂魄妖夢。

少々真面目すぎるきらいはあるが常識といったところで言えばましな方。

ただ、彼女の場合、日々の生活、あの脳天ビビンチョな主人に振り回され、ほとんどあっぷあっぷのいっぱいいっぱい。

他人の世話をする余裕はなさそうだ。

いっそのこと聖白蓮と思わないでもないが、いかんせん宗教の違いはなんともしがたい。

あの大地母神のような住職の至近距離での影響力は半端ではない。

早苗が聖に懐いて感化されるのは想像にかたくない。

なにせあの魔理沙が無防備に甘えるくらいなのだ。

二柱もいい顔をしないだろう、いや、死活問題だろう。

一人忘れていた、いや忘れようとしていた。

十六夜咲夜。

彼女こそ礼儀作法や妖怪との付き合い方などほぼ完璧にこなしているのだから良いのかも知れない。

だがナズーリンはとてつもない不安を覚える。

咲夜の指導の下、表面上は完璧に仕上がるとしても、なにかビックリするほど大切なことがすっぽ抜けてしまうのではないか。

そして取り返しの付かないようなモノスゴイことになるような気がしてならない。

思い込みの激しい完璧メイド長と、生真面目で勘違いしやすい新米巫女。

この外的出力だけはやたらに高い組み合わせは、考えたくない最悪のコンビだ。

面白さ以上に、メチャクチャ厄介なことになりそうだ。

なにより咲夜が絡むと自分に盛大に火の粉が降りかかり、火ダルマになりそうで怖い。

ナズーリンは身震いした。 自分は火鼠ではないのだし。

ダメだ、これだけは絶対にダメだ。

他の【人間】のこともざっと考えてみるが、決定打にかける。

そうなるとやはり彼女しかいない。

隣に座っている半獣の歴史学者。

元々教師でもあり、ヒトと妖怪の共存・橋渡しをしたいと願っている立場なのだから適任なのかもしれない。

だが、彼女も忙しい。

今日も寺子屋の休みの日にあわせてやって来たのだし、夕方には里の寄り合いに顔を出すと言っていた。

寺子屋の運営、人里の雑事、学者としての研究、そして歴史の調整。

朝から晩まで忙しい。

もちろん夜は妹紅とたっぷりねっとり激しく忙しい。

大変エネルギッシュな毎日を送っているハンサムウーマンだ。

一日二日で済むことではないので 負担を考えると推薦しにくい。

「私が引き受けよう」

だが我らが上白沢慧音は根っからの先生だった。

困っているモノを捨て置けない【お姉様】気質、こうやってすすんで面倒を背負い込む姿が人心をガッチリ掴むのだろう。

そして信頼を得てきたのだろう。

なんと要領が悪く、漢気に溢れる素敵な【お姉様】か。

こうなればナズーリンも彼女だけに苦労をさせるつもりはない。

通称賢将は今現在、十分に世話好きだ。

「ならば私も手を貸そう。【人間】ではないが構わんだろう?

基礎は座学で慧音どのが、私は実践面で補佐をさせてもらおうか」

神奈子たちはほっとした表情、二人を招いた時点でこの展開を期待していたのは間違いなさそうだ。

思惑通りに動かされるのは性に合わないナズーリンだが、目くじらをたてるほどのことでもない。

(まぁ、やるからにはそれなりに楽しませてもらうがね。

世間知らずの現代っ子をいじり倒す、まぁ暇つぶしにはなるかな)

【世話好き】と言っても、単なる世話好きではない。

ナズーリンの中のイタズラの虫がぴくぴく蠢きだす。

腕組みをしてたっぷり間を取ってから神々に切り出す。

「お二方、あらかじめ言っておくが、私がやるとなるとかなり厳しいよ? 体罰も認めてもらわないとね」

不安そうな二柱、神奈子が問う。

「跡が残るようなことは勘弁してもらいたいのだが」

「当たり前だよ、若い娘にそんなことはしないよ。

お尻をぺんぺんする程度さ。

だが、早苗どのには、お二人から我々が正式な指導者であることをきちんと言って欲しい。

指導中の我々の言葉は、お二方の言葉だと。

いちいち口答えされてはやりづらいからね。

そして最後にもう一つ。

我々はできる限りのことをするつもりだ。

だが、効果がなかったとしても、責任は負えない。

ここを飲んでいただかないと力を貸すことはできない」

丸投げしたままで万事解決と思われてはたまらない。

それなりの覚悟もしてもらわなければ。

「諸々承知した。

よろしくお願い申し上げる」

二柱は神の威厳が損なわれないギリギリくらいまで頭を下げた。

言質は取った。

こちらの条件を丸飲みさせた。

純粋に力のあるモノたちは往々にして、駆け引きに疎いと言っていい。

その必要を感じる事が少なかったからだろう。

ナズーリンはお腹の下あたりで軽く笑った。

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