紅川寅丸とTeam東方不敗の作品やご案内

ナズーリン! 幻想郷名物、ハリセンチョップ!(12)

そしてご対面。

早苗はミスティアを覚えていた。

先日とっちめてやった鳥の小妖。

相手にもならない弱い妖怪だった。

(こんなモノの下で働くなんて……いえ、妖怪にも色々いるんだし、まずは経験してみないと、そうですよね? 慧音先生?)

夜雀を見ながら心の中で素敵な先生に話しかける。

《スッパンパーーン!!》 「いったぁーーーいーー!!!」

「さなええー! ご挨拶はどうしたぁー!」

(うううっううー、慧音先生の【その通りだよ早苗】ってお返事を待っていただけなのに。やっぱりネズミは嫌いです!)

「東風谷早苗です! ミスティアさん! 今夜はよろしくお願いします!」

「は、はい、こちらこそ」

異様なノリに気圧された夜雀は思わず腰が引けてしまった。

「さーて、あとは女将に任せるか。私は商売の邪魔にならないようにこの辺りをブラブラしていようかな」

そう言って屋台から離れようとしたナズーリンが早苗に手招きをする。

ミスティアに聞こえないくらいの場所で小声で話し始める。

「いいかね? 妖怪でも真面目に働いているんだ、仕事中に彼女に危害を加えたら許さないからね」

「そんなことしませんよ! 当たり前じゃないですか、ワカリマシタキヲツケマスデス」

お尻に当てられたハリセンの感触に語気を弱める。

(まったく! 私は昨日までの私じゃないのに! 今、こんな場面でいきなり退治する、そんなのありえないわ! イヤなネズミです!)

表面は従順に、心の中で憤慨する新米巫女。

(……でも、昨日までの私がもしここに居たら……)

その先を想像するのがなんだか怖くなり、早々に打ち切って屋台に戻った。

ミスティアの仕込みを手伝う早苗。

始めはお互い緊張していたが、早苗がミスティアの手際のよさ、小さな屋台の割りに充実しているネタの数に感心し、そのことを口にすると元々話し好きな夜雀は積極的に話し始めた。

八目鰻は週に一回くらい川に獲りに行ってウチの生簀に入れておくの

お豆腐は妖怪にも売ってくれるお店で毎日仕入れるんだよ

野菜は麓の畑で分けてもらったり、友だちと山に採りに行ったりかな

お酒と炭は仲間の妖怪から買うんだよ

この屋台や食器は河童の友だちに作ってもらったの

氷? 友だちに氷の妖精がいるんだー、だから困ったことないね

「妖精にもお友だちがいるんですか?」

「うん、元気が良くて面白いコなんだよ」

「ミスティアさんは、お友だちがたくさんいるんですね」

「えへへ、そうかな? うん、そうかも知れない」

「友だちっていいですよね」

「うん、いいよね」

仕込みもあと一息となった頃、ミスティアは歌い始めた。

夜の鳥ぃ〜 夜の歌ぁ〜 人は暗夜に灯を消せぇ〜♪

夜の夢ぇ〜 夜の紅ぁ〜 人は暗夜に礫を喰らえぇ〜♪

何時から開店と決めているわけではないが、歌うことで自分への合図にしているそうだ。

仕込みの仕上げを任された早苗は、最初のうちは夜雀の歌に聞き入っていたが、歌詞の内容がちんぷんかんぷんだったのでやがて自分も小さくハミングを始めた。

早苗は神社で家事全般を行っているので、このくらいの作業は鼻歌交じりで出来る。

少し離れたところで気配を消して聞き耳を立てていたナズーリンは早苗の鼻歌が気になった。

ふんふふふんーふふふっふん、ふっふっふふっふーん♪

なんだがアルファベットの最後の文字のテーマに聞こえる。

早苗が大型機械人形が好きな女の子【ロボっ娘】であることは先だっての巨大人型風船騒動ではっきりしている。

それにしても随分とシブい選曲だ。

(ふーん、機械人形動画か。この辺りを突付いたら何か出てくるかな? 明日、試してみるかね)

ナズーリンは口の端だけで笑いながら監視を続行した。

ぽつぽつと客がやってくる、その全てが妖怪の類。

そのたびに早苗が話題になる。

女将、この娘はなんだ?

見習いだよー

ヒト臭いが、完全なヒトではなさそうだな、半端な妖だな

片手で捻れそうな妖怪たちに愛想を振りまき酒と肴をすすめる。

くだらない話やウソくさい自慢話、聞くに堪えない下品な話、ヨタ話。

ヨタ話の中には『最近、巫女の【お賽銭】の相場が上がったらしい』などと聞き流しにくい話題もあった。

珍しい話もあった。

満月の夜、人里の近くに現れる二本角の妖、大変気性が荒く強いので近寄るモノなどいなかったのだが、最近白髪の美しい娘が寄り添っていると。

早苗は心の中で(観察、観察)と唱えながら、今日慧音から教わった諸々のことを目の前にいる妖怪たちに当てはめて色々考えていた。

今、結論を求めるのは早すぎると自分でも分かっているので、なるべく見て聞くことに集中した。

『経験しておけば、後から理解できることもある』

慧音の言葉で一番印象に残ったフレーズだったから。

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