紅川寅丸とTeam東方不敗の作品やご案内

ナズーリン! 幻想郷名物、ハリセンチョップ!(16)

博麗神社に到着した二人。

「こんにちは霊夢どの、お待たせしてしまったかな?」

ナズーリンが博麗の巫女に挨拶する。

日が落ちるまでにはもう少し時間があった。

「いーえ、別に。特にやることがあるわけじゃないから」

いつもニュートラル、悪く言えばつっけんどんな霊夢がナズーリンにふわっと微笑む。

その笑顔に驚いてしまった早苗。

「東風谷早苗を連れてきたよ。まぁ、お互い改めて紹介する必要もないだろうが」

霊夢は早苗を見て『ふふん』と笑う。

「早苗、久しぶりね。元気にしてた?」

先だって、ボコボコにされて以来、会っていなかった。

「ええ、おかげさまで」

澄まし顔で精一杯、虚勢を張る守矢の巫女。

火花が飛びかねない二人の間に悠々と割って入る小さなネズミ妖怪。

「霊夢どの、先ほどお願いした通り、よろしく頼む。

キミの貴重な時間を少し頂くことになるから、夕飯は私が支度させてもらうよ」

「アナタ、料理できるの?」

「いやいや、料理なんて大層なものではないさ、生蕎麦とツユ、生みたて卵、そして命蓮寺名物の【白蓮稲荷寿司】を持参している。

私は蕎麦を茹でるだけだよ。

あと、卵もほんの少し茹でる。

白身が半分ほど白くなる程度だ。

夕飯は、【おぼろ月見蕎麦と白蓮稲荷寿司のセット】だね」

ゴクリ

霊夢のノドが鳴った。

【白蓮稲荷寿司】

具に蓮根(レンコン)を多めに使うことにより、ショリショリした食感で強い印象を与えながら、京人参、炒りゴマ、椎茸、沢庵漬けが味の深みをしっかりと支える。

油揚げを煮る際に薄口醤油を使うことで全体を淡く白く仕上げた見た目も上品なお稲荷さん、それが【白蓮稲荷寿司】。

寅丸星、会心の作品だった。

当初、雲居一輪が考案したこの命名に聖白蓮は珍しく顔を赤くして反対したが、供されたモノたちは白っぽい外観と蓮根の存在感から白蓮の名に行き着き、【白蓮稲荷寿司】としてあっという間に定着してしまった。

本日よりミスティア・ローレライの屋台で出されるお稲荷さんもこれだった。

霊夢は里の蕎麦屋で食べた美味しい稲荷寿司がそんな名前だったと思い出した。

「夕飯どきになったら台所をお借りするよ」

少し前に神社にやってきたネズミ妖怪が『今日は参拝ではない』と言ったので【素敵な巫女さま】モードはお休み。

『頼みがある』

商売敵ともいえる山の神社の新参巫女の相手をしてやって欲しいと。

そして追加の注文が少しばかり。

『この先、少しでも面倒ごとを減らしたいんだ』

東風谷早苗の普段の言動を見れば【面倒ごと】の意味は分かる。

それ以外にも思惑はありそうだったが、霊夢は深く考えなかった。

元々、このネズミ妖怪は上の付く【お得意さま】。

そして何事につけ関心の薄い自分の心芯を快くくすぐる珍しい存在。

【あの御方】として訪れる時は実益がたっぷりだし、何より楽しい。

そして『今日は参拝ではない』と申し訳なさそうに訪れる時には必ずちょっとした理由があった。

それはそれで構わなかった、むしろ参拝ではない時の方が面白いくらいだった。

基本、面倒くさがりの自分が(もう少し絡んでもいいかな)と思える数少ない相手。

そんなわけで博麗の巫女は今回もネズミの願いを承諾した。

「早苗、今日は霊夢どのがキミに巫女としての心構えを教授してくださるから心して聞くように。

そしてどんな疑問にも決して怒らず、可能な限り丁寧に答えてくださる。

まぁ、もともと大変寛容で慈悲深い巫女さまだからね」

この程度の持ち上げ方では浮かれたりしない霊夢だが、早苗の手前、腕組みをしてふんぞり返ってみせる。

【寛容で慈悲深い】ポーズとしてはあまり適してはいないが。

警戒している早苗。

(ホントかな? あとで代金を求められるんじゃないかしら? 【カツアゲ巫女】だし)

「もちろん無報酬だ、安心したまえ」

”ギクッ”

「まったく……キミは顔に出しすぎだ。

まぁ、私は時間まで消えることにするが、失礼のないように気を付けたまえよ?」

そう言って去って行く小さな賢将。

「さーて、お茶でも入れるわ。そこいらに座っていて」

縁側のあたりを指さし、台所へ向かう霊夢。

早苗は言われた通り腰掛けたが、どうにも落ち着かない。

静かすぎる。

山と違って、生き物の気配、植物の息吹が感じられない。

木々に囲まれているはずなのに作り物めいた違和感がある。

お茶を持ってきた霊夢が落ち着きのない早苗に言う。

「約束だから怒らないし、できるだけ丁寧に答えるけど、本当のこととは限らないからね」

(変な前フリですね? わざわざ言うことなのかしら?)

少し気になったが、早苗は腹をくくった。

(せっかくだから、いろいろ聞いてみよう、慧音先生も聞くことは恥ではないって言っていたし)

「ではよろしくお願いします」

「はいはい。まずは―――」

「こんにちわー! 毎度お馴染み、射命丸ですっ!!」

つむじ風を伴って舞い降りてきたのは【伝統の幻想ブン屋】だった。

「おやおや? こちらは山の巫女さま、これは珍しいツーショットですね、まずは一枚」

言うが早いかシャッター音。

「アンタねぇ、いつもいつもいきなりで……なんの用?」

「もちろんネタ探しです。

こうやって小まめに地道に取材をすることで思いもかけないネタに出会えるのです!

現に今も、こんな面白そうな場面に遭遇したわけです!」

「面白そうって、私たちが一緒にいちゃおかしいの?」

「商売敵であるはずのお二人がこうして密談とは、怪しいことこの上ありませんね。何か陰謀の臭いがします!」

「陰謀? なにを言い出すの?」

「ふふふ、そうやってとぼけるのは、善からぬ企みだからですね?」

早苗は口をはさむ隙もない

二人の噛み合わないやり取りはしばらく続いた。

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