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ナズーリン! 幻想郷名物、ハリセンチョップ!(15)

頭から冷たい井戸水をかぶり文字通り頭を冷やした慧音は、いつもの慧音だった。

手拭で髪を拭いながら恥ずかしそうに話す。

「早苗、悪かったね、興奮しすぎたようだ。勘弁して欲しい」

「い、いえ、そんな、なにも」

「ナズーリンどののいつもの悪ふざけに乗せられてしまったな、私、妹紅が絡むと脆いんだよな」

「あの、さっきのこと、ナズーリンさんを許すんですか?」

「うん? そうだね、許しがたいな。よーし、次こそは彼女を困らせて泣かせてやろう」

おどけながら言う慧音を不満そうに見上げる早苗。

「なんだか本気で怒っているようには見えないんですけど」

「ははは、多分、今回は偶然だろうね、あのヒトは妹紅のことを私以上に真剣に考えてくれているからね、そのことでつまらん茶化しはしないよ」

「随分と信用なさっているんですね」

「ふふ、ナズーリンどののことは話さないよ。早苗が自分の目と耳で確かめなさい」

なんだか納得いかないが、ナズーリンのことはこれまでかと判断し、もう一つの気がかりについて聞く。

「あの、モコウさんって慧音先生の大事な方なんですか?」

慧音の顔、雰囲気がとても穏やかになる。

「ちょうどいいかもしれない。今日の講義の最後に話してあげよう。

不死の呪いを背負い、数百年間、妖怪退治に明け暮れていた孤独な少女の話を」

ナズーリンが寺子屋に戻ると、早苗がひぐひぐと泣いていた。

慧音が肩を抱いて小声で何か話しかけている。

「慧音どの、どうしたんだ?」

慧音は少し困った顔で振り向く。

早苗に一言告げて立ち上がり、少し離れたところでナズーリンと向き合う。

「妹紅のことを話したんだ、妖怪退治を生業とする者にとって参考になると思ったんだ。

そうしたら、妹紅の人生にかなり感情移入してしまったようで『酷すぎます! 悲しすぎます!』って泣き出してね。

でも、今は何とか楽しそうだから大丈夫、と言ったんだが、『何があったんですか!? 誰が救ってあげたんですか!?』って、しつこいので私と妹紅のことを少し話してしまったんだよ。

そうしたら『良かった、本当に良かった、妹紅さん幸せになってください』って、また泣き出してね」

「まぁ、良かったんじゃないかな? 【妖怪退治】となれば、実のところ第一人者は妹紅どのなんだし、彼女の生き様を抜きに妖怪との付き合い方は語れないだろう」

「そうだな、しかし、私、早苗のこと気に入りそうだよ、根は優しい娘なんだ」

「私もそう思うよ」

「本当かね? 随分とイジメているようだが」

「おや? そう見えるのかな?」

ようやく気持ちの落ち着いた早苗を伴ったナズーリンが空中で告げる。

「今日の実地学習は博麗神社だよ」

「はぁ?」

昨日の夜雀の屋台から随分とかけ離れた訓練場所だ。

早苗が驚くのも無理はない。

「まぁ、詳細な内容は現地で説明するよ。 到着までまだ間がある。少しキミに質問をするとしよう」

「そ、それは指導の一環なんでしょうか?」

警戒心剥き出しの新米巫女。

「もちろんそうだ。心して答えるんだぞ」

ごくり、緊張する早苗、一体、どんな無理難題が飛び出すのか。

「自立型ロボットと操縦型ロボット、キミはどちらを好むのかな?」

(はぁぁぁ? このネズミ、何を言ってるのかしら!?)

「早苗、今キミは『このネズミ、何を言ってるのかしら?』と思ったね?」

”ギクッ”

「キミは分かりやすいんだよ、私に隠し事をしたいのならあと300年ほど修行を積みたまえ。

それはともかく、私はつい最近までキミと同じ【あちら】にいたのだ、キミが生まれるずーっと前からカルチャー、メディア、デバイス等に通じている。

だから遠慮なく答えたまえ」

早苗は腹をくくった。

(このネズミ、私を試す気ですね? 上等です! 【ロボッ娘】東風谷早苗の熱い想いで焼き尽くしてやります!!)

「コホン、とりあえず操縦型と言っておきましょうか。

自立型ロボもいいですが、やはり操縦したいですね。

ちなみに操縦ユニットは独立していて欲しいですね。

あ、ジェットパイ○ダーよりホバーパ○ルダーの方が好みです。

コ○ファイターは【戦闘機並みの性能】なのであって、だからと言って戦闘機として運用するのは間違っているんです!

繊細な操縦デバイスを満載しているユニットが、ドッグファイトなんて、少しでも傷がついてしまったら、その後の合体時、どんな影響がでることか。

もう! ハラハラします!」

「ふむ、なかなか熱いな。では次だ。

紅の翼のサザンクロスナ○フはどう見る?」

「ほーう、そう来ましたか、上級者向けですね?

ですが残念でしたね、それは私の専門分野ですよぉ!

ふふふふふ、サザンクロスナ○フ、言わせてもらいましょうか!

はいっ! あれは蛇足です! 紅の翼への構造的負担もさることながら、決定力にかける武器ですし、なんといってもカッコ良くありません!

あんなモノがカッコイイ紅の翼からスッポンスッポンとマヌケな感じで出てくるのは我慢なりません! 結論! アウトです!」

(スゴイ食いつきだな、別人のようなテンションだ)

「むむ、では、似たような攻撃属性を持つドリルミサイ○はいかに?」

「あれはOKです! ドリルミサイ○は劣勢を跳ね返すここ一番での切り札です!

スピード感もあり、威力も申し分なしです!

ロケッ○パンチ発射後の一見脆弱な姿から繰り出す必殺のショットです!!

あれこそいぶし銀のシブい武器です!」

「ふーむ。才能はあるようだな、想いの向きも正しいと言える。

よかろう、こちらの方面ではキミを認めてやろう」

「な、なんですかー! 偉そうに! 今度はワタシのターンですよ!」

「まったく、自分の立場もわきまえず、困った娘だな。 いいだろう、一回だけ受けてやろう」

「行きます! 史上最高のドリル、ゲッ○ー2のドリルアーム、これが射出されたことがあります! その最初の場面をご存知ですか!?」

「PART6、大雪山に地獄を見た、のクライマックスで放った【ドリルロック】だったね」

「うぐぐぐっ、や、やりますね、久しぶりのバトルですよ。

【このえ】より強敵かもしれません」

「早苗、このえってなんだね?」

はっとした早苗は少しの間黙ってしまった。

「・・・・・・あ、いえ、あの、なんでもないんです、もう結構です」

先ほどまでのハイテンションが見る見る萎れていく。

(このえ、おそらくヒトの名だな。およそ見えてきたが、もう少し情報が欲しいな)

ナズーリンは真面目で素直な早苗がエキセントリックな言動をとるその背景には、予想以上に深刻な問題が潜んでいるのでは、と睨んでいた。

当初、面白半分で引き受けた早苗の指導だが、その初日、彼女を観察するうちにいくつかの疑問がわいてきた。

放置すると後悔しそうな予感がする。

今のナズーリンはかなり真剣だった。

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