紅川寅丸とTeam東方不敗の作品やご案内

ナズーリン! 幻想郷名物、ハリセンチョップ!(13)

客足も途切れ、女将が【看板】を告げた。

幸い早苗を知っている人妖は来なかった。

ナズーリンは実はそれが一番気がかりだった、後々面倒になることは目に見えているから。

来たとしても理由をつけて店には近付けさせないつもりだったが、来ないならそれに越したことはなかった。

「これ、今日のご祝儀、結構お客さん入ったからね。剥き身で悪いんだけどさ」

ミスティアが早苗に何枚か硬貨を渡した。

「いえ! 女将さん! お給金は無しのはずです! もらえません!」

「だーかーらー、ご祝儀だってばー、気にしないでよ、少しばかりなんだから」

困った早苗は辺りをキョロキョロとうかがう。

こちらに歩いてくるナズーリンと目が合った。

「早苗、女将さんの心遣いだ、ありがたく頂戴しなさい」

硬貨を見れば、客一人が軽く飲み食いしたくらいの金額だが、余分な金を持ち歩かない早苗にとっては大金。

「あ、ありがとうございます!」

「いいってば、今夜はおかげで助かっちゃったしさ」

そう言って照れくさいのか、いそいそと片付けを始める夜雀。

その手元をぼーっと見ていた早苗は、生の八目鰻の串が氷箱にしまわれるのを見て慌てて言った。

「女将さん! ヤツメの串ってあと何本残ってますか?」

「うん? えーとあと五本だね」

「じゃあ、このお金でその五本買いますから焼いてください、ちょうど買えますよね?」

「うーん、買えるけど無理しなくていいんだよー? これ、明日も大丈夫だから」

「そうじゃないんです、さっき賄いでヤツメを食べたとき、すごくおいしくてビックリしたんです! だから神奈子様と諏訪子様にも食べさせてあげたいんです! 売ってください!」

「へー、やっぱり早苗さんって優しいんだねー、いいよ、焼いてあげるから持っていきなよ。お代なんかいらないから」

「え!? いや、あの、私のお金で二人に買ってあげたいっていうか、この気持ちを共有したいっていうか、そのっ」

「ミスティア、私からも頼むよ。売ってやってくれ。得がたい経験になるだろうから」

「うん、わかった、腕によりをかけて焼くからちょっと待っててね」

「あ、じゃあ、私、その間に片づけします!」

焼きあがった串を竹の皮で包んだ女将が告げた。

「はーい、お待ちどーさま。もう帰っていいよ」

「え、でもまだ半分も片付いていませんよ」

「あったかいうちに食べてもらって。だから早く帰って。 いいでしょ? ナズーリンさん?」

ナズーリンは苦笑しながら、

「女将の頼みとあっては断れないね。 早苗!」

「はい!」

「本日の特別補習講座、全て終了だ! これにて解散! 速やかに帰宅しなさい!」

「はい! ありがとうございます! ナズーリンせ、せんせい! ミスティアさん! 本当にありがとうございます!」

深々と腰を折ったあと、八目鰻の包みを大事に抱えて飛び立っていった。

「女将、今日はありがとう。恩に着るよ、助かった」

「こちらこそー、結構楽しかったしね」

ニコニコしている夜雀をじっと見つめるナズーリン。

ミスティアはその真摯な視線に気づいて少し硬くなる。

「ど、どうしたの?」

「ミスティア、キミはとても素敵だ」

いつのまにか隣に来ていたナズーリンが頬に口付けた。

「!!?」

「明日、寺へきておくれよ? 待っているからね。 じゃ、おやすみ」

しばらくぼーっとしたままの夜雀だった。

翌朝、先日のお尻の件でまだ怒っている寅丸を宥めすかし、お稲荷さんの数を確保したナズーリンは聖白蓮に此度の経緯、自分の構想を報告した。

今回、自分の立ち位置がハチャメチャなので主人には全てを伝えていない。

寅丸星は恋人であるナズーリンを全面的に信頼しているが、【汚れ役】を演じることにはいつも否定的だった。

自分の未熟さゆえと思い込んでしまうことが多いので、うかつに話は出来ない。

お昼前、約束通りやって来たミスティア・ローレライを聖に引き合わせる。

「聖白蓮でございます。ミスティアさん、これからよろしくお願いしますね」

「は、はひ! はひん! おねおねおねおね」

最近たびたび噂にのぼる妖怪寺の女住職。

どれもこれも信じられないような噂ばかりだったが、実物は噂をはるかに凌駕していた。

ミスティアは膝の力が抜けそうだった。

「ミスティアさん。 これで貴方と私たち、ご縁を結ぶことが出来ました。

今日はとてもよい日でございますね」

そう言って慈笑を向けられるが、あうあう、としか言えない。

そんな夜雀の手をとり、強引に辞させたナズーリン。

「ミスティア? 驚いたのかい? まぁ、毎日来ていれば少しは慣れるよ、少しはね。

えーと、こちらが厨房だ、明日からは直接こちらに来るといいよ」

ようやく落ち着いてきた夜雀だが、ちょうど厨房から出てきた寅丸星と目が合ってしまい、本日二度目の衝撃を受けることになった。

先日の薄暗い屋台で会ったときも十分に衝撃的だったが、今は日の光浴びるシャイニータイガー100%、陽光の元、楽しそうに明るくきびきびと働く姿は、輝き迸る魅力で当社比200%増しだった。

(こ、このお寺、妖怪には刺激が強すぎるよ〜〜)

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