紅川寅丸とTeam東方不敗の作品やご案内

ナズーリン! 幻想郷名物、ハリセンチョップ!(11)

「キミは元の世界で働いたことはあるかね? アルバイトの経験は?」

しばらくして戻ってきたナズーリンが早苗に問う。

「いえ、ありませんが」

「初心者か、まぁその方が都合がいいかもな。

それじゃ支度をしてもらおうか。

これを着て、これを被ってくれ、ヒトの気配をうんと薄くする呪がかけてある」

早苗が手渡されたのは割烹着と手拭。

不安そうな顔で聞く。

「私、何をやるんですか?」

「今日は妖怪のお店を手伝ってもらう。ミスティア・ローレライの屋台だ」

「えええー!? なんで私が、ソウデスカワカリマシタ」

ナズーリンが取り出したハリセンを見て不満を飲み込む。

そんなやりとりを見て苦笑していた慧音が申し出る。

「巫女の袖ははずした方がいいな、髪飾りも。髪も後ろで束ねようか。私が手伝ってやろう」

早苗の後ろで髪を整えながら小声で言う。

「早苗、ナズーリンどのは悪いようにはしないから大丈夫。何ごとも経験だ、頑張っておいで」

「はい」

ナズーリンは聞こえないフリをしていたが、

(あっという間に懐いたようだね、さすがは慧音どの。

まぁ、あの包容力のある深遠な知性は、受ける側のレベルが高いほど効果はあるからね。

特に今回のように彼女の得意分野で密度の濃い知識を授かったのなら無理もない。

また一人、【慧音先生】のファンが生まれたってところか)

ミスティア・ローレライは緊張していた。

目の前にいるのはこの前、弾幕ごっこで散々いじめられた人間によく似ている。

「ミスティア、紹介しよう。こちらが今夜キミの屋台で勉強させてもらう東風谷早苗だ、早苗と呼んで構わない」

「はぁ……」

この少し前、夜雀はネズミ妖怪からの頼みごとに当惑していた。

『少し訳ありの娘をキミの屋台で働かせてやって欲しいんだ。

給金は要らないし、今夜だけで良いから使ってやってくれないか?』

自分だけで切り盛りできる小さな屋台だし、見ず知らずのモノを屋台の裏に入れるのは抵抗があった。

『そこをなんとか頼む。お礼にお稲荷さんを用意するから』

お稲荷さん?

『今日の分というだけではないよ。この屋台、シメにご飯物や麺類があればいいと思わないかい?』

確かに『女将、蕎麦とか握り飯はないのか?』と聞かれることは良くある。

だが、焼き物中心の小さな屋台では蕎麦用のお湯を沸かし続けるのは難しいし、米を炊いて握っておくのも大変だった。

確かにお稲荷さんならウケは良さそうだが、さらに作るのが大変だ。

『ミスティア、キミが作らなくてもいいんだよ。毎日お昼前に命蓮寺に取りに来るだけだ』

『今、寺に通いで来ている妖怪の中でお稲荷さんが大好き! ってヤツが何人かいるのさ。

参詣者にも振舞っているうちに評判になって今では里のお店にも卸しているんだ。

だから味は保証する。

そんなわけで毎日何十個もこさえているんだよ。それを少し分けてあげるから』

良い話のように思えるけど肝心のお代は?

『タダだとキミも気がひけるだろう、自慢の雀酒を一升、月に一回届けてくれればそれで代金としよう』

頭の中でじっくり計算する。

仲間の鳥妖から甕(かめ)で仕入れている雀酒、実はかなり安い。一升分なら□□文くらいかな。

ちょくちょく屋台は休むから毎日10個もらったら月で200個くらい、一個○○文で出したらあがりは……

えー! お稲荷さん安すぎー! ホントに良いの?

『なーに構わんさ。明日からでもいい、命蓮寺においで。

門にいるやたら声の大きい山彦に挨拶をして、お稲荷さんもらいに来ましたーって言えば分かるようにしておくからね。

よし、商談成立だ!

後しばらくしたらその娘を連れてくるからよろしく頼むよ』

夜雀の返事も待たず飛んで行ってしまった。

先日来店したちょっと素敵なネズミ妖怪からもらった、ちょっと良さ気な話と、ちょっと面倒そうな話。

ミスティアは(これで良かったのかなぁ)と首をかしげていた。

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