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ナズーリン! 幻想郷名物、ハリセンチョップ!(8)

「ナズーリンどの、早苗さんの件、随分ときつい物言いだったと思うが」

神社からの帰り道、慧音がかける。

「慧音どのには正直に言うが、乗り気なわけではないからね。

面倒ごとを引き受けるんだ、ならば少し遊ばせてもらおうと思っているだけさ」

「貴方から真っ当に知恵を授かるにはよほどの幸運が必要らしい」

慧音は軽く笑った。

「止してくれ、知恵なんて。だが、気まぐれなのは確かだね」

「だが、妹紅のためには知恵と力を―――」

手のひらを向け、慧音の言葉を遮ったナズーリン。

やはり上白沢慧音は妹紅がナズーリンに頼んだ【探し物】を知っていた。

だが、それはナズーリンの想定内。

「そこまでにしてくれ。

力及ばず、期待にそえないかも知れない。

そうなれば大いに失望させてしまうし、きっと恨まれるだろう」

今度は慧音が遮る。

「待ってくれ、ここは言わせてほしい。

妹紅は感謝している。とても感謝している。

ナズーリンどのが永遠亭に頻繁に出入りしている意味を分かっているよ。

自分のために真剣に行動をしてくれるヒトがいる、そのことに感激しているのだ」

「え? 【自分のために真剣に行動をしてくれるヒト】って、慧音どのあっての今の妹紅どのだろう?」

妹紅が今あるのは間違いなく慧音の献身的な心の介護の賜物だ。

「わ、私のことは置いておいてくれ、少し別枠なんだ。

彼女のこれまでの生でこんなことをしてくれるヒトはほとんど無かったらしい。

貴方が憂いの元を引き受けてくれたことでどれほど妹紅が救われたか。

断言しても良い、恨むことなどあるまい。

なにせ、この世で最も頼りになる賢将が自分のために最後の最後まで力を尽くすと約束してくれたのだ。

望みがかなわなくとも悔いはないだろう」

少しだけ顔を赤らめたお姉様が言う。

賢将は困り顔。

「買いかぶりも甚だしいな。

うまくいくとは限らない、いや、実はかなり難しいんだ。

最後には『申し訳ない、ダメだった』と言うしかないかも知れんよ」

苦笑する賢将を赤い顔のまま穏やかに見つめる歴史学者。

「私は知っている。

貴方は賢いだけではない。

勇気と優しさを備え、数多の経験を積んできた誇り高い希代の賢者だ。

出来ないことなどあるまい」

「あのー、慧音どの? それはどちらの大賢者様の話かな?」

本気で困っているナズーリン。

「私と二人きりの時でさえ妹紅は貴方を『ナズーリン先生』と呼ぶのだ。

正直、妬けるよ。

あのコの憂いは全て私が取り除くつもりでいたのに、力が及ばないことが分かり、悔しかった。

でも、『慧音の頭の良さと、ナズーリン先生の頭の良さは土俵が違うと思う。力を発揮する場所は別々でしょ? それに、どんな結果になったしても、私はいつでも【けーね】と一緒なんだから』と言ってくれた」

藤原妹紅、心を許した相手にだけは本来の優しい物言いをする。

それを聞いたナズーリンはわざとらしく右の眉を上げ。

「なんだ、散々私を持ち上げておいて、結局は惚気たいのかい?」

「え、? いや、決してそんなつもりではない! その、あの、つまり、妹紅の気持ちが、そのっ」

この聡明で豪胆な女傑は、最愛の半身のこととなると、途端に緩んで、ちょっと愚かになる。

その様、共感することしきりの小さな賢将は心の中で(やあ、ご同輩)と優しく呼びかけた。

上白沢慧音、このヒトと出会えて良かった、胸の奥がじんわり暖かくなってくる。

「慧音どの、やれるところまでやってみるよ、約束する。

だが、キミたちの幸せはまだまだこれからだろう? 私の約束はそれこそ【忘れた頃】の話さ。

まぁ、気長に待っていてくれたまえ」

そう言って柔らかく笑む。

慧音は一瞬、頭を下げて礼を言うべきか迷った。

しかし、この愉快で勇敢な賢者はそんなことを望んではいないはずだ。

軽く頷き、

「ああ、待っているよ」

それだけ言って、微笑み返した。

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