紅川寅丸とTeam東方不敗の作品やご案内

ナズーリン! 幻想郷名物、ハリセンチョップ!(9)

翌々日、寺子屋がはねた午後、早苗がやってきた。

「東風谷早苗です。よろしくお願いします」

アップル・グリーンの髪、大きな瞳、丸みを帯びた柔和な顔立ちは十分に美人の範疇。

上背は博麗霊夢より少し高い。

そして健全に発育した肢体、外見は文句無しの合格点。

どこへ出しても綺麗な娘さんと言われるだろう。

守矢神社の看板巫女を慧音とナズーリンが迎えた。

「ようこそ【ケイナズの特別補習講座】へ」

腰に手を当て、ふんぞり返ったナズーリンが芝居っ気たっぷりに言い放つ。

早苗は口をきつく結び、講師二人を交互に見ている。

睨んではいないが、友好的でもない視線。

あからさまな不満を表にしているわけではないが、気持ちは伝わってしまう。

神奈子と諏訪子から今回の趣旨を言い含められていたが、納得がいってはいないようだった。

昨日、指導係二人は此度の特別補習講座について打ち合わせておいた。

基本の知識、妖怪の歴史、出生、種類、分類、特性などは座学で慧音が毎日一刻ほど行う。

その後、休憩を挟んでナズーリンと各地を巡り実地学習。

大まかに役割分担し、お互いの指導内容を確認しあう。

慧音の内容はかなり高度であったが、自身の考察も盛り込んであり、時間があれば一緒に聞きたいほど面白そうだった。

一方、実地の方はかなり突拍子もないプログラムで『それで大丈夫なのか?』と歴史学者は何度も聞いた。

それ以外にナズーリンがいくつか案を出す。

(指導時間中は【早苗】と呼び捨てにする)

これはまあいいだろう。

(授業中は我々を”先生”と呼ばせる)

(まずは雑巾がけからさせる)

そこまで必要だろうか? 慧音は眉をしかめる。

(我々に話しかける時は最初と最後に”サー”を付けさせる)

(露出度の高い指定制服を着用させる)

『それって必要なのか? いらないだろう?』

さすがに慧音が口を挟む。

するとナズーリンは笑いながら、

『慧音どのがOKならやろうと思ったんだが、まぁ冗談だがね。でも体罰は行うよ、これでね』

そう言って取り出したのはいわゆる【ハリセン】。

(ナズーリンどの、真面目にやる気はあるのかな?)

不安が顔に出てしまう、こちらは本当に真面目な慧音。

「というわけでこれより特別補習講座を始めるが、その前に簡単に自己紹介をさせてもらおう」

ナズーリンが慧音に目で促す。

「私は上白沢慧音、この寺子屋で教師をやっているが、本業は歴史を食べ、作ることだ」

早苗が少しだけ首をかしげる。

無理もない、それでは何のことか分からないだろう。

ナズーリンが助け舟を出す。

「つまり歴史の先生ってことだ、それも当代随一のね」

合点がいった早苗が慧音に頭を下げる。

「東風谷早苗です、上白沢先生、よろしくお願いします」

「慧音で構わないよ」

「はい、慧音先生」

続いてナズーリン。

「私はナズーリン。命蓮寺におられる毘沙門天の代理、寅丸星の従者だ。

そしてなんと、ネズミの妖怪だ」

最後の一言をわざと憎らしく告げる。

予想通り早苗の顔が曇る、かなりあからさまに。

《スパーーンッ!!》

目の前にいたネズミ妖怪が突然消えたと思ったら、早苗のお尻に激痛が走った。

お尻を押さえながら振り返ると、大きなハリセンを持ったナズーリンがいた。

「なんだね今の顔は? 挨拶の一つも出来ないのか?」

早苗は痛みもそうだが、この小妖が自分に気づかれずに背後に回りこんだことに驚いていた。

「キミのことは守矢の神様方から申し付かっている。

指導するに当たり、概要を説明しよう。

基本は座学で慧音先生。

実地は私、ナズーリンが。

そして今のような無作法にはこの【精神注入ハリセン】が指導することになっている」

そう言って手に持ったハリセンを玩ぶ。

「そ、そんな……」

目をむいて動揺している早苗。

「聞いていないとは言わせないよ。

キミの神様方からビシビシやってくれと頼まれている。

指導中はキミを【早苗】と呼び捨てる、そして我々を【先生】と呼ぶこと、いいね?

では、気をつけー!」

反射的に背筋を伸ばしてしまう現代っ子。

「さぁ、ご挨拶からだ。『ナズーリン先生、よろしくお願いします』 はい、言ってみなさい」

「……ナ、ナズーリン、せん……せ、よろしくおねがいしま《スッパーーンッ!!》 いったーーい!!」

「声が小さーーい!」

また後ろにいる。

早苗にはナズーリンの動きが見えない。

先日、風見幽香にしこたま叩かれたお尻、ようやく腫れがひいたところだったのに。

同じところを叩かれた痛みに目が潤んできた。

しかし、早苗はぐっと堪えて闘志をかき立てた。

(このネズミの前では絶対泣くものか!)

でも三発目は耐えられそうにない。

「なずーりんせんせーー!! よろしくおねがいしまーす!!」

ヤケッパチの大声。

「ようし! やれば出来るじゃないか、こちらこそよろしくな【早苗】」

呼び捨てにされるのも面白くはないが、その直後のニンマリ顔が妙に癇に障った。

「時間がもったいない。そろそろ始めたいのだが」

上白沢慧音が少し怖い顔で二人に告げた。

その表情は、ナズーリンに対し、(遊びすぎだぞ)と言っている。

「もっともだな、ではこの後は慧音先生よろしく。

私は【支度】に行くとしよう、早苗、また後でね」

慧音の【注意】もどこ吹く風のナズーリンは、ひゅーと飛んでいった。

[←]  [小説TOP]  [↑]  [→]

PAGETOP
Copyright © 2011 東鼠回顧録 All Rights Reserved.